8月米PCEは市場予想を下回る、10月利上げ観測は急低下

米商務省経済分析局(BEA)が9月30日に発表した8月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比3.4%上昇し、7月の3.4%上昇から横ばいでした。米イラン紛争の長期化懸念を受けて原油価格が再び高騰しましたが、全体の伸びは前月(改定値)と同水準にとどまり、市場予想の3.7%を下回る結果となりました。

その結果、70%程度まで高まっていた10月の利上げ期待が35%程度まで低下しています。市場を覆っていた過度なインフレ警戒感が和らぎ、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策引き締めに対する過度な懸念が一旦後退した形と言えます。

インフレ警戒一服も、米国債利回り上昇が市場の重しに

インフレ警戒を示さなかったことで、米株式市場はIT・ハイテク株中心にポジティブな反応を見せました。しかし、NYダウ平均は3日続落し、ナスダックは若干の上昇にとどまるなど、手放しで喜べる状況にはありません。

金融市場では米国債利回りの動向を注視するとともに、新たな米経済指標の発表を待つ神経質な姿勢が広がっています。金融市場の関心はすでに、2日に発表される9月の米雇用統計に移っています。非農業部門雇用者数は9.0万人増と、8月の16.2万人増から大きく減速が予想されていますが、それでも金融市場では依然として12月に追加利上げが実施されるとの予想が根強く残っています。

このような強いインフレ・高金利の長期化期待を映して、米国債券市場では利回りの上昇が止まりません。米国債の利回りは5年債が5%台に乗せており、10年債は5.3%台まで上昇しています。このような歴史的な水準での金利上昇を受けて、株式市場、商品市場、暗号資産市場のいずれの市場も少なからず影響を受けていると言って良いでしょう。

株式市場では金利上昇による借入コスト増大や企業業績への悪影響を気にしてか、NYダウ平均とS&P500は8月の前半に高値をつけてから上値が重く、調整局面に入ってしまったようです。NASDAQは一部の優良なIT・ハイテク株のおかげで辛うじて堅調さを維持している様子です。

主要市場・指標 直近の動向と金利上昇の影響
NYダウ平均 / S&P500 8月前半の高値から上値が重く、本格的な調整局面に突入
NASDAQ 一部の大型IT・ハイテク株の買い支えにより辛うじて堅調を維持
米国債利回り 5年債は5%台、10年債は5.3%台まで急ピッチで上昇

金利上昇下でビットコインと金が反転する「ディベースメント取引」の真髄

一方、インフレに対抗できる実物資産として金と暗号資産が注目されますが、利息を生まない金利を持たないこうした資産は、現在の金利上昇を受けて相対的な魅力が薄れ、逆風を感じる状況が続いていました。

しかし、8月19日にあった「米国国債の買い入れ消却の上限を少なくとも2倍にする」との発表が市場の潮目を大きく変えました。この政策は将来的な法定通貨(ドル)の供給増大と価値の希薄化を強く連想させるものであり、“ディベースメント取引”(ドルの価格下落に備え、通貨との相関性の低い代替資産に資金を移す逃避行動)を一気に活発化させました。

その結果、特定国の信用リスクに依存しない無国籍通貨とも言われる金とビットコインに世界中から投資資金が集まり、大口の買い注文が広がりました。金利上昇という逆風以上に、法定通貨の信認低下に対するヘッジ(防衛策)としての需要が勝ったことが、両資産が反転上昇した最大の理由と言えます。

ビットコインは強気相場入りへ、新興国も金を爆買い

その後の動きとしては、金はこれまでの下落基調からは明確に転換したと思われますが、依然として上値は重く安値圏のレンジ内でのもみ合い状況が続いています。一方、よりリスク選好度の高い資金が向かいやすいビットコインは、その後3割近くの猛烈な上昇を見せ、83,000ドル-84,000ドルという水準で推移しています。

このような劇的な価格の推移を受けて、ビットコインに関しては市場関係者から「調整相場の完全な終了」や「新たな強気相場(ブルマーケット)入り」と言った強気のコメントが相次いで見られています。さらに、米国市場における現物ビットコインETFへの継続的な機関投資家からの資金流入や、大手企業による準備資産としての暗号資産保有拡大といった好材料も、この強気相場を強力に裏付けています。

また金に関しては、今年に入ってからの価格調整局面において、新興国を中心として各国中央銀行による外貨準備としての金の買入が絶え間なく続いています。特にBRICS諸国などの新興国では、ドル覇権からの脱却と自国の経済基盤の強化を目的に、金関連産業の育成に力をいれる動きも見せており、これが金価格の強固な下値支持線として機能しています。

今後の投資シナリオと市場の展望

欧米を中心に広がる歴史的な金利上昇サイクルがいつ止まるのかは未だ分かりませんが、今回の米PCE価格指数の結果からも、インフレは徐々にピークアウトの兆しを見せ始めています。

長く苦しい調整局面を終えつつあるビットコインと金の今後の動きには、最大の関心が寄せられています。株や債券といった伝統的資産の先行きが不透明な中、ポートフォリオの分散と資産防衛の観点から、これら代替資産への資金流入は今後も継続する可能性が高いと見て、引き続きその動向に注目したいと思います。