KYCとは?仮想通貨取引に必須の本人確認をわかりやすく解説|手順・必要書類・2027年の変更点
監修:株式会社J-CAM 金融アドバイザー AFP認定者 倉本 佳光 Yoshimitsu Kuramoto
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。その後、メリルリンチ日本証券株式会社マネージメント・コミッティーメンバー、岡三アセットマネジメント株式会社理事などを歴任。
執筆:BitLending編集部 更新日:2026年8月20日
「KYC」という言葉は仮想通貨取引所の登録画面でよく見かけますが、内容を正確に理解している人は多くありません。KYC(Know Your Customer)とは、事業者が顧客の身元を確認する一連の手続きのことで、仮想通貨(暗号資産)取引所でも法律にもとづいて義務づけられています。
結論からいうと、KYCは取引所が独自に課している面倒な手続きではなく、犯罪収益移転防止法という法律にもとづく義務であり、正規の取引所を見分ける基準の一つにもなります。
この記事では、KYCの意味と法的根拠、実際の手順と必要書類、2027年に予定されている本人確認方法の変更、そして「KYCなし」で取引する場合のリスクまで、判断材料として整理します。
免責事項(投資助言ではありません)
本記事は、暗号資産に関する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買・投資行動を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が非常に大きく、短期間で大きな損失が発生する可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。
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KYCとは?仮想通貨取引で本人確認が必要な理由
KYC(Know Your Customer)とは、金融機関や仮想通貨(暗号資産)交換業者が、口座開設や取引の前に顧客の身元を確認する一連の手続きを指します。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与を防ぐことが主な目的で、国際的な政府間組織であるFATF(金融活動作業部会。G7を中心に設立された組織であり、特定の一国の機関ではありません)の勧告に沿って、多くの国が同様の制度を整備しています。
日本では、犯罪収益移転防止法という法律により、金融機関や仮想通貨(暗号資産)交換業者に顧客の本人確認(取引時確認)が義務づけられています。この法律は2007年4月に一部施行され、2008年3月に全面施行されました。取引所が求めるKYCは、事業者が任意で課している手続きではなく、法律上の義務にもとづくものです。
なぜ仮想通貨交換業者もKYCの対象になったのか(法的根拠)
仮想通貨(暗号資産)交換業者が犯罪収益移転防止法上の「特定事業者」として本人確認義務の対象になったのは、平成28年に改正された資金決済法が施行された2017年4月1日からです。この改正で仮想通貨交換業が登録制になり、銀行や証券会社と同じように、顧客の本人確認や取引記録の保存などが義務づけられました。仮想通貨は現金化がしやすく国境を越えた移転も容易なため、他の金融サービスと同水準の本人確認が求められています。
KYCの手順4ステップと必要な本人確認書類
仮想通貨取引所でのKYCは、多くの場合オンラインで完結します。大まかな流れは「書類を準備する→撮影・アップロードする→取引所の審査を待つ」という4つのステップで、記事執筆時点ではこの方式が主流です。ただし、後述のとおり2027年にはオンラインでの本人確認方法自体が見直される予定のため、あわせて確認しておきましょう。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①書類を確認 | 必要な本人確認書類を確認し、手元に準備する |
| ②撮影 | 書類をスキャンまたはスマートフォンで撮影する。文字や写真がはっきり読み取れるようにする |
| ③提出 | 取引所のKYC手続きページから画像をアップロードする。氏名・住所などの個人情報の入力もあわせて求められる |
| ④審査 | 取引所の審査を待つ。所要時間は取引所や混雑状況によって異なる |
必要な本人確認書類(身分証明書・住所証明書)
必要書類は取引所によって多少異なりますが、一般的には次の2種類の組み合わせが求められます。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 身分証明書 | マイナンバーカード、パスポート(顔写真ページ・所持人記載事項ページ)、運転免許証(表面・裏面)、住民基本台帳カードなど |
| 住所証明書 | 公共料金の請求書、銀行の取引明細書、住民票の写しなど(取引所によっては身分証明書のみで足りる場合もある) |
購入前に済ませておきたい他の準備(保管方法や送金時の注意点など)は、ビットコインを買う前の準備の解説で詳しく取り上げています。
スマホでできるeKYCとは
eKYC(electronic Know Your Customer)とは、書類の郵送や対面での確認を経ずに、スマートフォンなどオンライン上で完結できる本人確認の総称です。現在多くの仮想通貨取引所では、書類の撮影と自分の顔(容貌)の撮影を組み合わせる方式が採用されており、対面や郵送に比べて短時間で手続きが完了しやすくなっています。実際の撮影時につまずきやすいポイント(ピンボケ、反射、書類の四隅が写っていないなど)や、口座開設全体の実践的な手順は、仮想通貨初心者の始め方の解説で具体的に紹介しています。
💡 用語解説:eKYCの「方式」とは? ▼ 開く
■ eKYCの主な方式とは?
オンラインでの本人確認方法にはいくつかの「方式」があり、法令上はアルファベットに対応する呼び方(ホ方式など)で区別されています。
- ホ方式:本人確認書類の画像(厚みなどが分かるもの)と、自分の容貌(顔)の画像をあわせて送信する方式。現在、多くの仮想通貨取引所で採用されています
- ICチップ読み取り方式:マイナンバーカードや運転免許証などに内蔵されたICチップの情報をスマートフォンなどで読み取る方式。より偽造されにくいとされています
この記事での読み方
次のセクションで説明する2027年の制度変更は、この「ホ方式」が廃止され、ICチップを使う方式などへ移行するという内容です。方式の名称そのものを覚える必要はありませんが、「今の主流のやり方が変わる」という点を押さえておくと、次のセクションが理解しやすくなります。
【2027年4月〜】犯収法改正でKYCの本人確認方法が変わる
犯罪収益移転防止法の施行規則が改正され(改正命令の公布:2025年6月24日)、2027年4月1日から、現在主流の「ホ方式」(本人確認書類の画像と容貌の画像を組み合わせる方式)が廃止され、マイナンバーカードなどのICチップ読み取りや公的個人認証(JPKI)を中心とした方式へ移行する見込みです。精巧な偽造書類や写真を使ったなりすましのリスクに対応するための見直しとされています。
三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3行は、2026年度中に前倒しで対応する見通しであることが報じられています。一方で、暗号資産交換業者を含む特定事業者ごとの具体的な対応スケジュールは、本記事執筆時点(2026年8月)では確定していません。最新の対応状況は、利用する取引所の公式発表でご確認ください。
《出典》
改正事項に関する資料|JAFIC 警察庁
仮想通貨(暗号資産)交換業者もこの改正の対象になるのか
仮想通貨(暗号資産)交換業者は犯罪収益移転防止法上の特定事業者に含まれるため、今回の改正の対象に含まれます。銀行や証券会社と同様に、今後は本人確認の受付方法を順次切り替えていくことになります。読者側で今すぐ何かを準備する必要はありませんが、これまで使っていた本人確認の方法が、将来的に案内なく使えなくなる可能性がある点は知っておくとよいでしょう。日本と海外の規制の違いをより広く知りたい方は、仮想通貨の法整備最前線の解説もあわせてご確認ください。
KYCのメリット・デメリットと、不正利用防止に果たす役割
KYCには、手間がかかるという分かりやすいデメリットがある一方、読者自身の資産を守るというメリットもあります。
- メリット:不正な口座開設やなりすましを防ぎ、取引所全体の信頼性・市場の安定性を高める。トラブル発生時に取引所が本人確認済みの利用者と連絡を取れる
- デメリット:書類の準備や撮影に手間がかかる。個人情報を取引所に預けることへの不安が残る
デメリットである「手間」については、eKYCの普及により数分〜数十分程度で完了するケースも増えており、以前に比べて負担は小さくなってきています。取引所側も、必要以上の情報を求めない、提出書類を適切に管理するといった対応でプライバシーへの配慮を進めています。
詐欺的なサービスや悪質な業者を見分けるポイントは、仮想通貨投資詐欺に騙されないためのポイントの解説で詳しく取り上げています。
取引所のセキュリティ強化の契機になった事例(KYCとは別の問題)
KYCの重要性を説明する際、2018年のコインチェック事件や2019年のBitpoint Japan事件が引き合いに出されることがありますが、これらの事件の直接の原因は、いずれも取引所側のホットウォレット管理体制の不備(マルウェア感染や秘密鍵の窃取)であり、KYC(本人確認)の不備が原因ではありません。本人確認と、預かった資産をどう管理するかは別の論点です。
ただし、両事件をきっかけに、取引所には本人確認だけでなく、資産管理体制やセキュリティ対策全般の強化が強く求められるようになりました。国内で仮想通貨を扱う際は、KYCの有無に加えて、金融庁への登録状況や資産の管理体制もあわせて確認すると安心です。国内の主な取引所を比較したい場合は、仮想通貨取引所の比較記事をご覧ください。
《出典》
コインチェック事件とは?北朝鮮によるハッキング犯行説とその後の展開|CoinDesk JAPAN
ビットポイント、仮想通貨流出で緊急会見「原因は調査中」ホットウォレットの秘密鍵、窃取か|ITmedia NEWS
KYC不要(KYCなし)で仮想通貨は取引できる?そのリスクと注意点
「手続きが面倒」「個人情報を渡したくない」という理由から、KYC不要(KYCなし)で使えるサービスを探して検索する方も少なくありません。海外の一部の取引所や、運営主体を介さずに取引が成立する分散型取引所(DEX)などには、口座開設時に本人確認を求めない、あるいは簡易な確認で取引を始められるものが実際に存在します。
ただし、KYCを求めない、あるいは日本の規制対象外のサービスを利用することには、相応のリスクが伴います。「手間がない」というメリットだけを見て判断するのは避けたほうがよいでしょう。
日本居住者が海外取引所を利用する際に確認しておきたい規制上のポイントは、OKX取引所の解説(日本居住者の利用可否)で具体的に整理しています。
KYCなしのリスクと、事業者側の規制強化の流れ
KYCを求めないサービスを利用する場合、主に次のようなリスクが考えられます。
- トラブルや不正アクセスが起きた際に、運営側の補償や問い合わせ対応が期待できない場合がある
- 資産が急に凍結・出金停止となっても、日本の法律にもとづく救済手段が及ばない可能性がある
- マネーロンダリングに悪用されるリスクが高いサービスとして、各国の規制強化の対象になりやすい
実際、暗号資産関連事業者に対する規制は強化される方向にあります。日本でも2026年7月に、暗号資産の貸付け(レンディング)事業を金融商品取引法の規制対象に加える改正法が成立しており、事業者側のリスク管理体制の整備が今後さらに求められる見通しです。本人確認をきちんと行う正規のサービスを選ぶことは、こうした規制強化の流れに沿った選択でもあります。本人確認を済ませたうえで安全に資産を増やす方法も、選択肢の一つとして参考にしてください。
KYC手続きでよくある質問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| なぜこんなに多くの書類が必要なのですか? | 本人確認と住所確認をそれぞれ別の書類で裏付けることで、なりすましや虚偽申告を防ぐためです。複数の書類を組み合わせることで、身元確認の精度を高めています。 |
| KYCの審査にはどれくらい時間がかかりますか? | 取引所や申請の混雑状況によって異なりますが、数分〜数日程度が目安です。書類に不備がある場合は、その分だけ時間がかかります。 |
| 審査に時間がかかっている・落ちてしまった場合はどうすればよいですか? | まずは提出した書類の有効期限、氏名・住所の表記が申込内容と一致しているか、書類の四隅や文字がはっきり写っているかを確認しましょう。改善しない場合は、取引所のサポート窓口に直接問い合わせるのが確実です。 |
| KYCを行わない場合、取引はできますか? | 国内の正規取引所では、多くの場合KYCが完了するまで入出金や取引が制限されます。KYCを求めないサービスも存在しますが、相応のリスクを伴うため、内容を理解したうえで判断することが重要です。 |
まとめ|KYCを正しく理解して安全に取引を始めよう
KYCは、仮想通貨(暗号資産)取引所が独自に課す面倒な手続きではなく、犯罪収益移転防止法にもとづく法律上の義務です。「なぜ必要か」という背景を理解しておくと、書類提出のハードルを必要以上に高く感じずに済みますし、KYCをきちんと実施している取引所かどうかを、安全なサービスを見分ける基準の一つとして使うこともできます。
2027年4月には本人確認の方法自体が変わる見込みで、今後も制度は更新されていきます。「手続きが面倒だから」という理由だけでKYC不要のサービスに飛びつくのではなく、それぞれのリスクを理解したうえで、自分に合ったサービスを選んでいきましょう。本人確認を済ませたうえでレンディングという選択肢も含めた運用を検討したい方は、あわせてご覧ください。