高騰する金価格

昨日4月3日NY金先物の終値は2,320ドル/1トロイオンスでした。

 この日の上昇は、今月1日にイスラエルがシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺を空爆したと伝えられ、中東情勢を巡る地政学リスクの緊張が高まり、「安全資産」と考えられる「金」へ資金が逃避し流入したと見られています。

金相場の流れをつかむ

 金価格の上昇はこの日だけではなく、今年に入ってから始まっています。

金価格は2020年8月に2,040ドルほどで高値を形成した後、今年の年初まで1,600ドル~2,000ドルのレンジ相場を展開していました。今年の2月に入ってから2,000ドル超えとなり、新たな上昇相場の展開を見せ始めています。

金相場のイメージ

金価格上昇の2つの要因

最近の金価格の上昇には大きく2つの要因が考えられます。ひとつ目は、ドルの保有やドル決済を避けたい国々の政府・中央銀行による買い入れです。ロシアがウクライナへの侵攻を行った後、米国はロシアのドル資産の凍結やドル決済網からのロシアの除外を行いました。こうした措置から今後の米国政府からのリスクを抑える為にBRICS諸国や中東諸国がドル保有やドル決済を避ける動きを見せ、金の買い入れを進めています。

金買入額上位国

(2024年1月末)

前年比(トン)外貨準備占有(%)金保有量(トン)
中国+219.904.32245.34
ポーランド+130.0312.5358.69
シンガポール+76.284.1230.02
ヨルダン+30.7925.774.29
ロシア+31.1026.22329.63
インド+24.968.5812.32
チェコ+20.391.532.35
イラク+12.258.4142.58
カタール+9.1912.9100.97

こうした買入上位国の中で買入が堅調なのが中国です。中国は米国との貿易摩擦問題もあり、人民元決済網の拡充や中東への関与を強めている事から金の保有を増やしていると思われます。

 

中国金保有量の推移

(直近3年)

金保有量(トン)外貨準備占有率(%)
2022年1月1948.313.3
2023年1月2025.443.7
2024年1月2245.344.3

中国の金買入は2022年11月から始まっています。これまでの増加量は297.03トンになっています。

終わらないインフレ

要因のふたつめは、インフレの継続です。過去のインフレ時期において、金価格は理屈を外れて大きな上昇を見せてきました。

過去のインフレ時期は1970年代でインフレは3度の波となって襲ってきています。中央銀行が政策金利を引き上げて金融引締めに動けば、景気は減速し経済は停滞します。一方、政策金利を引き下げて金融を緩和すればインフレとなる事を繰り返して、インフレは長期に続き高騰しました。

インフレ発生前の金価格は「35ドル程度」でしたが1980年の高値は「875ドル」で 『25倍』まで上昇しています。

現在のコモディティ相場では、原油(WTI)は昨年70ドル割れの安値を形成した後、地政学リスクの高まりを受けて上昇し、4月3日は875ドル台に乗せており、こちらも新たな相場展開が始まったような動きとなっています。

最近、米国内で発表されているインフレに関連した経済指標は、インフレの根強さを物語っており、インフレは長期化する可能性があります。1970年代のインフレ時期では、インフレが完全に沈静化するまで金価格の上昇は続きました。今回もインフレが落ち着くまで金価格の上昇は続くと思われます。