円相場は161円台へ

6月28日午前中に円相場は161円台へ進み161円285銭(OANDA)を付けました。38年ぶりの円安水準になり、財務省の神田真人財務官は「最近の為替動向は一方向、行き過ぎた動きに対しては必要な対応をとる」と為替への市場介入をも辞さない姿勢を示しました。

 円相場のこの水準は、かつてプラザ合意後の円高後につけた円の安値160円20銭があり、ここを本格的に抜けてしまうとチャート的にはプラザ合意前の262円80銭までめぼしい節がありません。5月に財務省が行ったと思われる為替介入はこの水準を意識したものだったと考えられます。

プラザ合意とは?

プラザ合意は、1985年9月22日にアメリカ、フランス、西ドイツ、日本、イギリスの先進5カ国(G5)がニューヨークのプラザホテルで行った会合で合意した、主要通貨の為替レート調整に関する国際的な協定です。

1980年代初頭、アメリカは貿易赤字と高金利に悩まされていました。特に日本や西ドイツに対して巨額の貿易赤字が発生し、アメリカの製造業が競争力を失っていました。

プラザ合意の目的は、アメリカドルの過剰な強さを是正し、主要通貨に対してドルの価値を引き下げることで、アメリカの貿易赤字を改善し、国際的な経済のバランスを取ることでした。G5諸国は協調して市場介入を行い、ドルを安くし、他の主要通貨(特に日本円とドイツマルク)の価値を上げることを決定しました。

プラザ合意の結果、ドルは急速に価値を下げ、日本円やドイツマルクは大きく上昇しました。この為替レートの調整は、アメリカの貿易赤字を減少させる一方で、特に日本経済に大きな影響を与えました。日本では輸出が減少し、バブル経済の形成の一因ともなりました。プラザ合意は、国際経済政策における協調行動の一例として、歴史的に重要な出来事とされています。

今年の円相場は当初、米国の利下げと日銀による利上げが想定され、春以降に円高方向への動きが想定されていたと考えられます。しかし、米国では物価の動きが想定されたようには進まず、「より高くより長く」の金融政策スタンスとなり高い金利水準が継続されています。

 一方、日本銀行も3月マイナス金利政策を解除し、国債買い入れの減額の意向を示したものの、まだ低金利政策を解除した新しい段階には至っていません。

円安が止まるためには

 この状況にBNYメロンのボブ・サベージ氏は「円安がとまる為には、日本の長期金利が十分に高くなるか、米国の金利が十分に低くなる必要があり、まだどちらも起こっていない」と述べています。

日銀政策金利決定会合

次の日本銀行の金融政策決定会合は7月30日・31日

次の日本銀行の金融政策決定会合は7月30日-31日に予定されています。日本銀行は前回の会合で「国債の買い入れ金額を減額する」意向を固め、「国債の買い入れ減額にあたっては予測可能な形で丁寧に実施したい」とコメントしましたが、市場関係者は為替相場の動きもあり、減額を決定すると期待していたと考えられ、受け止め方としては、何もしなかったに等しい認識となりました。

マーケットの期待

そうした事から植田日銀総裁は「買入金額を減額する以上、相応の規模の金額になる」と改めてコメントし、さらに「場合によっては利上げも行う」と発言しています。これらの発言と為替の現在の動きから、市場関係者は7月の会合で「国債買入金額の相当規模の減額」と「利上げ」の両方が行われるのではないかとの期待を持っています。

しかし、国債買入金額減額の金額については、「円安を止める程の大きな金額」と「国債相場が暴落しない程度の金額」の両方を満たすレベルを考えなくてはいけません。大変難しいレベルになると思われます。

 6月20日の日本経済新聞に財務省が「国債の償還年限短期化」、「新たな変動利付債の導入」や「個人向け国債の販売対象の拡大」を検討すると報道がありました。金利リスクを抑えて国債を買いやすくする狙いです。

 財務省は日本銀行が国債買い入れの減額を進めるにあたって、円安阻止を踏まえれば、相減額の金額が相当額になると想定し、日本銀行の買いオペ金額が減る分に対応して、国債市場の需給バランスを考慮した、あらゆる措置を検討して行くことになると思われます。

日本銀行の金融政策決定会合まで1ヶ月ほどあり、その間のドル円相場の動きに不安はありますが、今後の円相場の行方を占うことになるだけに、次回の会合での決定内容が大変注目されています。