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倉本の国際経済の見どころ|国際経済の重要な出来事や抑えておくべきポイントを取り上げてわかりやすく解説

倉本の国際経済の見どころ   

株式会社J-CAM金融コンサルタントの倉本佳光が40年以上金融業に従事してきた経験を元に国際経済の重要な出来事や抑えておくべきポイントを取り上げてわかりやすく解説するコラムです。刻々と変化する相場のモメンタムをキャッチアップしていきます。

NVIDIA決算発表 市場予想を大きく上回る!

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ニューヨーク証券取引所

22日の国内株式市場は1989年12月の史上最高値38915.87円を一時超え、前場を38913.84円で終えています。前日米国で取引終了後に発表されたエヌビディアの好決算を受けて651円高と大幅高になりました。

前日の米国では1月に開催されたFOMC議事録の公表もあり、こちらでは時期尚早な利下げに対する懸念を表明する内容で「インフレが確実に鈍化していることを示す一段の証拠を確認したい」との考えが明らかになりました。利下げのタイミングに関しても不透明な内容でした。この内容を受け、また取引終了後に発表されるエヌビディアの決算についての警戒感もあり昨日のNY株式市場は慎重な展開で1日を終えていました。

エヌビディアの決算発表

エヌビディアの決算は、2023年11月-2024年1月期で売上高が221億ドルと前年同期比約3.7倍、純利益123億ドルが約8.7倍となり、一株あたり利益(EPS)が5.16ドルでした。これは市場が予想していた売上高201億ドル、EPS4.60ドルを大きく上回る内容でした。さらに2024年2月-4月期の見通しについても売上高240億ドル±2%とされ、こちらも市場予想の219億ドルを上回りました。この結果を受けて株価は時間外取引で大きく上昇しています。

エヌビディアの発表によりNY株式市場の牽引役であるマグニフィセントセブン7社(アップル、アマゾン、アルファベット、マイクロソフト、メタ、エヌビディア、テスラ)の決算発表が全て終わりました。今年の7社の決算は好調な結果となり、7社合計のEPSは2022年の26.83ドルから55.85ドルと約2.1倍になっています。(アップルは9月決算、マイクロソフトは6月決算で集計)その中でも大きな変化が見られたのがマイクロソフト(2.48ドル→9.68ドル)、メタ(8.59ドル→14.87ドル)、エヌビディア(1.74ドル→12.17ドル)です。アマゾンも赤字決算から黒字(2.90ドル)に転換しています。

マグニフィセントセブンだけが好調な米国経済

7社を含むS&P500のEPSは2022年の196.95ドルから2023年213.84ドル(推計)で16.89ドルの増加となりましたが、7社の利益を除くと2022年の170.12ドルから2023年には157.99ドル(推計)で12.13ドルの減少、約7.1%の減益となっています。

S&P500のEPSに占める7社のシェアは26.9%を締めており、現在の7社の影響力がいかに大きなもの分かります。しかし、昨年来大きく上昇しているNY株式市場では、牽引約7社は好調ですが、そのほかの企業は利益が伸びていません。S&P500全体のPER(株価収益率)は24.9倍となっており、株価の割高感が強くなっています。

一方、今年の株価見通しについて大手金融機関は相次いで上方修正を行い、ゴールドマンサックスは5200ポイント、UBSは5400ポイントと発表しています。予想PERについては22倍前後を想定しており、EPSについても240ドル程度を見込んでいます。

楽観論と厳しさを増す今後の景気動向

先週発表された米国のCPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)はインフレ鈍化に疑念を持たせるものでした。金融当局はFOMCの議事録にもあるようにしばらくの間、一段の証拠を確認していくとしており、高い金利水準は長期化するものと思われます。多くの企業が減益となっている現状で、金利負担は重くのしかかってくると考えられ、今後の景気動向は厳しさを増すと思われます。大手金融機関の予想する順調な企業利益は本当に実現していくのでしょうか。

エヌビディアなどの牽引役の存在によって、楽観論が支配している株式市場ですが、どこかに吹き飛んでしまったリスクについて冷静に見ていく局面が近づきつつあるのではないでしょうか。