金価格、史上最高値へ!中央銀行の金購入が止まらない理由とは?
2025.02.10
堅調な展開続く金価格
2月5日に金の国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が2024年の世界需給統計を発表しました。それによると世界各国中央銀行や国際通貨基金(IMF)などの純購入量(純増)が約1,045トンと1,000トンを3年連続で超えたと発表されています。
その結果を受けて、昨日のNY金先物価格は一時1オンス=2,906ドルの高値を付け、終値で2,893ドルの史上最高値になりました。
昨年12月にも掲載した金価格での記事中で「金価格は政局と財政の先行き見通しに不透明感があるときに比較的安全資産として保有される場合が多く、金利が低下するとの見方も金価格を押し上げる傾向がある」とヘレウスプレシャスメタルズの報告書のコメントを紹介しました。
ECBが金融緩和を継続し、昨年9月からFRBも政策金利の引き下げを始める中、トランプ大統領による新たな政策により世界的な政治の混迷が始まった感があり、さらに米国政府の財政についての懸念も台頭しつつあります。正に先ほどのコメントの環境が起こっているといっても良いのではないでしょうか。

レイ・ダリオ氏が指摘する米国財政赤字の危機
こうした状況の中でヘッジファンドBridgeWater創業者のレイ・ダリオ氏がコメントしています。
「今年の相場のテーマは『米国の財政赤字』で、米国政府の財政赤字は現在GDPの6%程度になっており、米国債の利払い費用がその中で約4%に達しようとしている。 インフレ政策はゼロ金利を保てる間は機能したが、本当にインフレが発生した時に大きな政府債務に利払いが生じ、借金を借金で返す負のスパイラルが始まる」
さらに、「最大の危機は発行している国債に加えて、既存の国債保有者が国債を売却し、金融市場で短期金利が上がっていないか下がっているのに、長期金利が上がる時だ」と述べています。
米国では、昨年9月から利下げをしているにも拘わらず、長期金利が上昇しています。 ダリオ氏はさらに「長期金利の上昇は、長期国債からつまり通貨から資金が逃げ出す事を意味しており、通貨は金などの現物資産に対して下がり始め、資金はそうした金などの現物資産へ逃げ出す」と述べています。
米国によるロシアへの経済制裁を受けて、世界の中央銀行、特に新興国の中央銀行による金需要が高まり、そうした金購入の動きが昨年秋以降にさらに強まっていると思われます。

中央銀行の金購入理由と今後の見通し
WGCが実施した世界の中央銀行への調査では、金購入の理由について 「①長期的な価値の保存 ②政治的リスクのなさ ③地政学的な多様化」 を挙げており、「今後5年で世界の中央銀行の金購入量が増加する」と69%が答えています。
こうした世界中央銀行による金需要の高まりは、金価格の推移を底堅くし、個人や機関投資家の資金を引きつけることになるかもしれません。
ゴールドマン・サックスとJPモルガンの金価格予測
昨年、米国の大手金融機関であるゴールドマン・サックスとJPモルガンの本年末の予想金価格は、ゴールドマン・サックスが3,000ドル、JPモルガンが2,950ドルでした。両社の掲げた価格は目前に迫っています。
暗号資産のビットコインなどとともに、現物資産の代表である金の価格はどこへ向かうことになるのでしょうか。
大きな期待を持って見て行きたいと思います。