先週このコラムで貿易収支を取り上げた際に1ドル=150円目前の状況でドル円相場について「150円前半での展開が目先想定されるものの、年末もしくは年初あたりからの反発が見られるのではないでしょうか。」とコメントしています。

 その後、150円台へと進みましたが、為替介入を受けて140円台後半の展開となっています。日銀黒田総裁は「円安はメリットがある」としていますが、政府としては経済界を中心として上がる過度の円安に対する警戒と不満の声から150円というひとつの節目を意識した介入を行ったと思われます。

一方、米国では11月の開催されるFOMCでは0.75%の利上げが想定されているものの、12月の利上げについて「0.75%ではなく0.5%になるのではないか」との利上げのペースダウン観測が出始めました。その観測を受けて米国株式市場は3日連騰を続け、米国債券市場では一時4.2%台まで進んだ10年国債利回りが4.0%まで低下しています。ドル円相場も現在145円周辺の動きとなっています。

 米国でのインフレが沈静化したわけではなく、米国の利上げも終了したわけではありませんが、米国内の物価の落ち着きや今後の景気減速を意識した考えが台頭し始めたと思われます。

 まずは11月のFOMCの利上げと会合後のFRBパウエル議長のコメントが注目されるところになります。12月に向けて利上げのペースダウン観測が強まるようであれば、米国の金利上昇はしばらく落ち着くと考えられ、日米金利差の拡大も停滞することになります。

 今後の米国物価動向や景気減速の状況によりますが、徐々に米国の利上げ停止に向けた観測が高まる可能性もあり、円安も先日の150円台がピークになる可能性が出てきました。

しかし、日本の経済構造や財政状態が変わったわけではありませんので、今後岸田政権による効果ある政策が必要です。