市場のニュース:グリーンランド発言と「関税見送り」

トランプ米大統領は 1 月 21 日、グリーンランドを巡り「将来の合意の枠組み」に達したと主張し、米国による取得の取り組みに反対する欧州諸国に対して 2 月 1 日から予定していた関税の発動を見送る考えを示しました。トランプ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、「グリーンランド、そして実際には北極圏全体に関して、将来の合意の枠組みを形成した」と述べ、さらに、「この解決策が成立すれば、米国と NATO 加盟国すべてにとって素晴らしいものになる」としています。

補足(背景の解像度を上げる):報道では、2月1日発動予定とされた関税は、NATOの議論(北極圏の安全保障、既存の米・デンマーク防衛協定の扱い、米軍のアクセス拡大など)を「落としどころ」にする形で、いったんトーンダウンしたと伝えられています。一方で、デンマーク側・グリーンランド側が「主権」を明確に強調している点は、今後も不確実性の火種になりやすいところです。

市場の反応:米国債・株・金・BTCが同時に動いた

トランプ大統領のコメントを受けて金融市場は落ち着きを取り戻し、米国株式市場は大きく反発し、米国 10 年国債利回りは 4.24%へ低下しました。また急落した暗号資産も最悪場面を脱したように BTC は 87,000 ドル台から 89,000 ドル台へ上昇しています。そうした中で地政学リスクの高まりを受けて、今週急騰している金価格ももみ合いに転じましたが 4,800 ドル前後を維持しています。

主要市場の動き(本文の流れを補助する“目安”)
資産 水準(目安) 読み取りポイント
米10年国債利回り 4.24% リスク緩和・金利低下は、金(無利子資産)に追い風になりやすい
金(スポット/1oz) 4,800ドル前後 地政学×通貨価値への不安=逃避先需要が積み上がりやすい
ビットコイン(BTC) 87,000→89,000ドル台 “リスク資産としての反発”と“準・逃避先”の両面が同居しやすい局面

:暗号資産は株式以上にレバレッジ(先物・オプション)や流動性の影響が大きく、同じ「安心材料」でも上にも下にも振れやすい点に注意が必要です。

2026年、想定外の不確実性へ:金・BTC・米国債を同時に点検する

しかし、2026 年に入ってからのトランプ大統領によるコメントおよび米国の行動は、新たな地政学リスクを意識させるものとなっています。この新たなリスクの高まりにより、リスク資産からの逃避先として金が選択され、金価格が一段と上昇する動きとなっています。

なぜ「同時点検」が効くのか(3資産は“同じ原因”で違う反応をする)

2026年の相場を読むうえで厄介なのは、同じニュース(地政学・政策・財政)が、金・BTC・米国債に別々の経路で効くことです。だからこそ、どれか一つだけを見ると“誤読”が起きやすくなります。

  • 米国債(特に10年):最初に動きやすいのは「期待インフレ」と「実質金利(名目金利−期待インフレ)」、そして“安全資産としての信認”。信認が揺れると、金利低下ではなく金利上昇(売られる)が起きることもあります。
  • :主に「実質金利低下」「通貨価値(ドル)への不安」「中央銀行・ETFなど構造的需要」「地政学リスク」で買われやすい。政治から距離がある“無国籍の価値保存”として選ばれやすい反面、短期では急騰後の利確で振れます。
  • BTC:近年は「流動性(ドル供給・金利観)」「株式(特にハイテク)とのリスクオン/オフ」「ETFフロー」「デリバティブ清算」が効きやすい一方、ストーリーとしては“デジタル・ゴールド”も併存します。つまり、同じ局面で“逃避先”にも“リスク資産”にも見えるのがBTCの難しさです。

チェックリスト:3つを同じ画面で見ると何がわかる?

  • 金↑・米10年金利↓・BTC↑:緩和期待(実質金利低下)+リスク許容度回復。いわゆる“流動性相場”の匂い。
  • 金↑・米10年金利↑・BTC↓:信認・政治リスクで「金だけ買われる」パターン。ドルや国債への不安が強いと起きやすい。
  • 金↓・米10年金利↑・BTC↓:引き締め/金利再上昇ショック。レバレッジの巻き戻し(清算)が起きると暗号資産は下げが深くなりがち。
  • 金→・米10年金利→・BTC↑/↓(振れ大):材料難+需給(ETFフロー、先物建玉、清算)主導。ニュースよりもポジションで動く局面。
2026年の“想定外”に備えるシナリオ整理(簡易)
シナリオ 米国債(10年) BTC/暗号資産
(A)利下げ期待が優勢(実質金利↓) 利回り低下しやすい 上がりやすい 上がりやすい(ただしレバ清算に注意)
(B)地政学×関税で景気不安(リスクオフ) 通常は買われるが、信認不安があると売られることも 買われやすい 短期は売られやすい/逃避先化は“後から”来ることが多い
(C)「Fedの独立性」懸念が強まる 長期金利が不安定化(上にも下にも) “政治から離れた価値保存”として強含みやすい 規制・政策不確実性と需給で乱高下しやすい

厚めの補足(ここが2026年の核心):2026年は「地政学(北極圏・同盟・関税)」「財政(利払い・赤字)」「中央銀行(独立性・利下げ圧力)」が同時に揺れやすく、“安全資産の定義そのもの”が揺れる可能性があります。通常の教科書では、リスクオフなら国債が買われ金利は下がりやすい。しかし、政治が金融政策に影響を与える懸念が強まると、国債は“安全資産”である前提が傷つき、金や一部コモディティに資金が逃げることがあります。さらに暗号資産は、短期はレバレッジ解消で売られても、時間差で「通貨価値・資本規制・検閲耐性」といった文脈で再評価される局面があり、順序が前後しやすい点が重要です。


金が選ばれる背景:インフレ、米国債、金融緩和の圧力

金価格は近年じり高となっていましたが、昨年特に注目を集める動きとなりました。その背景としては、コロナ後のインフレと金利上昇で、米国債の利払いが米国の財政赤字の半分ほどにも達しており、米国の債務問題が紙幣印刷で解決されると投資家が予想しているからです。具体的に言えば、インフレが来て、政府が利払いの支払いに困り始めてから財政問題は表面化することになりますが、トランプ大統領は金融緩和によって債務問題を解決しようとしています。トランプ大統領が Fed に金融緩和を迫っているのは、発行過多により買い手不足に陥りつつある米国債を支えさせるためです。政府債務は、国民の貯金の価値をゼロにすることによって解決されることになります。

そして、それに気づいた人から自分の貯金をゴールドやシルバーなどの貴金属に移しているのです。

補足(客観情報で補強):米国の利払い(net interest)は、債務残高と金利の掛け算で増えやすく、議会予算局(CBO)は中長期で利払いが政府支出の中でも大きな比率を占める見通しを示しています。こうした「財政の重さ」は、金の“通貨価値ヘッジ”としてのストーリーを強化しがちです。また、中央銀行の独立性を巡る政治的な綱引きが意識されるほど、金の“政治から距離がある資産”としての需要が増えやすい点も見逃せません。

エゴン・フォン・グライアーツ氏の見立て(引用)

スイスの資産管理会社 Matterhorn Asset Management の創業者で金や貴金属専門家のエゴン・フォン・グライアーツ氏は次のように述べています。

「25 倍: 1971 年から 1980 年の金価格上昇が帰ってくる」

1970 年代はインフレ率が 15%近くまで上がる物価高騰の時代となり、金融市場はインフレ相場となりました。

「結果として、金価格は 35 ドルから 1980 年 1 月の 850 ドルまで 25 倍に上がった。」

つまり、当時と同じようなゴールドの上昇相場になることをフォン・グライアーツ氏は予想しています。

何故そうなるのか。フォン・グライアーツ氏は次のように説明しています。

「紙幣を基準に計れば、ゴールドは時間経過で常に上昇する。政府と中央銀行が紙幣の価値の破壊を続けるからだ。有権者の票を買って権力を維持するために彼らはそうせざるを得ない。だからゴールドの上昇相場は中央銀行と政府によって保証されている。彼らが紙幣の価値を破壊することによってゴールドを常に支えてくれるからだ。

ゴールドの価値が上がるわけではない。紙幣の価値が下がるだけだ。金価格は今世紀に入ってから 300 ドルから 4,000 ドルまで上がったが、わたしの見解では金価格はここから何倍にもなる。今でさえ、ゴールドとシルバーを買うのは手遅れではない。」

フォン・グライアーツ氏は「中央銀行、政府系ファンド、投資家は不安定なシステムの最も安定した構成要素として金に注目する。それは金の根本的な再評価に繋がり、金は生産が出来ないため価格上昇で対応され、金価格が指数関数的に上昇することになる。」と以前から述べています。

ビットコインと暗号資産:金高とどう付き合うか

2026 年は今まで全く想定していなかった不確実な情勢となり、フォン・グライアーツ氏の言うシステムの不安定な状況になりつつあります。彼の予想する金価格の動向には十分に注視していく事が肝要と思われます。また直近はリスク資産として下落している暗号資産についても、金に続く安定資産の候補として注目することを忘れてはいけないと考えています。

ここから深掘り(暗号資産の“現実的な見方”):暗号資産は、物語として「デジタル・ゴールド」と語られやすい一方、実務的には (1)需給(ETFフロー)(2)デリバティブ(清算)(3)流動性(ドル金利・ドル供給)の影響を強く受けます。つまり、短期では金と同じ動きをしないことが珍しくありません。

  • ETFフローの影響:スポットBTC ETFは“機関投資家の蛇口”になり得ます。流入が続けば下支えになりますが、逆回転すると下げを増幅します(売りが現物市場に波及しやすいため)。
  • 清算(レバレッジの巻き戻し):BTCが節目(例:9万ドル)を割ると、先物のロング清算が連鎖し、現物のニュース以上に急落・急騰しやすい構造があります。
  • 「規制の不確実性」:米国の制度整備(法案の停滞・先送り)が意識されると、機関投資家は慎重になりやすく、短期の上値を抑える要因になります。
  • 中長期の論点:一方で、金が「国家・中央銀行リスクから距離を置く資産」として選ばれるほど、BTCも「発行上限・検閲耐性・国境をまたぐ決済/保管」という観点で再評価される余地があります。ただし、この再評価は多くの場合、“ボラティリティを経由してから”起きます。

読み手が使える実務TIP:金とBTCを同列に扱うより、金=不確実性の“保険”BTC=不確実性の“オプション(上も下も大きい)”として扱うほうが、現実の値動きと整合しやすいです。2026年は、まさにこの違いが強く出やすい年になります。

免責:本記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。価格・制度・地政学状況は急変する可能性があります。