トランプ大統領、暗号資産への本格政策を始動

トランプ米大統領は2025年1月24日、暗号資産(仮想通貨)市場に関する大統領作業部会を設立する大統領令に署名しました。この作業部会は、ステーブルコインを含むデジタル資産の連邦規制の枠組みを開発し、「戦略的国家デジタル資産備蓄」の作成を評価し提案することを目的としています。トランプ大統領は就任早々に自身の公約として掲げた暗号資産への積極的な取り組みを示した形です。

作業部会の目的と任務

この作業部会は、ステーブルコインを含むデジタル資産に関する連邦規制の枠組みを半年内に策定し、戦略的国家デジタル資産備蓄の創設を評価する任務を負っています。

  • ステーブルコインを含むデジタル資産の連邦規制の枠組みを整備
  • 戦略的国家デジタル資産備蓄(仮称)の創設を評価・提案
  • 過去の行政命令や規制で「技術革新を抑制していた」とされる項目を撤回または修正し、暗号資産セクターへの圧力を緩和
  • CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行や推進を禁止し、各連邦機関に暗号資産に関する勧告を行わせる

暗号資産備蓄の2本柱:ビットコインとその他資産

2025年3月6日、トランプ大統領は「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」と「米国デジタル資産備蓄(U.S. Digital Asset Stockpile)」を大統領令に基づき設立すると発表しました。

(1)戦略的ビットコイン準備金

この準備金は刑事・民事手続きで没収されたビットコインを売却せず、国家の備蓄として維持する構想です。既存の推計では、米政府は約20万BTC(2.6兆円相当)を保有しており、「インフレやドル価値下落リスクに備える戦略的資産」として組み込まれる見通しです。 この準備金は納税者の負担増を伴わない「予算中立的な運用」とされています。

(2)米国デジタル資産備蓄

ビットコイン以外の暗号資産(イーサリアムなど)については、「米国デジタル資産備蓄」として一括管理する方針も示されています。ここでも刑事・民事で没収された資産が中心です。必要に応じて財務長官が売却や活用の判断を行える体制を整えるとされています。

今後の展望と市場の反応

これまでに発表された暗号資産を備蓄する2つの仕組みを中心とした連邦規制の枠組みが、7月に発表される見通しとなっています。 現在、暗号資産市場は中東情勢による地政学リスクの高まりなどを受けてビットコインを中心に不安定な動きを続けてきましたが、イランとイスラエルの停戦合意を受けて、下値を固める動きとなり始めたようです。

暗号資産市場への参加者も、大統領令が発令されてからまもなく半年が経過する場面を迎え、トランプ政権による暗号資産への総合的な政策の具体的な内容がどのようになるのか注目を集め始めています。 暗号資産市場関係者の多くは、トランプ政権による暗号資産への取り組みを前向きに捉えており、今回発表される内容に対して強い期待を持っており、発表後のビットコインを中心とする市況が長期的な上昇場面をもたらすと考えています。

議会での懸念と反対意見

ただ政策について発表があっても、その後に議会で法案を可決し通過させなくてはいけません。議員には反対派も多く、その意見としては以下のようなものが挙げられます。

  • ビットコインは価格のボラティリティが高く、安定性を重視する国家準備資産には不向きである
  • 連邦準備制度理事会(FRB)の使命は金融システムの安定であり、高変動な資産の導入はその使命を損なう恐れがある
  • ビットコインを政治化するリスクや、金や銀に比べて時価総額がまだ小さい点が問題視されている

また、エリザベス・ウォーレン議員(民主党)のように「デジタル資産マネーロンダリング防止法」を掲げ、規制強化を推進する勢力も存在しています。

BTCチャート

市場分析と今後の価格動向

こうした議会での展開を踏まえつつ、ビットコインを中心とする暗号資産の価格推移はどのようになっていくのでしょうか?

機関投資家向け分析プラットフォーム「Bitcoin Vector」は6月24日にビットコインの構造転換が強気に向かっているとの分析を発表しており、「底打ちプロセスは一直線ではないが、潮目が変わり始めている」と指摘しています。24日朝のトランプ大統領のイスラエル・イラン停戦合意示唆で急反発したことを踏まえ、考え方が固まってきたようです。

COINPOST|ビットコイン底打ちシグナル確認か=Bitcoin Vector分析

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏はドルからの資産逃避を意識しており、「米国株のバブルはもう終わっている。米国株とドルの下落で二重の敗北へ」とコメントしており、ゴールドに対して強気の見方を示していますが、この流れからはビットコインへも強気の見方ができるのではないかと思われます。

ただビットコインは今まで現物ETFへの機関投資家の積極的な取り組みがあり、米国株やドルが下落するような展開があるとビットコインも同時に下落する可能性もあり、十分に注意が必要です。