日本、EUそして米国で中央銀行による政策金利を決定する会合が開催

 先月下旬に日本、EUそして米国で中央銀行による政策金利を決定する会合が開催され、今年の各国中銀の方向性を示す会合として注目を集めました。

マイナス金利解除に向かう日本銀行

日本銀行では昨年春に植田総裁が就任してから徐々に現在行っている大規模金融緩和政策について手を加えてきました。具体的には長短金利操作(YCC)の運用柔軟化を7月、10月に行いました。その後、12月の氷見野副総裁による緩和政策出口に関するコメントや植田総裁による「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との発言から、大規模金融緩和政策からの政策転換が強く意識されています。

 

そうした中で日本銀行は1月22日-23日に金融政策決定会合を開催し、31日に会合での発言内容をまとめた「主な意見」を公表しました。その内容は昨年12月の会合と比べて大規模金融緩和からの政策転換に向けた発言が増えているのが注目されます。

 物価情勢に関しては「賃金と物価の好循環実現の確度は着実に高まった」として物価上昇率2%の目標達成の確度が高まったとの見方が多くなり、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」としています。

また政策転換の時期についても「今後1-2ヶ月程度で」と具体的な時期についての発言も見られ、金融市場では今春3-4月でのマイナス金利解除との受け止めが広がっています。

政策転換に向けて、今後は国内要因として引き続き物価動向への注視しつつ、春期労使交渉の結果がポイントとなります。また海外要因として欧米中央銀行の利下げへの動きがあります。

 こうした検討要因があるものの今回の「主な意見」には政策転換に対する否定的な意見はなく長らく続いてきた大規模金融緩和政策の出口に向けた動きが進みつつあると考えています。

金融緩和?を模索するFOMC パウエル議長

金融緩和?を模索するFOMC

米国では1月30日-31日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、4会合連続での政策金利据え置きが決定し発表されました。

会合後に発表された声明で「委員会はインフレ率が持続的に目標である2%に向かっているとの確信を強めるまで政策金利の誘導目標レンジの利下げが適切になるとは見ていない」とし、利下げを急いでいないと示しました。(政策金利であるフェデラルファンド金利は現在5.25%-5.50%)

 記者会見でパウエル議長は「3月を利下げ開始の時期と特定するような確信のレベルに委員会が同月会合までに達しそうだとは、私は考えていないことを言っておきたいが、まだそれは分からない」とし、3月利下げは「最も可能性の高いケース、ないし基本シナリオと呼ばれるものでは恐らくないだろう」と述べました。さらに「適切だと判断すれば、われわれは現在のFF金利誘導目標レンジをより長期にわたって維持する用意がある」と述べました。

金融市場関係者が想定していた「3月から利下げを開始し年内に6回利下げが行われる」との楽観的な考えを否定する冷や水を浴びせた形となりました。

 一方で金融当局が実施しているバランスシート調整に関して毎月最大950億ドル(約13兆9,500億円)の縮小を続けるとしましたが、3月の会合で「バランスシートの問題に関する踏み込んだ議論を開始する予定」とコメントしています。

利下げの時期

 利下げの時期については否定的なコメントでしたが、今まで続けてきた総合的な引締め策からの緩和への模索が感じられる内容でした。  マーケットの関係者からは「インフレは著しく改善してきているが、基調的な景気が堅調である限りインフレ圧力再燃のリスクは無視できない」、「FOMCはインフレ率が持続的に減速しているとの確信が強まる必要性を強調し、ややタカ派的なトーンを打ち出した。金融当局がまだ「任務完了」の旗を掲げる準備ができていないという明確なシグナルだ。」、「FOMCは政策金利をより高い水準により長く据え置く方針だが、問題は利下げを行うかどうかではなく、いつ行うかだ。」といったコメントが出ています。

 今回の日米の会合で、「日本銀行の緩和政策からの転換」と「FRBの引締め政策からの転換」というそれぞれの相反する政策の方向性が議論されている状況が現れました。今後、これら政策の検討状況や実施タイミングにより日米金融市場が反応していくことになります。特に上昇が続く日米株式市場と為替市場の動向に注目が集まる事になります。