FOMC 2025年6月会合の要旨:金利据え置きで見えた米経済の「危うい安定」
2025.06.20
FOMCが政策金利を据え置き
6月18日(水)、米国金融当局はFOMC(連邦公開市場委員会)において、4会合連続で政策金利の据え置きを決定しました。今回の政策金利の据え置きは米国金融市場において予測されていたことで、市場は落ち着いた反応を見せています。
会合後の声明要旨
会合後に発表された声明の要旨は以下の通りです。
- 最近の経済指標は純輸出の振れがデータに影響を及ぼしたものの、経済活動が堅調なペースで拡大し続けている。
- 失業率は低水準を維持し、労働市場の状況は堅調。
- インフレ率はいくぶん高止まりしている。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%の達成を目指し、不確実性はやや軽減されたものの、依然として高い水準にあると認識しています。そのため、次のような政策を決定しました。
- FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標レンジを4.25〜4.50%に据え置く。
- FF金利のさらなる調整の程度と時期は、入ってくるデータやリスクのバランスを見て慎重に判断。
- 国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有額を引き続き削減。
- 雇用の最大化とインフレ率2%目標への復帰に強く注力。
また、経済指標の影響やインフレ圧力、国際情勢等を総合的に注視し、必要であれば政策スタンスを調整する用意があると述べています。

経済見通しとパウエルFRB議長の発言
今回の会合では3ヶ月ごとに発表される経済見通しも示されました。前回はトランプ政権による相互関税が公表される前のタイミングで、パウエル議長は「関税の引き上げは、想定を上回るものだった」とコメントしていました。
見通しのポイント
- 2025年10-12月期の実質経済成長率(前年同期比):1.7% → 1.4%(0.3%下方修正)
- 失業率:4.5%(+0.1%上昇)
- 個人消費支出(PCE)価格指数:+2.7% → +3.0%(0.3%引き上げ)
この結果を受けて、パウエル議長は「物価は夏にかけて上昇する見込み」とコメントしました。
年内の利下げ予想と投票結果
金融市場が注目していた年内の利下げ予想に関して、全体としては「年2回」で変更はありませんでしたが、FOMCメンバーの投票内容は以下の通りです。
- ① 3回の利下げ:2名
- ② 2回の利下げ:8名
- ③ 1回の利下げ:2名
- ④ 年内利下げなし:7名
前回(3月)の構成は、①2名、②9名、③4名、④4名でした。比較すると:
- ② 2回の利下げ:1名減
- ③ 1回の利下げ:2名減
- ④ 年内利下げなし:3名増
また、利下げ回数の平均は3月時点の1.47回から今回1.26回へと下方シフトしています。

今後の見通しと注目点
次の経済見通し発表は9月になります。それまでの3ヶ月間でインフレが見通し通りに進まず、不安要素が出てきた場合、FOMCの一部メンバーが利下げ見通しを下方修正する可能性があります。その結果、中央値が「年内利下げなし」となる可能性もあります。
パウエル議長は会合後の記者会見で「不確実性は軽減されたが『異例の高水準にある』」と述べ、足下の経済や物価の状況には自信を示した一方で、先行きへの不透明感を強調しました。
今後も、米金融当局は各経済指標に加え、トランプ大統領による関税政策・減税政策の行方とその影響を注視していく構えです。
市場動向と地政学的リスク
米国金融市場では、株式市場を中心に楽観論が台頭し比較的堅調な地合いが続いています。ただし、緊張が高まる中東情勢や、依然不透明なウクライナ情勢の今後の展開とその影響が、短期的な注目ポイントとなりそうです。