監修:株式会社J-CAM 金融アドバイザー AFP認定者 倉本 佳光 Yoshimitsu Kuramoto

慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。その後、メリルリンチ日本証券株式会社マネージメント・コミッティーメンバー、岡三アセットマネジメント株式会社理事などを歴任。
執筆:BitLending編集部 更新日:2026年9月7日

倉本 佳光

チェーンリンク(LINK)は、ブロックチェーンだけでは知ることができない外部の情報を、安全に届けるための「分散型オラクル」ネットワークです。ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンは、その仕組み上、ネットワークの外側にある為替レートや天候データ、他のブロックチェーンの情報などを自分では取得できません。チェーンリンクはこの弱点を補う仲介役として2019年からメインネットが稼働しており、2026年にはSWIFTやDTCCといった大手金融機関との連携が実運用の段階に入っています。

本記事では、まず「なぜブロックチェーンにオラクルが必要なのか」という基礎から丁寧に解説したうえで、チェーンリンクの仕組み、メリット・デメリット、競合オラクルとの関係、購入方法までを2026年時点の一次情報にもとづいて整理します。投資を勧める記事ではなく、ご自身でチェーンリンクを値踏みするための判断材料をお伝えすることが目的です。

免責事項(投資助言ではありません)

本記事は、仮想通貨に関する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買・投資行動を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が非常に大きく、短期間で大きな損失が発生する可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。

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大量に並んだ正方形のブロック

なぜブロックチェーンにはオラクルが必要なのか

ビットコインやイーサリアムをはじめとするブロックチェーンには、共通した性質があります。それは、ネットワークに参加する複数のコンピューター(ノード)が同じ取引記録を共有し、互いに検証し合うことで、記録の改ざんを防いでいるという点です。誰か一人が勝手にデータを書き換えようとしても、他の多数のノードが持つ記録と一致しなければ、その変更は認められません。

この仕組みのおかげで、ブロックチェーン上の取引記録は非常に信頼性が高くなります。しかし裏を返せば、ブロックチェーンは自分自身の中で完結する情報しか、確実な形では扱えないという制約も同時に生まれます。

ブロックチェーンは「外の情報」を自分では取りに行けない

たとえば「今日のドル円の為替レート」や「A社の株価」「保険の支払い条件になる気温」といった情報は、ブロックチェーンの外側の世界に存在します。ブロックチェーン自身にはインターネットへ接続して情報を取りに行く機能がないため、こうした外部データ(オフチェーンデータ)を、そのままでは参照できません。これは一般に「オラクル問題」と呼ばれる、ブロックチェーンの構造的な課題です。

異なるブロックチェーン同士(たとえばビットコインとイーサリアム)も、それぞれが独立したネットワークであるため、直接情報をやり取りすることはできません。

なぜ勝手に外部データを取り込めないのか

「誰かが情報を1つ入力すればいいのでは」と思うかもしれませんが、それではブロックチェーンが大切にしている「改ざんされない」という性質が崩れてしまいます。もし1つの情報源(たとえば1つのサーバーや1人の管理者)だけがデータを提供する仕組みにすると、その情報源が誤ったデータを送ったり、攻撃を受けてデータを書き換えられたりした場合、ブロックチェーン上のスマートコントラクト(あらかじめ決めた条件で自動的に実行される契約)がそのまま誤った処理をしてしまいます。

つまりブロックチェーンにとって、外部データを取り込むことと、改ざんされない信頼性を保つことは、本来トレードオフの関係にあります。

この課題を解決する「オラクル」の役割

この課題を解決するために生まれたのが「オラクル」です。オラクルとは、ブロックチェーンの外にある情報を、ブロックチェーンが利用できる形に変換して届ける仲介の仕組みを指します。オラクルには、1つの管理者が情報を提供する「中央集権型オラクル」と、複数の独立した提供者が情報を持ち寄る「分散型オラクル」の2種類があります。

中央集権型オラクルは、その1カ所が誤作動したりハッキングされたりすると、ブロックチェーン全体に誤った情報が伝わってしまうリスクを抱えています。この弱点を補うために採用されているのが分散型オラクルで、複数の独立した提供者が同じ情報を持ち寄り、突き合わせたうえでブロックチェーンに届けます。チェーンリンク(LINK)は、この分散型オラクルを実現する代表的なネットワークです。

💡 用語解説:スマートコントラクトとは? ▼ 開く

■ スマートコントラクトとは?

あらかじめ決めておいた条件が満たされると、人の手を介さずに自動的に実行されるプログラムのことです。ブロックチェーン上で動作するため、実行内容や条件は改ざんされにくく、契約の履行を第三者に頼らず確認できます。

  • 確認点:「条件がそろえば自動で実行される」という契約の仕組みそのものを指します
  • 注意点:実行の条件に外部データ(為替レートなど)を使う場合、その情報を安全に届ける役目をオラクルが担います

この記事での読み方

チェーンリンクが届ける情報は、多くの場合このスマートコントラクトの実行条件として使われます。オラクルの正確性が、スマートコントラクトの正しい実行に直結する、という関係を押さえておくと理解しやすくなります。

大手金融機関に採用される理由|SWIFT・DTCCとの連携

チェーンリンクが注目される理由の1つは、国際的な金融インフラを担う機関との連携が、実証実験の段階から実運用の段階へ進んでいることです。国際銀行間の決済メッセージを取り扱うSWIFTとは2016年から検証を重ねており、2026年に入るとBNPパリバ・Intesa Sanpaolo・ソシエテ・ジェネラルといった大手銀行がトークン化債券のDvP決済(証券の引き渡しと代金の支払いを同時に行う決済方式)にチェーンリンクの仕組みを利用し、同年6月には50行以上・資産運用残高10兆ドル超が参加する「Project Pangea」でユーロ・ウォンの即時FX決済にも活用されています。

《出典》
The Swift and Chainlink Partnership|Chainlink

米証券決済最大手DTCCとの提携

米国の証券決済を担う中心機関であるDTCC(The Depository Trust & Clearing Corporation)も、2026年5月12日にチェーンリンクとの提携を発表しました。チェーンリンクのランタイム環境(CRE)とデータ標準を活用し、価格評価や担保の最適化を支援する担保管理プラットフォーム「Collateral AppChain」の構築に採用されています。

《出典》
DTCC taps Chainlink for its tokenized collateral platform|CoinDesk

こうした金融機関がトークン化を進める背景には、現実資産をブロックチェーン上で扱うRWAの仕組みという考え方があります。チェーンリンクは、この分野で価格データや決済情報を橋渡しする役割を担っています。

地球上に張り巡らされた電子網をイメージした画像

オラクル市場の競合とチェーンリンクの将来性

「チェーンリンクは分散型オラクルのシェアNo.1」としばしば紹介されますが、その実態と、今後も優位を保てるのかを、競合の動向とあわせて確認します。

主要な競合オラクルの台頭

集計方法によって差はありますが、2026年8月時点のデータでは、オラクルが保護している資産価値(TVS:Total Value Secured)ベースでチェーンリンクは約60〜69%のシェアを占め、依然として最大手です。一方で、次点のオラクルプロジェクトとの差は縮まりつつあり、特にPyth Networkは2024年以降TVSを大きく伸ばしていると報じられています。「チェーンリンクさえ使っておけば安心」と考えるのではなく、オラクル業界全体が競争環境にあることを踏まえておく必要があります。

《出典》
Chainlink Statistics: TVS, CCIP and Market Share|CoinLaw
Chainlink dominance challenged by Pyth’s 46x growth in 2024|Cointelegraph

チェーンリンクが競争を勝ち抜くための強み

それでもチェーンリンクが今後の競争で優位に立ちやすいと考えられる理由として、次の点が挙げられます。1つ目は、対応プロトコル数・累計セキュア資産額のいずれでも競合を大きく引き離す規模を確保しており、多くのDeFiプロジェクトが乗り換えコストを避けたいと考える点です。2つ目は、前章までに紹介したSWIFT・DTCCのような伝統的金融機関との連携実績で、これは価格データの提供にとどまらない、決済インフラそのものへの組み込みという他のオラクルプロジェクトにはまだ少ない実績です。3つ目は、CCIPによる相互運用性で、単なるデータ提供者から「複数のブロックチェーンをつなぐインフラ」へと役割を広げている点です。

一方で、専業のオラクルプロジェクトが特定の分野(高頻度の価格データなど)に特化して優位性を築く動きもあり、チェーンリンクが今後もあらゆる領域で優位であり続けるとは限りません。どのオラクルが使われているかは、DeFiプロジェクト側の選択にも左右されるため、継続的に動向を確認する視点が欠かせません。

直近の採用実績から見る今後の展望

チェーンリンク公式の発表によれば、2026年第1四半期にはCoinbaseが取引所データへチェーンリンクの標準を初めて導入したほか、香港金融管理局のデジタル法定通貨プログラムでVisa・ANZ・Fidelity Internationalなどとの越境決済ソリューションが完成するなど、伝統的な金融・決済インフラへの組み込みが進んでいます。LINK自体を預けて報酬を得られる「ステーキング」の仕組み(v0.2)も提供されており、詳しい仕組みはステーキングの仕組みとレンディングとの違いで解説しています。

本セクションの実績・数値は、本記事の更新時点(2026年9月)で確認できた情報にもとづきます。最新の状況は各出典リンク先でご確認ください。

《出典》
Chainlink Quarterly Review: Q1, 2026|Chainlink