日銀、金融政策決定会合でマイナス金利維持を決定

日銀、金融政策決定会合でマイナス金利維持を決定

 日本銀行は今月18日-19日に金融政策決定会合を開催し、「大規模な金融緩和の維持を決定」しました。マイナス金利政策の解除を見送り、長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)の買い入れといった措置も現状を維持するとしました。これにより金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部へのマイナス金利0.1%の適用や長期金利の上限のメド1%などが継続されることになります。

今回の会合前の時点では、6日に氷見野良三副総裁が金融緩和からの出口について家計や企業に与える影響を前向きに捉える講演を行い、7日には植田和男総裁が国会において「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、市場では金融緩和政策の正常化に向けた動きが強まるとの見方が強まっていました。

 こうした日本銀行トップの発言からドル円相場は一時141円まで円高が進みましたが、会合後は一転して145円近くまで円安になるなど上下に大きく振れる動きを見せています。

そのような中で政府経済見通しが内閣府から本日発表されました。今回の内容では、2024年度の消費者物価指数(総合CPI)が前年度比+2.5%と7月に発表した+1.7%から上方修正されています。政府は、輸入コスト上昇による価格転嫁は一巡するものの、民間需要主導の成長で賃金上昇や激変緩和措置の延長による反動で2%を上回る見通しとしています。2022年度の実績は+3.2%、2023年度の実績見通しは+3%となっています。

実質GDP、名目GDPともに過去最高を更新  

実質GDP、名目GDPともに過去最高を更新

 また2024年度のGDP(国内総生産)についても実質GDP568兆円程度(前年度比+1.3%)名目GDPを615兆円程度(前年度比+3.0%)と上方修正しています。実質GDP、名目GDPともに過去最高を更新する見込みをたてています。

 政府は経済対策として個人消費や設備投資を喚起するために定額減税や投資促進税制を盛り込み、「デフレから抜けだし経済の新たなステージに移行するチャンス」としています。 政府の考え通りに進めば日本銀行が今後進める金融政策の正常化を後押しする可能性があります。

金融緩和政策の解除はいつになるのか

 

 一方、日本銀行は既に10月発表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で消費者物価(コアCPI)の前年比上昇率を2023年度から2025年度まで引き上げています。2023年度は前回発表の+2.5%から+2.8%へ、2024年度は+1.9%から+2.8%へ、そして2025年度は+1.6%から+1.7%としています。

 展望リポートに見られるように日本銀行は、物価基調の高まりに手応えを感じていると思われ、賃上げなどによる物価押し上げについて植田総裁は「これまでの見方に沿って上がってきている」と述べています。今回の会合では、金融緩和の出口を急いで物価の基調を腰折れさせないように慎重な姿勢を見せましたが、これから本格化する2024年の春闘での賃上げが物価の基調をさらに押し上げていくのかを見極め、金融緩和政策の解除に向けて進むと考えられます。

 国内金融市場では、日本銀行による金融緩和政策の解除は、「解除をするかしないではなく、いつ行うか」に視点が移っています。そうした動きを受け円相場の動きについても1ドル=150円のような円安局面は遠のき、円高により円の落ち着きどころを探る動きとなってきています。

今後の国内景気ならびに金融市場への大きな影響があるだけに日本銀行の動向からは眼が離せません。