WSJ報道が暗号資産業界に波紋

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた暗号資産取引所バイナンスの前CEO、チャンポン・ジャオ(通称CZ)氏と、トランプ家が関係するとされるプロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」のつながりに関する報道が波紋を呼んでいる。

5月初旬、米国のいくつかの州でビットコイン準備金の創設が可決されたことを背景に、ドル建てでビットコインは最高値を更新した。再度注目度があがっている暗号資産業界にとっては見過ごせない事案である。

八木編集長FOCUS

CZ氏の反論と報道の真偽

一方CZ氏は、今回の報道に対して即座に反論。自身がWLFIの外交活動に関与したとされる報道内容について、「完全な誤解である」と強調し、実際にはそのような関係性は存在しないと主張した。加えて、報道で取り上げられた人物や出来事の多くが、事実に即していない、あるいは文脈が捻じ曲げられていると主張している。

WLFIとUSD1に対する疑惑

WLFIもまた不気味な存在だ。同団体は米国上院議員のリチャード・ブルーメンタール氏から、同社が発行するステーブルコイン「USD1」とトランプ家との関係について調査を受けている。背景には、20億ドル規模のアブダビ政府系企業MGXとの投資契約が存在し、国家安全保障上の懸念も持ち上がっているという。

WLFI側は、こうした動きに対し「政治的動機による魔女狩りである」と真っ向から反論している。USD1は米国債などで完全に裏付けられており、違法性はないと主張。また、トランプ氏やその家族との関係も否定し、報道や調査の方向性自体に根本的な欠陥があるとしている。

報道の役割と情報リテラシー

このような一連の流れをみると、「情報」と「報道」のあり方の難しさを感じる。信頼性の高いメディアの報道であっても、その裏には複雑な政治的意図、あるいは経済的利害が潜んでいる可能性がある。特に、暗号資産やブロックチェーンという新興分野においては、国家の枠を超えた動きが働く。従来の常識や法制度が追いついていない現状では、報道の一断面だけをもって真実とみなすことの危うさが際立つ。

さらに、暗号資産等の情報鮮度が投資のパフォーマンスに直結するような業界では、即時性を究極的に追い求めた結果、旧来のマスメディアとSNSの力学が逆転する場面も散見される。今回の件もそれを象徴する出来事のようにみえる。

情報時代の「受け手」の責任

AIの発展が目覚ましい現代では、複数の視点やファクトチェックを意識するリテラシーが問われる時代だ。報道が「権力を監視する」存在である以上に、「真実を照らす」機能をはたすためには、受け手側の成熟も必要になるのかもしれない。

CZ、トランプ一族のWLFIとの関係に関するWSJ報道に反論

[Iolite記事]
CZ、トランプ一族のWLFIとの関係に関するWSJ報道に反論