米国半導体規制

7月17日に米国政府は同盟国に対して、先端半導体技術へのアクセスを中国に提供し続ける場合、利用可能な最も厳しい貿易制限措置の利用を検討していると伝えました。

このニュースにより米国のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は6.81%下落しました。この下げ幅はコロナショック以来の下げで4年4ヶ月ぶりの大きなものです。米国の株式市場の上昇をリードしてきた半導体株の悪材料として市場は敏感に反応しており、特にトップ銘柄として囃されてきたエヌビディア株は8.37%の下落となり、合わせてマグニフィセントセブンとして上昇したハイテク株グループもマイクロソフト株が6%、メタ株が27.8%、アマゾンが5.09%の大幅な下落となりました。こうしたハイテク株に支えられてきたS&P500は78ポイント安、NASDAQは512ポイント安となっています。

日本半導体株への影響

 

 また今回のニュースで直接的な影響のあると考えられる日本の東京エレクトロンやオランダのAMSLホールディングスの株価も急落しました。17日の終値は東京エレクトロンが2,690円安の33,390円で7.5%下落し、AMSLホールディングスは136.14ドル安の932.05ドルで12.7%の下落となりました。

東京エレクトロンにおける中国事業の比率は44%で国内の10%、北米の9%を大きく上回っています。近年、中国事業は好調で売上高は前年比+64%と飛躍的に伸びており同社成長の中核事業となっています。国内での制限措置の影響は半導体関連全般に広がると見られており、東京精密、スクリーン、ローツェ、レーザーテックなども株価が下落しています。

米国半導体規制

米国政府は中国の軍事力強化につながり得る最先端技術の獲得を阻止する取り組みの一環として、2022年10月、中国への先端半導体と製造装置の販売に広範な制限を実施しました。この規制により、華為技術(ファーウェイ)や中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国企業は、重要な供給品や装置の入手が難しくなり影響を大きく受けています。

今回、米国政府は外国直接産品ルール(FDPR)という措置を検討しており、このルールは米国製技術を少しでも使用した外国製品に制限措置を導入することを可能とします。

その目的は、すでに主要装置の一部出荷を制限している同盟国をさらに説得し、中国にある対象装置の点検や修理を行う企業の能力を限定することです。

 米国半導体業界は半導体規制により大きな売上を失い、多くの負担を強いられていることから、この政策に対して異を唱えているものの、米国政府による中国に対する警戒感は一段と強まっています。

 米国の株式市場、そして国内の株式市場をもリードしてきた半導体業界の逆風は日米株式市場へ大きな調整を促す可能性もあり、今後十分に注意が必要と考えています。