監修:株式会社J-CAM 金融アドバイザー AFP認定者 倉本 佳光 Yoshimitsu Kuramoto

慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。その後、メリルリンチ日本証券株式会社マネージメント・コミッティーメンバー、岡三アセットマネジメント株式会社理事などを歴任。
執筆:BitLending編集部 更新日:2026年8月12日

倉本 佳光

ステーブルコインをめぐる動きは、暗号資産市場の中だけにとどまらなくなっています。日本では2025年10月に日本円建てステーブルコイン「JPYC」の発行が始まり、金融庁の決済高度化プロジェクト(PIP)では、メガバンクによる共同発行、クロスボーダー送金、証券とステーブルコインを組み合わせた同時決済などの実証が進んでいます。国際的にも、銀行預金や中央銀行マネーをトークン化する取り組みが進み、ステーブルコインと伝統金融が競合しながら接続点を探る局面に入っています。

ただし、利用範囲が広がることと、保有者が値上がり益を得られることは別です。ステーブルコインは参照する法定通貨などとの価格連動を目指すため、保有するだけで大きな値上がりを期待する商品ではありません。

利益を得る方法には、レンディングによる貸借料、DeFiでの流動性提供、裁定取引、米ドル連動型を円換算した場合の為替差益などがあります。本記事では、それぞれの利益の原資とリスクを分け、ステーブルコインが「儲かる」のはどのような場合かを解説します。

《出典》
日本円ステーブルコイン「JPYC」およびJPYC EXを正式リリース|JPYC株式会社
決済高度化プロジェクト(PIP)の設置について|金融庁

免責事項(投資助言ではありません)

本記事は、暗号資産に関する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買・投資行動を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が非常に大きく、短期間で大きな損失が発生する可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。

利益相反に関する開示:本記事を掲載するBitLendingは、暗号資産レンディングサービスを提供しています。記事内には当社サービスへの導線が含まれる場合がありますが、特定の投資行動や暗号資産の貸出を推奨するものではありません。

ステーブルコインは儲かる?先に結論

結論からいうと、ステーブルコイン自体は大きな値上がり益を狙うための資産ではありません。たとえば米ドル連動型は1コイン=1米ドル前後を保つことを目指すため、ビットコインのような価格上昇を期待する考え方とは性質が異なります。

一方、ステーブルコインを貸し出して貸借料を受け取る、DeFiへ流動性を提供する、複数市場の価格差を利用するといった方法では収益を得られる場合があります。米ドル連動型を日本円で評価する場合は、円安になれば円換算額が増え、円高になれば減ることもあります。

つまり「儲かるか」はコインの値上がりだけでは判断できません。何から利益が生まれ、代わりにどのリスクを負うのかを確認する必要があります。

ステーブルコインとは?ビットコインとの違い

ステーブルコインは、米ドルや日本円などの法定通貨、暗号資産などの参照資産と価格を連動させることを目指したデジタル資産です。ビットコインが市場の需給によって大きく値動きするのに対し、ステーブルコインは決済・送金・待機資金などに使いやすい価格安定性を重視します。

ただし、ステーブルコインは法定通貨そのものでも、銀行預金でもありません。安定性は、発行体が保有する準備資産、発行・償還の条件、市場の流動性、スマートコントラクトなどによって左右されます。

価格連動を支える発行・償還とアービトラージ

法定通貨担保型ステーブルコインでは、発行・償還の仕組みと市場参加者によるアービトラージ(裁定取引)が、参照する法定通貨との価格差を縮める方向に働きます。市場価格が基準を上回れば売り、下回れば買いや償還を行う取引によって、価格を基準へ戻そうとする力が生まれます。

ただし、これは価格の安定を保証する仕組みではありません。償還への不安や流動性の低下が起きると、裁定取引が十分に機能せず、ペッグが外れることがあります。

伝統金融との融合が進むステーブルコイン

ステーブルコインへの注目が高まっている背景には、暗号資産取引だけでなく、銀行・証券・企業間決済への応用が具体化していることがあります。金融庁は2025年11月、ブロックチェーンを活用した決済実証を支援するPIPを設置し、第1号案件としてメガバンク3行などによるステーブルコイン共同発行の実証を支援しました。

2026年2月には、国債・社債・投資信託・株式などの権利移転と、ステーブルコインによる代金決済を結びつける実証が支援対象となりました。同年4月には、異なる銀行の顧客間でトークン化預金を移転する際の銀行間決済について、ステーブルコインを使う方法を含む検証が第3号案件に選ばれています。

ステーブルコインは銀行と競合するだけでなく、既存の銀行・証券インフラと接続する決済手段としても検討される段階に入っています。ただし、これらは実証段階の取り組みを含み、一般利用が確定したサービスと混同しないことが重要です。

《出典》
Press Conference by the Minister of State for Financial Services, February 13, 2026|金融庁
片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(令和8年4月3日)|金融庁

ステーブルコインの主な儲け方

ステーブルコインによる利益には複数の経路があります。それぞれ収益の原資とリスクが異なるため、表示利回りだけで比較しないことが大切です。

方法利益の原資主なリスク
レンディング貸出契約に基づく貸借料事業者の信用、返還・解約条件
DeFi貸付金利、取引手数料、報酬スマートコントラクト、流動性、操作ミス
アービトラージ市場間・現物先物間の価格差価格差の消失、執行、取引所、担保管理
為替差益円に対する米ドルの上昇円高による為替差損

レンディングの契約形態や確認事項は、暗号資産レンディングの仕組みと比較ポイントで詳しく解説しています。

DeFiで流動性を提供する

分散型取引所などへステーブルコインを預け、取引手数料やインセンティブを受け取る方法です。高い利回りが表示される場合もありますが、報酬トークンの値下がり、スマートコントラクトの不具合、ハッキング、ペアとなる資産の価格変動などを伴います。

仕組みを理解せずに利用せず、まずDeFiと流動性提供の基本を確認しましょう。

レンディングの利回りはどこから生まれる?

ステーブルコインをレンディングサービスへ貸し出した場合、利用者が受け取るのは契約条件に基づく貸借料です。銀行預金の利息ではなく、サービス事業者やその貸出先に対する信用リスクを伴います。

事業者側では、第三者への再貸付、アービトラージ、現物とデリバティブを組み合わせる運用、DeFiなどが収益源になる場合があります。ただし、実際の運用方法はサービスごとに異なるため、説明資料で確認が必要です。

個人が自らアービトラージを行わなくても、対応するレンディングサービスへ貸し出すことで貸借料を受け取れる場合があります。しかし、ペッグを維持する仕組みと、貸出先から資産が返還されるかどうかは別の問題です。

なお、ステーキングはブロックチェーンの取引検証などへの参加報酬であり、貸出契約に基づくレンディングとは収益源が異なります。詳しくはステーキングとレンディングの違いをご覧ください。

《出典》
Stablecoin-related yields: some regulatory approaches|Bank for International Settlements

主要ステーブルコインの違いと選び方

同じ「ステーブルコイン」でも、連動対象、発行体、準備資産、償還条件、利用できる地域やサービスが異なります。

銘柄主な連動対象確認したい特徴
USDT米ドル流動性、準備資産、利用環境
USDC米ドル準備資産の開示、償還、対応地域
RLUSD米ドル発行体、規制枠組み、対応ネットワーク
JPYC日本円発行・償還条件、対応チェーン、利用場面

知名度や表示利回りだけで「安全な銘柄」を決めることはできません。USDTはUSDTの仕組みと準備資産、USDCはUSDCの特徴と価格安定の仕組みも確認してください。

ステーブルコインの主なリスク

「ステーブル」という名称は、価格や元本の安全を保証するものではありません。主なリスクは次のとおりです。

  • ペッグリスク:参照資産との価格連動が崩れる
  • 発行体・準備資産リスク:準備資産が不足する、換金性が低下する
  • 償還リスク:一般利用者が額面どおりに償還できない、停止される
  • 事業者リスク:レンディング事業者の破綻や出金停止で返還されない
  • 技術リスク:スマートコントラクト、ブリッジ、秘密鍵に問題が生じる
  • 為替リスク:米ドル連動型の価格が1ドルでも、円高で円換算額が減る
  • 規制リスク:地域やサービスによって取扱い・送付・償還が制限される

TerraUSDが示した「連動目標」と「償還」の違い

2022年にペッグが崩壊したTerraUSD(UST)は、法定通貨の十分な準備資産ではなく、関連トークンとの需給調整に大きく依存していました。市場の信認が低下すると、その調整機能が維持できなくなりました。

この事例から分かるのは、1ドルとの連動を目指す設計と、保有者が1ドルで確実に償還できる仕組みは同じではないということです。各銘柄の構造を個別に確認する必要があります。

運用を判断する5つのポイント

  1. 連動対象:何の価格に連動し、円換算ではどのように変動するか
  2. 準備資産:現金・国債などの構成と開示資料を確認できるか
  3. 償還条件:誰が、どの単位・手数料・期間で償還できるか
  4. 利回りの原資:誰に貸し、どのような運用で貸借料を生むのか
  5. 返還条件と記録:途中解約、返還時期、手数料、税務に必要な履歴を確認できるか

レンディングで報酬を受け取る場合は、受取日、数量、受取時の円換算価額、後日の売却・交換履歴を保存します。詳しくはレンディング報酬の税金と記録方法をご確認ください。

ステーブルコインに関するよくある質問

利益や運用について、特に誤解されやすい点を整理します。

ステーブルコインを持っているだけで儲かりますか?

通常、保有するだけで貸借料や報酬が自動的に発生するわけではありません。レンディング、DeFiなどを利用する場合は収益を得られることがありますが、それぞれ固有のリスクがあります。

1ドルに連動していれば損をしませんか?

損失はあり得ます。ペッグが外れるほか、米ドル連動型を円で評価すると円高によって円換算額が減ることがあります。預け先の破綻や返還停止も別のリスクです。

レンディングとステーキングは同じですか?

異なります。レンディングは事業者などへの貸出契約に基づく貸借料、ステーキングは主にブロックチェーンの取引検証などへの参加報酬です。

JPYCは値上がりを狙う投資商品ですか?

JPYCは日本円との1対1交換を目指す円建てステーブルコインであり、大きな値上がり益を狙う設計ではありません。利用前には公式の発行・償還条件や対応チェーンを確認してください。

ステーブルコインの利益には税金がかかりますか?

レンディング報酬の受領、売却、他の暗号資産との交換などによって所得計算が必要になる場合があります。取引状況や他の所得によって判断が異なるため、暗号資産の利益に関する税務の基本を確認し、不明点は税理士や所轄税務署へ相談してください。

まとめ

ステーブルコインは、決済・送金や伝統金融との接続で存在感を高めています。しかし、利用範囲の拡大が、そのまま保有者の値上がり益につながるわけではありません。

収益を得る方法にはレンディング、DeFi、アービトラージ、為替差益などがあり、利益の原資とリスクはそれぞれ異なります。アービトラージが価格連動を支えることと、レンディングで元本や貸借料が保証されることも別です。

利回りの高さより先に、発行体、準備資産、償還条件、運用先、返還条件を確認することが、ステーブルコインを判断する基本となります。