ビットコイン セキュリティの仕組みとリスクとは?取引所・個人の対策まで解説
監修:株式会社J-CAM 金融アドバイザー AFP認定者 倉本 佳光 Yoshimitsu Kuramoto
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。その後、メリルリンチ日本証券株式会社マネージメント・コミッティーメンバー、岡三アセットマネジメント株式会社理事などを歴任。
執筆:BitLending編集部 更新日:2026年8月19日
「ビットコインのセキュリティは大丈夫?」という疑問は、実は1つの問題ではありません。ビットコインという仕組み自体の安全性、資産を預ける取引所の管理体制、そして利用者自身のパスワードや認証情報の管理は、それぞれ別の層の問題です。
ニュースで見聞きする「ハッキング被害」の多くは、ビットコインというプロトコル自体の欠陥ではなく、取引所や関連サービス、あるいは利用者側の運用に起因しています。この3つを分けて理解することで、自分が今どの層のリスクに注意すべきかが分かります。
この記事では、ビットコインの仕組みとしてのセキュリティ、過去に実際に起きた事件の実態、取引所を選ぶときに確認したいポイント、個人で今日からできる対策までを整理して解説します。
免責事項(投資助言ではありません)
本記事は、ビットコインに関する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買・投資行動を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が非常に大きく、短期間で大きな損失が発生する可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。
利益相反に関する開示:本記事を掲載するBitLendingは、暗号資産レンディングサービスを提供しています。記事内には当社サービスへの導線が含まれる場合がありますが、特定の投資行動や暗号資産の貸出を推奨するものではありません。
ビットコインの「セキュリティ」は何を指すのか
「ビットコイン セキュリティ」という言葉は、実際には性質の異なる3つの層をまとめて指していることがほとんどです。どの層の話をしているかを分けないまま不安を感じても、対策のしようがありません。
| 層 | 具体的に問われること | 主な原因 | 主な対策の担い手 |
|---|---|---|---|
| プロトコル層 | ネットワークやブロックチェーンの改ざん耐性 | 設計上の理論的な限界(51%攻撃など) | 開発者・マイナー全体 |
| 取引所・サービス層 | 預けた資産の管理体制やシステムの堅牢性 | システムの脆弱性、内部管理の不備 | 取引所・サービス提供者 |
| 個人の利用層 | パスワードや認証情報、秘密鍵の管理 | フィッシング、使い回し、誤操作 | 利用者自身 |
本記事では、この3層それぞれについて、何が起きうるのか、どこまでが確認できる事実で、どこからが利用者の対策次第なのかを順番に整理します。
前提:ビットコインとは
ビットコイン(BTC)は、特定の国家や中央銀行を介さずに機能する分散型のデジタル通貨です。取引の記録は、参加者が共有する台帳(ブロックチェーン)に記録され、特定の管理者が単独で書き換えることができない構造になっています。ビットコインの基本的な仕組みや価値の背景そのものについては、ビットコインの仕組みや価値、リスクの基本解説で詳しく整理しています。
ビットコインのプロトコルとしての安全性
ビットコインのネットワークそのものは、複数の暗号技術と仕組みの組み合わせによって、外部からの改ざんが極めて困難な設計になっています。ビットコインのネットワーク自体を第三者が不正に書き換えることは、理論上も実務上も極めて困難です。これは、2008年に公開された設計文書以来、実際に稼働し続けてきた実績によっても裏付けられています。
《出典》
Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System|Satoshi Nakamoto
改ざんへの耐性を支える3つの要素
ビットコインの改ざん耐性は、主に次の3つの要素の組み合わせによって成立しています。
- ブロックチェーン:取引記録を一定の単位(ブロック)でまとめ、過去から現在まで順番に鎖状につないで保存する仕組みです。途中の記録だけを書き換えると、それ以降のつながりと矛盾が生じます
- 公開鍵暗号方式:秘密鍵を知っている人だけが、対応するビットコインを動かす取引に署名できる仕組みです
- ハッシュ関数:データからごく短い固有の値を作り出す計算方法で、元のデータが少しでも変わると、まったく異なる値になります。これが改ざんの検知に使われます
なぜ「秘密鍵を知られない限り資産は動かせない」と言えるのか
ビットコインの送金には、その持ち主だけが持つ秘密鍵による署名が必要です。秘密鍵を持たない第三者は、たとえネットワークの記録を見ることができても、他人のビットコインを動かす取引に有効な署名を付けることができません。裏を返せば、秘密鍵そのものを盗まれたり、管理を委ねた先の情報が流出したりした場合には、この仕組みは機能しません。プロトコルの安全性と、鍵の管理という運用上の安全性は別問題です。
💡 用語解説:秘密鍵・公開鍵・ハッシュ関数とは? ▼ 開く
■ 秘密鍵・公開鍵とは?
ビットコインを動かすために使う、対になった2つの鍵(データ)です。
- 秘密鍵:自分のビットコインを送金するために必要な、他人に見せてはいけない鍵です
- 公開鍵:受け取り用のアドレスのもとになる、他人に見せてよい鍵です
- 注意点:秘密鍵は「パスワードを忘れたら再発行してもらう」性質のものではなく、失うとその資産に二度とアクセスできなくなる場合があります
■ ハッシュ関数とは?
どんなデータからも、決まった長さの短い値を作り出す計算方法です。元のデータが1文字でも変わると、まったく別の値になります。
この記事での読み方
ブロックチェーン上の記録が過去にさかのぼって書き換えられていないかを検知するための土台として使われています。数値の細かい仕組みまで理解する必要はありませんが、「少しの改ざんも検知できる仕組み」という点だけ押さえておけば本文の理解には十分です。
ハッシュレートとネットワークの堅牢性(ビットコインキャッシュとの違い)
ビットコインのプロトコル自体は堅牢に設計されていますが、その堅牢さの度合いは、実は通貨ごとに同じではありません。ネットワークの改ざんしにくさは、そのネットワークにどれだけの計算力(ハッシュレート)が投じられているかに比例して高まります。ハッシュレートが小さいネットワークほど、理論上は少ないコストで不正な操作を試みられる可能性が高くなります。
ビットコインキャッシュ(BCH)などとの違い
ビットコインキャッシュ(BCH)は、ビットコイン(BTC)から分岐した通貨であり、同じプルーフ・オブ・ワーク方式を採用していますが、ネットワークに投じられているハッシュレートはBTCより小さい状態が続いています。そのため、理論上のセキュリティ強度はBTCより低くなるとされています。これはBCH固有の欠陥というより、参加するマイナーの規模の違いによるものです。BCHの現状や今後の見通しについては、ビットコインキャッシュ(BCH)の今後と将来性の解説で詳しく取り上げています。
💡 用語解説:ハッシュレート・51%攻撃とは? ▼ 開く
■ ハッシュレートとは?
ネットワーク全体が、取引の記録・検証のためにどれだけの計算力を投じているかを示す指標です。
- 確認点:ハッシュレートが大きいほど、同じ計算力の割合を占めるためにより多くの設備や電力が必要になります
- 注意点:ハッシュレートは常に変動するため、記事内で具体的な数値を断定的な優劣の根拠にはしません。最新値は各種ブロックチェーン統計サイトで確認してください
■ 51%攻撃とは?
ネットワークの計算力の過半数を1つの主体が占めた場合に、理論上は取引記録の一部を書き換えられる可能性がある状態を指します。
この記事での読み方
ハッシュレートが大きいネットワークほど、過半数を占めるために必要な設備投資が莫大になるため、実行のハードルが高くなります。「51%攻撃が理論上可能」であることと、「実際に低コストで実行できる」ことは同じではありません。
実際に起きたセキュリティ関連の事件
「ビットコインがハッキングされた」というニュースの多くは、正確には「ビットコインを扱う特定のサービスがハッキングされた」という内容です。過去の主要な被害事例は、いずれもビットコインのプロトコル自体の欠陥ではなく、特定のサービスの実装や運用の不備が原因でした。代表的な例として、ビットコインATMを運営するGeneral Bytes社に対する攻撃を確認しておきましょう。
2022年8月:ビットコインATM運営会社の管理サーバーを狙ったゼロデイ攻撃
2022年8月、ビットコインATMを製造・運営するGeneral Bytes社の暗号資産アプリケーションサーバー(CAS)が、ゼロデイ脆弱性を突かれて不正アクセスを受けました。攻撃者はCASの管理インターフェース経由で管理者アカウントを不正に作成し、ATMでの売買設定を改ざんして、顧客が送るはずだった暗号資産を自分のウォレットへ転送させました。この事件はビットコインという通貨・ネットワーク自体の欠陥ではなく、ATM運営会社側のサーバー実装の不備が原因です。
《出典》
Hackers exploit zero-day bug to steal from General Bytes Bitcoin ATMs|Cointelegraph
2023年3月:同社ATMを狙った別のゼロデイ攻撃
2023年3月にも、General Bytes社のATMで別のゼロデイ脆弱性(BATM-4780として追跡)が悪用され、マスターサービスインターフェース経由で不正なプログラムが実行される被害が発生しました。この攻撃では、データベースへのアクセスやホットウォレットの認証情報の取得、2段階認証の無効化まで行われたと報告されています。同社はクラウドサービスを一時停止し、緊急のセキュリティパッチをリリースして対応しました。2つの事件はいずれも、単一の管理システムに複数の権限が集中していたことが被害拡大の一因でした。
取引所を選ぶときに確認したいセキュリティのポイント
ビットコイン自体の仕組みが堅牢でも、預け先の取引所やサービスの管理体制が不十分であれば、資産を失うリスクは残ります。取引所を選ぶときは、金融庁への登録状況、資産の分別管理の実施状況、取り扱う暗号資産のホワイトリスト適合状況を確認することが基本になります。
日本国内でビットコインなどの暗号資産交換業を行うには、金融庁への登録が必要です。登録の有無や登録業者の一覧は、金融庁の公式サイトで確認できます。ホワイトリスト制度など、登録業者が満たすべき安全基準の詳細は、金融庁のホワイトリスト制度の解説で整理しています。取引所ごとの手数料や特徴を比較したい場合は、仮想通貨取引所の比較記事もあわせてご確認ください。
《出典》
暗号資産の利用者のみなさまへ|金融庁
個人でできるセキュリティ対策
プロトコルや取引所側の対策とは別に、アカウントを守る対策の多くは、取引所ではなく利用者自身が実行する必要があります。特別な知識がなくても、次のような基本的な対策で防げる被害は少なくありません。
- 複雑で推測されにくいパスワードを設定し、他のサービスと使い回さない
- 取引所・ウォレットのログインには2段階認証(2FA)を設定する
- 使用していない端末やアプリからログアウトし、定期的にログイン履歴を確認する
- 保有額が大きくなった場合は、取引所保管に加えて自己管理のウォレットも検討する
保管方法の選び方や、購入後に確認しておきたい実務的なポイントは、ビットコインを買った後にやることの解説で詳しく取り上げています。
フィッシング詐欺への警戒
フィッシング詐欺は、公式サイトやアプリを装った偽サイト・偽メールへ誘導し、ログイン情報や秘密鍵を入力させて盗み取る手口です。検索広告やSNSの広告経由で偽サイトに誘導される例も報告されています。URLを毎回確認する、ブックマークからアクセスする、メールやSNSのリンクから安易にログインしないといった基本的な習慣が対策になります。詐欺の具体的な手口をより詳しく知りたい場合は、仮想通貨投資詐欺に騙されないためのポイントもあわせてご確認ください。
まとめ:ビットコインのセキュリティを正しく値踏みする
ビットコインのセキュリティを考えるときは、「プロトコル」「取引所・サービス」「個人の利用」という3つの層を分けて捉えることが出発点になります。ビットコインのネットワーク自体は堅牢に設計されている一方、実際の被害の多くは取引所側の実装不備や、利用者側のパスワード・認証情報の管理不足から生じています。
過度に不安がる必要はありませんが、「仕組みは安全だから何もしなくてよい」というわけでもありません。取引所を選ぶ際の確認ポイントと、個人でできる基本的な対策を押さえることが、実務上もっとも効果的な備えになります。これからビットコインの購入を検討している場合は、購入前に確認しておきたい準備の解説もあわせてご覧ください。