2026年6月11日の米国金融市場では、中東情勢をめぐる緊張緩和への期待が急速に高まり、株式・債券・商品・暗号資産市場が大きく反応しました。

トランプ米大統領は当初、イランに対して追加攻撃を行う可能性を示唆していましたが、その後、予定していた攻撃の中止を発表しました。米国とイランの協議が進展し、イランが核兵器を保有しないことなどを含む枠組みがまとまる可能性があるとの見方を示しています。

ただし、イラン外務省は最終的な合意には至っておらず、国内の意思決定機関で内容を精査していると説明しています。現時点では正式な和平合意が成立したわけではありませんが、中東情勢が悪化するとの警戒感が後退し、金融市場では地政学リスクの巻き戻しが進みました。

米・イラン緊張緩和への期待でリスク資産が大幅反発

6月11日のNY株式市場では、主要3指数がそろって大幅に上昇しました。中東情勢の緊張緩和によって原油価格の高止まりやインフレ再燃への懸念が和らぎ、投資家がリスク資産を買い戻す動きが広がりました。

市場・指標 6月11日の動き ポイント
NYダウ +929.97ドル(+1.86%) 50,848.75ドルまで上昇
S&P500 +127.31ポイント(+1.75%) 7,394.30ポイントまで上昇
NASDAQ総合指数 +640.16ポイント(+2.54%) ハイテク株を中心に大幅反発
WTI原油先物 87.71ドル(-2.58%) 地政学リスクプレミアムが縮小
ブレント原油先物 90.38ドル(-2.92%) 供給不安の緩和期待から下落
米国10年債利回り 4.457% 前日比8.1bp低下
ドル指数(DXY) 99.69 安全資産需要の後退により低下
金価格 4,212.21ドル 一時的な急落後に3.41%反発

原油価格の下落は、暗号資産市場にとっても重要な材料です。原油高が続けばインフレ圧力が強まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が高金利政策を長期化させる可能性が高まります。反対に、原油価格が落ち着けば米国金利の低下余地が生まれ、株式やビットコイン(BTC)などのリスク資産に資金が戻りやすくなります。

こうした動きを受けて、暗号資産市場ではBTCが一時6万3,500ドル前後まで反発しました。中東情勢の緊張緩和、原油価格の下落、米国債利回りの低下、ドル安という複数の要因が重なり、BTCにも買い戻しが入った格好です。

出典:Reuters「Equities rally, dollar dips with oil as Trump cancels Iran attacks」「Iran says no final decision made on deal that Trump hopes could be signed soon」

ビットコインは底打ち間近?6万ドル台で浮上する反発シグナル

BTCは昨年秋につけた高値以降、株式市場の上昇から取り残されるように下落し、直近では一時6万ドルを割り込む場面もありました。

BTCが大きく調整する一方で、米国株式市場ではAI関連株を中心に底堅い値動きが続いていました。株式とBTCの値動きが乖離した背景には、中東情勢の緊迫化、原油高、米国金利の上昇、ドル高に加え、暗号資産市場における機関投資家の需要低下やレバレッジポジションの解消があったと考えられます。

もっとも、BTCが6万ドル近辺まで下落したことで、割安感を指摘する分析も増えています。現在のBTC市場では、下落相場の終盤にみられる複数のオンチェーンシグナルが現れ始めています。

Glassnodeが指摘する「調整局面の後期段階」

オンチェーン分析企業Glassnodeは、6月10日に週間市場レポート「Finding a Floor」を公表しました。

同レポートでは、現在のBTC市場について、含み損の拡大、損失確定売りの増加、機関投資家の需要低下、企業によるBTC購入ペースの鈍化が同時に起きていると分析しています。

BTCは一時5万9,000ドル近辺まで下落しました。Glassnodeは、現在の市場が「さらなる下落前の一時的な踊り場」なのか、「本格的な底値形成」なのかを見極める重要な局面にあるとしています。

指標 Glassnodeの分析 市場への示唆
短期保有者の利益状態にある供給量 3.3% 短期保有者の95%超が含み損
短期保有者MVRV 一時0.81まで低下、その後0.83 新規投資家は平均17〜19%程度の含み損
AVIV RatioのZスコア 一時-1.09、直近-1.06 過去のサイクルと比較して割安圏
損失確定売り 加速しているものの、過去の底値形成時ほど極端ではない 売り圧力が完全に出尽くしたとは言い切れない
米国の機関投資家需要 Coinbase Premiumがディスカウント圏 積極的な押し目買いは限定的
企業によるBTC購入 6月以降は購入ペースが急減 相場を支えていた需要の一部が弱まっている

特に注目されるのが、短期保有者の損益状況です。利益が出ている短期保有者の供給量は、一時0.6%まで低下した後、3.3%まで小幅に回復しました。しかし、過去4年間の平均である55%を大幅に下回っています。

短期保有者の95%超が含み損を抱えている状況は、BTCが投げ売りを伴う「キャピチュレーション(降伏)」局面に近づいていることを示しています。

また、Glassnodeによると、直近の下落では6万4,000〜7万ドルに集中していたレバレッジを伴うロングポジションが大量に清算されました。過剰な投機ポジションが整理されたことは、中長期的な相場の安定化に向けた前向きな材料です。

一方で、損失確定売りの規模は、過去の底値形成局面で確認された水準にはまだ達していません。BTCは割安圏に入った可能性がありますが、底打ちを断定できる段階ではない点には注意が必要です。

出典:Glassnode「Finding a Floor」(2026年6月10日)

BTCの持続的な反発に必要な2つのマクロ条件

Glassnodeは、BTCが短期的な反発にとどまらず、持続的な回復局面に入るためには、マクロ経済環境の改善が必要だと指摘しています。

注目指標 Glassnodeが示した目安 BTCへの影響
ドル指数(DXY) 99を明確に下回る ドル高圧力が弱まり、暗号資産に資金が入りやすくなる
米国10年債利回り 4.2%程度まで低下 リスク資産のバリュエーションに対する圧力が和らぐ

6月11日時点のドル指数は99.69、米国10年債利回りは4.457%です。中東情勢の緊張緩和期待を受けて、いずれも低下しました。

ただし、Glassnodeが示した水準にはまだ届いていません。BTCの本格的な反転を確認するには、地政学リスクの後退だけでなく、ドル安と米国金利低下が継続するかを見極める必要があります。

出典:Glassnode「Finding a Floor」、Reuters「Equities rally, dollar dips with oil as Trump cancels Iran attacks」

K33は「流通供給量の50%超が含み損」と分析

暗号資産調査会社K33の分析として報じられた内容によると、BTCの流通供給量の50%超が含み損圏に入ったとされています。含み損となっているBTCは約1,000万BTCに相当し、その比率は1カ月前の約30%から急拡大しました。

K33は、過去の弱気相場において、含み損となったBTCの比率が50〜56%程度まで上昇した局面が、底値形成に近い段階だったと指摘しています。

K33が示したデータ 内容 読み解き方
含み損圏にあるBTC供給量 流通供給量の50%超 市場参加者の損失が広範囲に拡大
含み損となっているBTC 約1,000万BTC 1カ月前の約30%から急増
過去の弱気相場 2011年、2018年、2022年 供給量の50%超が含み損となった後、底値形成に近づいた
最終的な下落余地 過去には50%超到達後に15〜26%程度下落 底打ち前にもう一段の下落が起きる可能性もある
シグナル発生から1年後のリターン 過去3回で+69〜+359% 中長期では反発局面につながった実績がある

K33の調査部門責任者ヴェトル・ルンデ氏は、今回の下落について、過去のサイクルと比べて短く、下落幅も比較的小さいと分析しています。そのうえで、BTCの6万ドル近辺が今回のサイクル安値、またはそれに近い水準となる可能性を示しました。

含み損となっているBTCの比率が50%を超えたことは、BTC市場が底値圏に近づいている可能性を示す重要なシグナルです。

ただし、過去の相場では、同様のシグナルが出た後に15〜26%程度の最終下落局面を挟んでいます。今回も6万ドル近辺で直ちに反転するとは限らず、下値を再び試す可能性には注意が必要です。

出典:K33の分析に関する報道、K33 Research Director Vetle Lunde氏のコメント

現物BTC ETFの資金流出は続く、底打ち確認には需要回復が必要

オンチェーン指標が割安感を示す一方で、機関投資家の需要が明確に回復したとは言い切れません。

Farside Investorsの集計によると、米国の現物BTC ETFでは6月10日に合計2億1,390万ドル、6月11日にも合計2,250万ドルの純流出が記録されました。

日付 米国現物BTC ETFの純流出入 市場への示唆
2026年6月10日 -2億1,390万ドル BTC下落局面で資金流出が継続
2026年6月11日 -2,250万ドル 流出額は縮小したものの、明確な資金回帰には至っていない

ETFからの流出額が縮小したことは一定の改善材料ですが、継続的な純流入に転じたわけではありません。Glassnodeも、米国の機関投資家による押し目買いが弱いことや、企業によるBTC購入ペースが6月以降に鈍化していることを指摘しています。

BTCが底打ちから本格的な上昇トレンドに移行するには、売り圧力の低下だけでなく、ETFや現物市場を通じた新たな買い需要の回復が必要です。

出典:Farside Investors「Bitcoin ETF Flow」、Glassnode「Finding a Floor」

BTC6万ドル台は底値になるか?今後の注目ポイント

BTCを中心とする暗号資産市場では、年初から調整が続いていました。これまで市場では「どこまで下落するのか」「下落はいつ終わるのか」といった問いに対する明確な見方が乏しい状態でした。

しかし、BTCが6万ドル近辺まで下落したことで、GlassnodeやK33などから、底入れの可能性を具体的に検討するレポートが相次いで公表されています。

現在のBTC市場では、底打ちを示唆する材料と、下落継続の可能性を示す材料が併存しています。

底打ちを示唆する材料 下落継続の可能性を示す材料
短期保有者の95%超が含み損 損失確定売りが過去の極端な水準には未到達
流通供給量の50%超が含み損圏 機関投資家による積極的な押し目買いが限定的
レバレッジを伴うロングポジションの清算が進展 現物BTC ETFからの資金流出が継続
中東情勢の緊張緩和期待 米国とイランの正式合意は未確定
原油価格、米国債利回り、ドル指数が低下 ドル指数と米国10年債利回りは、Glassnodeが示した目安を上回る

今年に入って金融市場の混乱を招いた大きな要因のひとつが、中東情勢の緊迫化でした。米国とイランの協議が進展し、ホルムズ海峡をめぐる供給不安が緩和されれば、原油価格の低下を通じてインフレ懸念が後退する可能性があります。

その結果、米国金利とドル指数がさらに低下すれば、暗号資産市場の調整が終了し、新たな上昇トレンドが始まる可能性も見えてきます。

一方で、米国とイランの協議は正式に妥結したわけではありません。地政学リスクが再び高まれば、原油価格の上昇、インフレ懸念の再燃、米国金利の上昇を通じて、BTCが再度下値を試す展開も想定されます。

BTCは底値圏に近づいている可能性がありますが、現時点では「底打ちを確認した」のではなく、「底打ちの条件が整い始めた」段階と考えるのが適切です。

まとめ:BTC反転の鍵はマクロ環境と買い需要の回復

BTCは一時6万ドルを割り込んだ後、6万3,500ドル前後まで反発しました。オンチェーンデータでは、短期保有者の95%超が含み損を抱え、流通供給量の50%超が含み損圏に入ったとされるなど、過去の底値形成局面に近いシグナルが現れています。

ただし、損失確定売りが完全に出尽くしたとは言い切れず、現物BTC ETFからの資金流出も続いています。過去の弱気相場では、底打ちシグナルが出た後にもう一段の下落が起きたケースもありました。

今後は、米国とイランの協議が正式合意に至るか、ホルムズ海峡をめぐる供給不安が後退するか、ドル指数が99を明確に下回るか、米国10年債利回りが4.2%程度まで低下するか、現物BTC ETFへの資金流入が再開するかが重要な注目点となります。

BTC6万ドル台が今回のサイクルにおける底値となるのか。暗号資産市場は、次の方向性を決める重要な局面を迎えています。

※本記事は、公開情報をもとに市場動向を解説するものであり、特定の暗号資産の売買や投資判断を推奨するものではありません。