ビットコインで企業価値を創る:メタプラネットの新経営モデル
2025.05.30
ビットコイン保有企業として注目されるメタプラネット社
国内外で企業がビットコインを保有する動きが広がりを見せています。
こうした動きは、米国のソフトウェア企業ストラテジー(旧マイクロストラテジー)が先駆けとなり、世界中に波及しました。日本においても、株式会社メタプラネットをはじめとする先進的な企業がこの動きに追随し、注目を集め始めています。
マイクロストラテジーが切り拓いた企業のBTC投資戦略
マイクロストラテジーは、ビジネスデータの分析とそのUX改善を主事業とするIT企業です。従来、同社のバランスシートの大部分は米ドル資産でした。しかし、2020年に同社はビットコインへの大規模投資という決断をしたのです。2020年は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の渦中にありました。そのパンデミックの影響で多くの企業の収益が急激に悪化し、それに伴い世界経済全体が深刻な落ち込みを見せました。このような経済状況を踏まえ、ストラテジーの会長、マイケル・セイラー氏は米ドル資産の大量保有が長期的に見て賢明ではないと判断し、インフレに強い資産への転換が合理的な戦略だと結論づけました。
インフレ対策資産としてのビットコイン
金や銀は長い歴史を通じて高い価値保存性を示してきました。政策によって操作可能な法定通貨とは異なり、金や銀の供給量は比較的安定しているため、急激な価値低下のリスクが相対的に小さいと考えられてきました。ビットコインもまた、需給バランスが崩れにくい性質を持っています。その発行総量には上限が設定されているため、需要に対して供給量が極端に増加することはありません。こうした理由から、ビットコインは対インフレ力のある資産として期待されています。
マイクロストラテジーは、ビットコインの長期的価値を重視し、低金利環境に限らず長期的にビットコインの購入を継続する方針を示しています。セイラー氏は、ビットコインが将来、企業や個人にとっての安全な資産置き場として機能すると考えています。

Fidelityのレポート『Adding Bitcoin to a Corporate Treasury』(2024年6月)
このレポートでは、企業がビットコインを保有する主な動機として次の3点をあげています。
1.インフレと通貨価値の低下への備え:
米国債の格下げや財政赤字の拡大により、ドルの信用低下が進行し、国家に依存しない「無国籍資産」として、ビットコインの長期的な価値保存性が再評価されている。
2.供給上限と高い透明性:
発行上限2,100万BTCという明確な枠組みとブロックチェーンによる検証可能性が、他の資産にはない強みとなっている。また発行スケジュールがあらかじめプログラムされており、中央機関の判断によって供給が左右されることがない。
3.分散投資先としての機能:
S&P500などとの相関が低下し、金との相関が高まるなど、ビットコインは「リスク資産」から「分散資産」へと認識が移行しつつある。
※ 相場環境によって相関性は変動します。
日本でも広がる企業によるビットコイン保有
企業によるビットコイン保有の動きは日本にも広がっています。2025年5月時点でビットコイン等の暗号資産を保有する日本の上場企業の数は40社以上にのぼるとみられています。企業がビットコインを保有する戦略は、伝統的な金融市場の中で、新興である暗号資産市場への間接的なエクスポージャーを得ることができると考えられ、新たな評価軸として国内の株式市場においても認識されてきています。
国内のビットコイン保有企業として注目されているのがメタプラネット(コード3350)です。メタプラネットは、以前はホテルの運営・開発を手がけるレッド・プラネット・ジャパンでしたが、戦略的な事業転換を経て、ビットコイン保有企業へ変貌をしています。
メタプラネット誕生の経緯
ホテル業界はマイクロストラテジーと同じようにコロナ渦において厳しい状況に直面し、レッド・プラネット・ジャパンでは2020年の新型コロナウイルスの影響により、ホテルを一時閉鎖しています。その期間中にサイモン・ゲロヴィッチCEOは、ストラテジー社の手法に触発されました。
2023年2月、レッド・プラネット・ジャパンは臨時株主総会を開催し、社名をメタプラネットに変更しました。2024年4月8日、メタプラネットはビットコインをコア・トレジャリー資産として採用することを発表し、4月23日には初めてビットコインを購入しています。続く5月13日にはビットコイン・マニフェストを公表し、新たな企業トレジャリーモデルの基盤としてのビットコインに対する長期的なコミットメントを表明しました。2025年5月時点のビットコインの保有数は7,800BTCとなっています。
メタプラネットの「ビットコイン・ミッション」
- 1. ビットコインを長期的な準備資産として安全に取得・保有し、株主の皆さまに持続的な価値を提供します。
- 2. すべての投資家に対して透明性、公平性、尊重をもって接し、信頼と整合性を確保します。
- 3. 市場の動向に適応し、機会を捉えながら、ビットコインの保有量を継続的かつ戦略的に拡大します。
- 4. メタプラネットのパフォーマンスを測定・向上させるための主要指標(KPI)として「BTCイールド」を最適化し、株主に付加価値を提供します。
- 5. 規律ある経営と賢明なレバレッジを通じて、長期的にビットコインを上回るリターンを提供できるようメタプラネットを構築します。
- 6. 日本におけるビットコインの採用を推進し、個人や企業の認知度と関与を高めるための教育と啓発活動に取り組みます。

メタプラネットは事業内容として次の3つを掲げています。
1. ビットコイントレジャリーオペレーション
メタプラネットは、ビットコインの保有を戦略的に拡大することにより、BTCの利回りを最大化し、長期的な株主価値を創造することに専念しています。この戦略は、ビットコインを財務アプローチの基礎として位置付けるという同社のコミットメントを強調しており、今日の進化する金融環境における優れた価値の貯蔵庫としての比類のない可能性を強調しています。
2. ザ・ビットコインホテル
ホテルでは、ビットコインの謎を解き明かし、その採用を促進することに焦点を当てたワークショップ、イベント、プログラムを開催します。ビットコインホテルは2026年第1四半期にオープンする予定で、進化するデジタル資産の世界でイノベーションのビーコンになることを約束しています。
3. ビットコイン教育とメディア
メタプラネットは、ビットコインマガジンジャパンの独占ライセンスを活用して、ビットコインの採用と教育を推進し、全国で認知度とエンゲージメントを高めています。同社は、世界有数のビットコインメディアブランドを日本に持ち込むことで、日本の読者に合わせた信頼できるニュース、分析、教育コンテンツを提供しています。
メタプラネットは、ビットコインマガジンジャパンを通じて、ビットコインを理解し、採用するための知識とツールを個人や企業に提供し、日本におけるビットコインエコシステムの発展に貢献するというコミットメントを強化しています。
メタプラネットのまとめ
メタプラネットは、「ビットコイン・ミッション」を中核に据えた3本柱の事業を展開しながら、暗号資産領域における革新的な企業像を体現しています。すでにアジア最大のビットコイン保有上場企業として存在感を放ち、グローバルにおいても第9位という地位を確立しています。
同社は、債券発行や新株発行による資金調達を積極的に行い、その資金を活用してBTCを着実に取得。単なる資産保有にとどまらず、「1株あたりのビットコイン保有量の最大化」というユニークな企業価値創造戦略を採用しています。これは、暗号資産の世界と伝統的な株式市場とを結びつける、まったく新しい評価軸の提示でもあります。
2025年1月に発表された「2025-2026年ビットコイン計画」では明確な成長指針が掲げられており、2025年末までに10,000BTC、2026年末には21,000BTCの保有達成を目標としています。これは、単なる資産蓄積を超えた、「企業財務におけるビットコイン活用のロールモデル」としての本気の宣言にほかなりません。
日本発のビットコイン企業として、そして世界市場を見据える存在として、メタプラネットの今後の展開から目が離せません。