当面の円相場を読み解く|ドル円相場最新動向
2023.10.27
進む円安
ドル円の外国為替相場は10月26日早朝に一時150円32銭まで下落し年初来安値を更新しました。1990年以来の安値である151円95銭を付けた昨年10月21日以来の水準まで円安が進みました。
この円安の大きな要因は、「日米金利差」で特に今週発表された米国の経済指標が景気の強さを示すものとなった事から米国債利回りが上昇した事がポイントとなっています。具体的には、24日にS&Pグローバルによる10月の米国購買担当者景気指数(PMI)で総合が51.0前月比+0.8、製造業が50.0前月比+0.2、サービス業が50.9前月比+0.8と3つの指標がそろって50以上の結果となり、景気の強さを示すものとなりました。市場予想では製造業49.5,サービス業49.8とともに悪化を見込んでいました。このような景況感の強さは新規受注で顕著となり、国内需要が旺盛で直近1年間で最も高い伸びとなっています。
さらに25日には米国新築住宅販売件数10月が発表され、年率換算で75万9,000戸前月比+12.3%と予想の68万戸と大きく上回り大幅に増加しました。これも2022年2月以来の高水準で住宅ローン金利が大きく上昇しているにも拘わらず、住宅購入意欲が根強い事が示されています。中古住宅市場の在庫不足が新築住宅の需要を支えていると考えられます。
こうした経済指標の発表から25日に米国10年債利回りは4.95%、2年債利回りも5.12%と上昇しました。
米国では来週10月31日~11月1日にかけてFOMCが開催されます。現時点では政策金利の据え置きが見込まれていますが、パウエルFRB議長は今後の金融政策運営について19日の講演で「不確実性とリスク、これまでの道のりを考えて注意深く進めている」と発言し、さらに経済の高成長や雇用の逼迫が続けば「さらなる金融引き締めが正当化される」と述べ、今後に利上げする選択肢を残す発言をしました。
政策金利について今回据え置きとなっても、景況感の堅調さから次回で利上げをする事は十分に考えられます。また米国債の需給を考えるとかつてQEで大きな買い手となっていたFRBは、現在QT政策をとっており、年間7,200億ドル(約108兆円)のペースで国債のポートフォリオを縮小しています。こうした面からも米国長期金利の高止まりは続くと考えられます。
日銀の動向 為替介入も?
一方、日本銀行は今月30日~31日に金融政策決定会合を開催します。日銀は7月の決定会合で長短金利操作の運用を柔軟化し、金利の事実上の上限を1%に引き上げましたが、米%国長期金利の上昇を受け今回の会合で「長短金利操作の再修正論」が浮上しています。
現在上限である1%の水準をさらに引き上げる案や「メド」としている0.5%水準を撤廃する案などが出ているようです。
日銀は今回の決定会合で消費者物価指数の前年度比上昇率の見通しを上方修正するか検討します。現在23年度2.5%、24年度1.9%としている24年度を2%台とするならば、「持続的・安定的」に2%を上回る目標に近づくことになります。
ただ当然日銀内では慎重論も根強いと考えられ、米国長期金利の高止まりが続き、円安が一段と進む中で今回の会合においてどのような判断となるか注目されます。
今朝の円安の動きから鈴木財務相は「今まで通りに為替動向をしっかり緊張感と持って動きを見ていく」と述べています。
ドル円相場については、当面は市場介入をうかがう神経質な展開が続くと思われます。