需給がタイト化する原油事情
2023.08.03
米国政府は3月31日に向こう半年間に米石油戦略備蓄(SPR)から日量100万バレルを放出すると発表しました。(合計1億8,000万バレル)その後、着々と放出を行っており、この10月には予定した放出を終了する予定です。終了後の備蓄量はRBCの試算によると3億バレル程度と見られています。
石油戦略備蓄は、本来緊急時に対応する備蓄としてIEA(International Energy Agency)では純輸入量の90日相当分の備蓄を義務づけています。その量は米国で3億1,500万バレルになります。
バイデン政権は2023年以降にSPR積み増しのために原油を買い戻す措置をすでに発表しており、今後も引き続きガソリン価格を引き下げるための追加売却などの対応を継続することができるとしています。
しかし、SPRは今回のように市場価格安定のための市場放出用に備蓄されるものではなく、前述のように有事など緊急対応用に備蓄されるものですので、長期にわたる石油戦略備蓄量の水準低下は緊急時への対応を不安定化させることとなります。
ウクライナ情勢が長期化し、原油需給も不安定な中で、今後、SPR在庫量積み増しの原油買い戻しが円滑にできるかという懸念もあり、エネルギー需要が高まる冬季を控え、今後、原油供給を圧迫する可能性が高まっています。