ドル円最新動向
2023.08.03
米国のパウエルFRB議長が3月7日-8日に上下院での議会証言を行い、「1ヶ月前に見られていたインフレの軟化傾向が一部逆転した。」とし、さらに「最新の経済データは予想を上回る強さとなっており、最終的な政策金利の水準が従来の想定よりも高くなる可能性のあることを示唆している。」と述べ、また「今後の経済データの結果次第では、利上げのペースを加速する用意がある。」と証言しました。
この発言を受けて米国債券市場では、米国国債2年債利回りが5%台に、同10年債利回りも一時4%を付けるなど上昇しました。米国株式市場も今までの楽観論を否定するコメントに反応しNYダウ平均で大きく下落する動きとなり、また外国為替市場ではドル円で138円台を覗くなど円安にトライする動きも見られていました。
しかし、先週後半から米国内での銀行破綻が続いて発生したことを受けて、マーケットでは今月開催されるFOMCでの利上げ幅について「0.5%ではなく0.25%」あるいは「今回の利上げは見送る」などの観測が台頭し、3月15日の米国10年債利回りは3.43%まで低下しました。この利回り低下によりドル円相場は133円台へと円高が進んでいます。
ドル円相場は、昨年10月21日に151.94円を付けてから円高基調となり、年初1月16日に127.23円まで進みましたが、米国金利の高止まりと国内金利の落ち着きから円安気味の展開となっていました。
最近、マーケット関係者からはドル円相場が200日移動平均線の水準に近づき、今後のトレンドの方向性について議論が高まっていましたが、先日発表された米国のCPIでは、まだインフレの動きは根強く、インフレを抑制するための引き締めは必要であると認識される一方、シリコンバレーバンクの破綻など、国内経済の混乱が見え始めた中で引き締めを継続するべきかいなか、FRBは頭を抱えることになっています。こうした中で開催されるFOMCの結果は大変注目される事になります。
一方、植田新総裁による日本銀行の動きが就任後にどのように変化していくのかもドル円相場を左右するポイントです。新総裁は従来的な金融緩和については肯定的でしたが、量的緩和政策については問題点を指摘し批判的に思われます。また海外からの訪日客も順調に増加しそうであり、この点での円需要の高まりも想定されます。
これらを踏まえ、今後のドル円相場は緩やかに円高へ振れると考えています。