米国市場に「トリプル安」の衝撃

5月21日のNY株式市場は大幅安となり、NYダウ平均が-816ドル、S&P500が-95ポイント、NASDAQが-270ポイントの下げ幅となりました。 これは議会で審議されているトランプ減税の恒久化を含めた大型減税法案による財政悪化懸念から長期金利が上昇する中、 同日行われた20年国債の入札結果が実勢を上回る内容で、超長期債に対する投資家の需要の弱さを示したものとなり、 長期金利が一段と上昇し米国10年国債利回りは4.60%台に乗せたことがポイントとなりました。

ECBの警告が追い打ち

さらに欧州でECB(欧州中央銀行)が半年に1度行う金融安定報告において、「トランプ米国大統領の関税政策により米国資産のリスクに対する投資家の懸念が強まり、これが世界の金融システムにさらなる衝撃を与える可能性がある」と警告をしたことが下げを拡大させました。

こうした動きを受けて外国為替市場ではドル売りが強まり、ドル円は143.64円と円高水準で終えています。

European Central Bank

金融安定報告に見える構造的変化の兆し

ECBの金融安定報告は、「4月の米国通商政策の発表以降、ドルや米国債といったこれまで安全とみなされてきた資産を遠ざける『異例の動き』がみられ、『根本的な体制の変化』が示唆されている可能性がある」とし、さらに「世界的な資本の流れがより広範にわたって変化するリスクが高まり、世界の金融システムに重大な影響を及ぼす可能性がある」としています。

そして「不確実性の高まりによって、テールイベントがより発生しやすくなるとすれば、投資家はネガティブシナリオの発生リスクやその影響を過小評価している可能性がある」とも警告を発しています。

資金の逃避先はどこに向かうのか

米国の財政悪化に関する懸念は先週のコラムでも取り上げていますが、ECBがドル資産からの逃避による世界金融システムへの影響を取り上げ、投資家へ警告を発したことは異例と思われます。

昨日のドル資産トリプル安の一方で金価格と暗号資産ビットコインの価格は堅調に上昇をしています。特にビットコイン(BTC)は史上最高値を更新する動きとなっています。

今後、ドル資産からの逃避が強まるとするなら、金とビットコイン等の暗号資産への注目が高まると考えられ、これからの動向は目が離せなくなりそうです。