監修:株式会社J-CAM 金融アドバイザー AFP認定者 倉本 佳光 Yoshimitsu Kuramoto
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。その後、メリルリンチ日本証券株式会社マネージメント・コミッティーメンバー、岡三アセットマネジメント株式会社理事などを歴任。
執筆:BitLending編集部 更新日:2026年9月10日
イーサリアムのアップデートは、1回の切り替えで完成するものではなく、複数のネットワーク更新として現在も続いています。The MergeでPoWからPoSへ移行した後も、Dencun、Pectra、Fusakaが実装され、次のGlamsterdamが開発されています。
一方、以前「イーサリアム2.0」の一部として説明されていた従来型のシャードチェーンは、現在のロードマップから外れました。現在は、L2(レイヤー2)が取引をまとめ、Ethereum L1が決済とデータ可用性を支えるロールアップ中心の方針です。
この方針は利用コストを下げる一方、取引・利用者・流動性がL2へ移り、L1の直接利用や手数料収入が弱まる「L1過疎化」の懸念も生みます。本記事では、2026年9月10日時点の進捗、シャーディングの現在地、L1過疎化の問題と解決策を公式ロードマップに基づいて整理します。
免責事項(投資助言ではありません)
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イーサリアムのアップデートはどこまで進んだ?
2026年9月10日時点では、Fusakaまでがメインネットへ実装済みで、Glamsterdamが開発中、Hegotáがその次の更新として計画されています。「メインネット実装済み」「開発中」「計画・研究中」のどの段階かを分けて確認することが重要です。
| アップデート | 実施・予定 | 状態 | 主な変更 |
|---|---|---|---|
| Paris(The Merge) | 2022年9月15日 | 実装済み | PoWからPoSへ移行 |
| Shapella | 2023年4月12日 | 実装済み | ステーキングされたETHの出金 |
| Dencun | 2024年3月13日 | 実装済み | EIP-4844とブロブを導入 |
| Pectra | 2025年5月7日 | 実装済み | EOA機能拡張、バリデーター効率化、ブロブ拡張 |
| Fusaka | 2025年12月3日 | 実装済み | PeerDAS、ブロブ拡張、L1処理容量の強化 |
| Glamsterdam | 2026年第4四半期予定 | 開発・テスト中 | ePBS、Block-level Access Listsなど |
| Hegotá | 2027年予定 | 計画中 | FOCIL、アカウント機能の改善など |
ロードマップはコミュニティの現時点の方針であり、時期や採用機能は変わり得ます。予定と実装済みを同じ確度で扱わないことが、進捗を正しく読む第一歩です。
《出典》
Ethereum roadmap|ethereum.org
Announcing the Platåberget Testnet|Ethereum Foundation Blog
「イーサリアム2.0」はいつ完成したのか
「イーサリアム2.0」は、PoS移行やスケーリングなどをまとめて表した旧称です。Ethereum.orgはEth1・Eth2という呼び方を廃止し、実行レイヤーとコンセンサスレイヤーを合わせた1つのEthereumとして説明しています。
現在は「Ethereum 2.0という新しいチェーンが完成する」とは捉えません。PoS移行はThe Mergeで完了しましたが、スケーリング、安全性、使いやすさの改善は独立したアップデートとして続いています。
ETH保有者が「ETH2」という別トークンへ交換したり、ウォレット内のETHを移行したりする必要はありません。「新しいETHへの交換が必要」という案内は詐欺を疑うべきです。
EthereumとETHの基本や供給設計は、イーサリアムとETHの違いを解説した記事で確認できます。
《出典》
The great renaming: what happened to Eth2?|Ethereum Foundation Blog
The Merge|ethereum.org
主要アップデートの進捗と変更点
各アップデートは、PoS移行、ステーキング出金、L2用データ領域、L1処理能力など異なる課題を担当しています。The Mergeだけでガス代や処理速度、シャーディングの課題まで解決したわけではありません。
The Merge・Shapella:PoS移行とステーキング出金
The Mergeは、Mainnetの実行レイヤーとBeacon Chainのコンセンサスレイヤーを統合し、ブロック生成をPoWのマイナーからPoSのバリデーターへ移しました。既存の取引履歴とETHは維持されています。
Shapellaでは、バリデーターがステーキングしたETHと報酬を引き出せるようになりました。PoSではETHを担保として参加するバリデーターが検証を担うため、報酬を「マイニング報酬」と呼ぶのは正確ではありません。
参加方法やスラッシングなどのリスクは、ステーキングの仕組みとリスクで詳しく解説しています。
💡 用語解説:実行レイヤーとコンセンサスレイヤー▼ 開く
■ 2つの役割を合わせてEthereumを構成します
- 実行レイヤー:取引やスマートコントラクトを実行し、状態を管理します
- コンセンサスレイヤー:PoSによってブロックの順序と正当性について合意します
この記事での読み方
旧Eth1が単独で残り、旧Eth2へ置き換わったのではありません。両レイヤーが統合された現在のEthereumとして動いています。
Dencun・Pectra:L2データコストと使いやすさを改善
DencunはEIP-4844を実装し、L2が取引データを一時的に保存する「ブロブ」を導入しました。主な効果はL1ガス代の直接的な大幅削減ではなく、ロールアップがEthereumへデータを投稿するコストを下げ、L2手数料を抑えやすくすることです。
Pectraはブロブの目標数と上限を引き上げたほか、EOAが一時的にスマートコントラクト機能を利用できるEIP-7702、1バリデーター当たりの最大有効残高の拡大などを実装しました。
《出典》
Cancun-Deneb(Dencun)FAQ|ethereum.org
Prague-Electra(Pectra)|ethereum.org
Fusaka:L2用データ容量とL1処理能力を拡張
FusakaではPeerDASが導入されました。各バリデーターがブロブデータの一部をサンプリングして可用性を検証できるようにし、ノード負担を抑えながらL2向けデータ容量を増やす土台を整えています。
ブロブ数を大型アップデートの間にも調整できる仕組み、L1のガスリミット拡大、DoS耐性の強化も含まれます。これはL1の実行容量とL2向けデータ容量を同時に強くする動きです。
《出典》
Fulu-Osaka(Fusaka)|ethereum.org
Protocol Update 002 – Scale Blobs|Ethereum Foundation Blog
Glamsterdam・Hegotá:今後の予定
公式ロードマップでは、Glamsterdamは2026年第4四半期、Hegotáは2027年に予定されています。GlamsterdamではePBSとBlock-level Access Listsが主要機能とされ、ブロック処理の効率化とL1拡張を目指します。
Hegotáでは、複数のバリデーターが有効な取引の包含を要求できるFOCILなどが計画されています。これはブロック構築の集中による検閲リスクを抑え、L2の決済保証を強める方向の施策です。
予定時期と採用範囲は変更される可能性があります。予定表だけでなく、メインネット実装と公式発表を確認する必要があります。
《出典》
Glamsterdam・Hegotá|ethereum.org
Glamsterdam Repricing Impact|Ethereum Foundation Blog
イーサリアムのシャーディングはいつ実装される?
結論からいうと、従来型のシャードチェーンはロードマップから外れました。L2用データを拡張するプロト・ダンクシャーディングは実装済みで、フル・ダンクシャーディングは確定日がなく、数年先と説明されています。
従来型のシャードチェーンは計画から外れた
以前はEthereumを複数のシャードへ分割し、各バリデーターが一部だけを処理する構想が説明されていました。しかし、L2ロールアップの開発が想定より早く進んだため、現在はシャードチェーンではなく、L2が利用するデータ領域を拡張する方向へ変わっています。
「シャーディングが実装されればL1上の全取引が一斉に高速化する」という理解は、現在のロードマップと一致しません。
プロト・ダンクシャーディングは実装済み
Dencunで実装されたEIP-4844は、フル・ダンクシャーディングへ向かう中間段階です。ブロブによって、ロールアップがデータをEthereumへ安価に投稿しやすくなりました。ただし、実行処理を複数のL1シャードへ分ける仕組みではありません。
L1とL2の費用差は、イーサリアムのガス代とL1・L2比較で確認できます。
フル・ダンクシャーディングの確定日はない
フル・ダンクシャーディングでは、データ可用性サンプリングなどを利用し、より多くのブロブを安全に扱える状態を目指します。Ethereum.orgが示す10万件超の処理能力はL2を含む将来のスケーリング目標であり、現在のL1処理件数ではありません。
「○年○月に完成する」とは断定せず、PeerDAS、ブロブ容量、クライアント開発などの前提技術がどこまで実装されたかを追う必要があります。
L2拡大でL1が過疎化する問題とは
本記事でいう「L1過疎化」とは、L2の低コスト化によって利用者の取引がL1から移り、L1の直接利用、手数料収入、ETHバーン、アプリや流動性の集積が弱まる懸念を指します。公式に定義された障害名ではなく、L1とL2の役割分担を評価するための論点です。
L1の取引件数が減ることと、Ethereum全体が使われなくなることは同じではありません。L2が取引をまとめ、ブロブへデータを投稿し、最終的な決済や検証をEthereumへ依存するなら、L1は基盤として利用されています。
《出典》
Scaling Ethereum|ethereum.org
How L1 and L2s can build the strongest possible Ethereum|Ethereum Foundation Blog
問題1:L1手数料とETHバーンが弱まる可能性
Dencunでは、L2が従来利用していたcalldataより安価なブロブを使えるようになりました。利用者には手数料低下という利点がありますが、L1へ支払われる料金が小さければ、短期的には手数料収入とEIP-1559によるETHバーンが弱まる場合があります。
料金単価の低下だけで結論は出せません。L2利用の増加によってブロブ需要が拡大するか、L1上のDeFiや決済需要が維持されるかを合わせて確認します。
問題2:流動性と利用体験が複数L2へ分断される
L2ごとに資産、アプリ、ブリッジ、シーケンサーが分かれると、利用者は資産の所在や手数料用トークンを意識しなければなりません。L2が増えるだけでは、Ethereum全体が1つの市場として使いやすくなるとは限りません。
資産移動に時間や追加コストがかかる状態は、L1上の厚い流動性をL2から活用しにくくし、L2間の分断を強めます。
問題3:L2がL1へどこまで依存しているか分かりにくい
すべてのEVM互換ネットワークがEthereumのL2というわけではありません。Ethereumへ取引データや証明を投稿しないネットワークは、EVM互換であってもEthereum L1の安全性やデータ可用性を利用しているとは限りません。
どこへデータを保存し、どこで最終決済し、障害時に利用者がL1から資産を回収できる設計かを確認する必要があります。
L1過疎化を防ぐための解決策
解決策は、利用者をL1へ無理に戻すことではありません。L1自体を拡張しながら、L2の成長がL1のデータ需要・決済・流動性・安全性へ還元される関係を作ることが中心です。
Ethereum Foundationは、L1ガスリミットとブロブ容量の拡張、L1流動性へのアクセス改善、L2間の相互運用性を並行して進める方針を示しています。
《出典》
Protocol Priorities Update for 2026|Ethereum Foundation Blog
How L1 and L2s can build the strongest possible Ethereum|Ethereum Foundation Blog
解決策1:L1の実行容量を引き上げる
ガスリミットを引き上げれば、L1が直接処理できる取引やスマートコントラクト実行を増やせます。ただし、単純な上限引き上げはノード負担やDoSリスクを増やすため、Block-level Access Lists、ガスの再価格付け、クライアント性能の改善を合わせて進めます。
Block-level Access Listsは、ブロックがアクセスする状態を事前に示し、並列処理やディスク読み取りの効率化につなげる仕組みです。
解決策2:ブロブを拡張し、適切な料金市場を保つ
PeerDASとブロブ数の段階的拡大は、L2がEthereumへ投稿できるデータ量を増やします。一方、容量に対して需要が少なく料金が極端に低いと、L2がL1へ支払う対価が価格シグナルとして機能しにくくなります。
Fusakaに含まれるEIP-7918は、実行ガスとの関係からブロブ料金の下限を形成し、ブロブ市場が混雑へ反応できる状態を保つものです。容量拡大と料金市場の設計を同時に見る必要があります。
解決策3:L1・L2間の流動性と相互運用性を高める
クロスL2取引、入出金、確定時間を改善し、L1上の流動性をL2から利用しやすくすれば、各L2が孤立した市場になる問題を抑えられます。
単にブリッジを増やすのではなく、信頼を置く第三者を増やさずに移動できるか、障害時の資産回収経路があるか、L1の決済保証を利用しているかが重要です。
解決策4:ブロック構築の集中と検閲リスクを抑える
ePBSは、ブロック提案と構築の役割分担をプロトコルに組み込み、外部ソフトウェアへの信頼を減らしながら処理能力を高める方向の仕組みです。FOCILは、単一の構築者が有効な取引を除外し続けるリスクを抑えることを目指します。
これらはL1の直接利用件数を増やす施策ではありませんが、L1の中立性と決済基盤としての信頼を維持し、L2がEthereumへ根を置く理由を強めます。
アップデートを判断するチェックポイント
名称や予定日だけでなく、次の指標を継続的に確認します。
- 実装状況:仕様提案、テストネット、メインネット実装のどの段階か
- L1実行容量:ガスリミットと実利用がどう変化したか
- ブロブ需要:利用率、容量、料金が持続的に増えているか
- ETHの価値捕捉:L1手数料、ブロブ料金、ETHバーンを合わせて見る
- L1流動性:DeFiや決済の中核として利用されているか
- L2との関係:データ可用性と最終決済をEthereumへ依存しているか
- 相互運用性:L2間の資産移動が安全で分かりやすいか
- 分散性:シーケンサー、構築者、バリデーターが集中していないか
L1の取引件数やガス代だけでは、成功・失敗を判定できません。低コスト化による需要拡大と、L1へ支払われる対価や安全性への依存をセットで評価します。
アップデートがETHの需要や価格へ与える影響は、イーサリアムの将来性と価格を判断するポイントで分けて確認してください。
イーサリアムのアップデートに関するFAQ
「イーサリアム2.0」「次回アップデート」「シャーディング」について、現在の公式ロードマップに沿って整理します。
イーサリアム2.0はいつ完成しますか?
「イーサリアム2.0」は現在使われていない旧称であり、特定の日に完成する別チェーンではありません。PoSへの移行は2022年9月15日のThe Mergeで完了しましたが、スケーリング、安全性、使いやすさを改善するアップデートは現在も続いています。
イーサリアムの次回アップデートはいつですか?
2026年9月10日時点の公式ロードマップでは、次の主要アップデートであるGlamsterdamは2026年第4四半期に予定されています。ただし、Ethereumの開発はコミュニティ主導で進むため、実施時期や採用機能は変更される可能性があります。
イーサリアムのシャーディングはいつ実装されますか?
従来型のシャードチェーンは現在のロードマップから外れています。L2用データを安価にするプロト・ダンクシャーディングは2024年3月のDencunで実装済みです。フル・ダンクシャーディングは数年先とされていますが、確定した実装日はありません。
L2が増えるとEthereum L1は不要になりますか?
L2が取引データや証明をEthereumへ投稿し、L1を最終決済とデータ可用性の基盤として利用する限り、L1は重要な役割を持ちます。ただし、L1手数料、ETHバーン、流動性が弱まる可能性や、複数L2への分断は残るため、L1拡張、ブロブ料金、相互運用性、分散性を継続して確認する必要があります。
まとめ
イーサリアムのアップデートはThe Mergeで終わったわけではありません。Dencun、Pectra、Fusakaまで実装され、2026年9月10日時点ではGlamsterdamが次の主要アップデートとして開発されています。
従来型のシャードチェーンは計画から外れ、現在はL2ロールアップとブロブを中心に拡張する方針です。プロト・ダンクシャーディングは実装済みですが、フル・ダンクシャーディングの確定日はありません。
L1過疎化は、L1の取引件数だけでなく、ブロブ需要、手数料、ETHバーン、流動性、L2の決済先を合わせて判断する問題です。L1の実行容量、L2向けデータ容量、相互運用性、検閲耐性を並行して改善できるかが重要です。
ETHの貸し出しを検討する場合は、アップデートへの期待だけで判断せず、暗号資産レンディングの仕組みとリスクも確認してください。