急がば回れと仮想通貨

寒くなると食べたくなるモノのひとつに吉野家の牛すき鍋膳がある。700円足らずで手軽にすき焼きが食べられる。大味ではあるが素晴らしい食べ物だ。

先日とある千葉県のロードサイド型の吉野家へ足を運んだ。もちろん牛すき鍋膳が目的だ。

時間帯は21時過ぎくらい。ピークタイムも過ぎており、ゆっくり店内で食事できるだろうとの認識から何の考えもなく車を停め店へ入った。ところが、店内へ入ると見事に期待を裏切られた。

テーブルには食べ終わりの食器が無残にも置かれたまま。お客さんは15名ほど。店員さんは2名。注文、片づけ、会計、配膳、店内はとても慌ただしく、2名のキャパシティを超えているのは誰が見ても明らかであった。

正直、私はこういうお店は大の苦手だ。オペレーションが回ってない時点で提供する商品の品質に何かしらの欠格が出る。

だから私は土用の丑の日にわざわざ鰻屋へは並ばないし、いくら人気店でもバックヤードが洗い物で山積みであったり、スタッフを見て忙しさへの耐性が無いと判断した場合には日を改めることもある。

楽しいはずの食事の場で仕事に追われる店員さんのピリピリ具合を肌で感じるのはこちらとて辛い。そういう状況ほど、さらなる二次災害へとつながるものだ。

「ガシャン!!!!!!(食器が割れる音)」

寸秒の狂いもない案の定の展開に心の中で笑ってしまった。

イーサリアムのスケーラビリティ問題とはきっとこんな感じなのだろう。だがここは吉野家というレイヤー。彼らはこのトランザクションを処理したからとてガス代(時給)が上がる訳でもない。それでも、お客さんは店内の事情など知る由もなく次々と来店する。全く堪ったものではない。

とはいえ、こんなキャパオーバーにも関わらず頑張って対応をしていた店員さんはとても素晴らしかった。気づいたら会計時に野口氏を2人派遣していた。ビリーザキッドで450gのテキサスステーキを食べたと思えば十分元はとれる。そんな事よりも店員さんの嬉しそうな笑顔が印象的だった。

話は変わるが、目的地にいち早く到着したい場合、皆さんはどのような行動を取るだろうか?

例えば高速道路で混雑している状況を考えてみて欲しい。

普通は早く到達したいが為に右車線に行きがちである。そして真ん中車線が空いたら左に入り、右が空いたら右に入り右往左往する。もちろん、この方が早く目的地に到着しそうではあるし実際にそうなのだが、車線を変えずにそのままのんびり行っても到着時間は案外変わらないものだ。

「急がば回れ」という言葉がある。

急ぐ時には危険を冒して近道をするより、遠回りでも安全な道を選ぶ方が結局早かったりするという意味なのだが、この言葉の語源は室町時代まで遡る。連歌師の宗長さんという方が詠んだ歌

「もののふの 矢橋の船は速けれど 急がば回れ 瀬田の長橋」

から来ているそうだ。当時、京都へ向かうには矢橋から琵琶湖を船で横断するルートの方が陸路よりも早かったのだが、比叡山から吹き下ろされる突風で危険と隣り合わせの航路でもあった事から詠まれた歌とのことだ。


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今月は年末の挨拶回りという事もあり、BitLendingのお客様にお会いする機会が多い。その際に私が必ずする質問がある。

「いつ、どのようなきっかけで暗号資産を購入されたのですか?」

時々びっくりするくらい早い時期にビットコインを購入されている方がいらっしゃる。

当時はこんなに価格が上がるなんて誰もが想像していなかった怪しさ満点の時代。そんな暗号資産草創期に思い切って百万円単位で購入できる勇気と決断力は到底真似できない。そのような方ほど脇目も振らず一途にガチホしてきたのだ。たとえ1BTCが200万円を超えようとも。

個人的な見解だが、面白い事にガチホ勢の方に企業の経営者は少ない。経営者の場合、人脈も多くなることから、そもそも色々な投資話が舞い込んでくるのだろう。

魅力的な利回りを提示され、断れない付き合いもあることから、右に左に右往左往して結果的に失う事になる。そんな話は沢山聞いてきたし、恥ずかしながら私もその一人だ。

もしかしたら暗号資産の世界も急がば回れなのかもしれない。

目先の10倍の利益を求めてアルトコインやNFTなどをあれこれ買ったりするより、主軸通貨を保有し続けるほうが結果的に資産は増える。そんな事を感じる2022年であった。トレンドはトレンドの時点で、結局トレンドでしかないのだろう。

先日、暗号資産レンディング企業であるNexoがアメリカから撤退する事を発表した。規制当局との折り合いがつかなかった事がその理由だが、サービスの規模を拡大するにあたってもこの考えは大事になりそうだ。スイスにヘッドクオーターがある彼らにとっては、米国で無理に展開しなくてもグローバルマーケットで十分やっていけるという算段なのか。

Nexoほどの規模になると考えなければならないリスクは膨大である。だからこそ「ブロックチェーン技術の重要性を理解している地域向けの製品やサービスの開発に時間と労力を捧げたいと思う」と主張する彼らの判断は正しくなるのだろう。

ちなみに、先日破産申請をしたBlockFiは同様の問題で今年の2月にアメリカのSECと115億円で和解をしている。なんとも皮肉だ。