米CPI鈍化も関税影響じわり―FOMC直前の注目ポイントとは
2025.06.13
2025年5月の米国CPI発表:前年比+2.4%で市場予想を下回る
2025年6月11日、米国労働省が5月の消費者物価指数(CPI)を発表しました。結果は前年同月比+2.4%と、前月(4月)の+2.3%からやや加速したものの、市場予想の+2.5%を下回りました。
このCPIは、エネルギーや食品など価格変動が大きい項目も含めた、一般消費者が実際に感じるインフレ率を示す重要指標です。特に金融市場では、今後の利上げ・利下げ判断を見極める上で、CPIの動向が注目されます。

コアCPIは鈍化傾向、長期金利にも影響
食品とエネルギーを除くコアCPIは、前年比+2.8%、前月比+0.1%でした。これは市場予想の+2.9%および+0.3%を下回る結果であり、前月の+2.8%(前月比+0.2%)からも伸びが抑えられています。
この結果を受け、インフレ圧力の鈍化として金融市場ではポジティブに受け止められ、長期国債の利回りは低下しました。特に10年物米国債は、インフレ見通しの変化を敏感に反映します。
一部品目で関税の影響が顕在化
一方で、すでに実施されている関税の影響が明確に現れている品目も存在します。大型家電は前年比+4.3%と、2020年8月以来の大幅な上昇を記録。鉄鋼やアルミニウムなどの素材に課せられた関税が、製品価格に波及したとみられます。
また、玩具も前年比+1.3%と、2023年2月以来の上昇幅を示しました。これも一部輸入品への追加関税が影響していると考えられています。

企業の対応と今後の価格転嫁の見通し
これまでの価格上昇が抑制されていた背景には、小売業者が関税実施前に在庫を積み増していたことや、企業側がコスト上昇分を内部吸収していたことが挙げられます。また、価格転嫁が一部遅れて進行している点も注目すべきです。
しかし、エコノミストの多くは「6月以降は関税分がより明確に価格へ転嫁され、CPIにも反映されてくる」と予測しています。特に耐久財や輸入依存度の高い品目では、価格上昇が継続する可能性があります。
FOMC直前、政策金利とパウエル議長の発言に注目
2025年6月17日〜18日にかけて予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利の据え置きが見込まれています。ただし、CPIの結果やトランプ大統領による利下げ圧力の発言などを受け、会議内では「今後の利下げ」の議論が活発になると予想されています。
FOMC後に行われるパウエルFRB議長の記者会見では、インフレ見通しや政策スタンスについての発言内容が注目されるでしょう。FRBが引き続き「データ次第」のスタンスを維持するのか、あるいは年内の利下げに言及するのか、マーケットは敏感に反応する構えです。
今後の米国経済とインフレ動向をどう見るか
今回のCPIの結果を受け、表面的には物価上昇が落ち着いたように見えますが、実際には一部品目への関税影響が忍び寄っており、今後の広がりが警戒されています。企業側の価格転嫁が進むことで、遅れて全体CPIに波及するリスクも想定されます。
インフレ抑制と景気維持というバランスが引き続き課題となる中、FRBの政策判断、さらには政権による貿易政策の動向が今後の鍵を握ることになりそうです。米国の経済指標は、引き続き注視すべき状況が続きます。