NYダウ463ドル高!9月FOMC利下げ観測急加速、日本は利上げへ?
2025.08.14
NY株式市場の概況(8月13日)
8月13日のNY株式市場はIT・ハイテク株の上げが一服したものの、前日の米CPI(消費者物価指数)の結果を受け、警戒したほど関税がインフレを押し上げていないとの安心感につながり、株式市場はポジティブな反応を示し、NYダウ平均が+463ドル大幅高しました。また、S&P500とNASDAQもそれぞれ+20と+31と小幅上昇しています。9月開催のFOMCにおける0.25%の利下げ期待も完全に織り込んでいます。
しかし、株価の動向については、高バリュエーションで推移していることもあり、警鐘を鳴らす声も少なくありません。「全員が楽観的になっているわけではない。8月初旬の季節的な買いが夏の株価上昇トレンドと誤解されている。労働市場や成長ストーリーへの懸念が市場で軽視されている」と警告も出ています。
米金融政策の見通しと要人発言
政策金利の行方については、大手金融機関のエコノミスト達から多くの声が上がっています。
エコノミスト見解
ウルリケ・ホフマンブチャディ氏(UBSグローバル・ウェルス・マネジメント) 「労働市場の弱含みが続く中、FRBは来月に利下げを再開すると当社ではみている。2026年1月までの各会合で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ引き下げ、利下げ幅は計100bpになるだろう」
イアン・リンジェン氏(BMOキャピタル・マーケッツ/米金利戦略責任者) 「7月の雇用とインフレのデータを受けて実体経済の軌道が変化し、市場はそれを消化し続けている。こうした中では、パウエル議長がどの程度の利下げを実施するべきかという疑問が直感的に浮かび上がってくる。当社では50bpの利下げは見込んでいないが、今後数週間で市場がその可能性を相応に織り込む余地は十分にある」
米財務長官の発言
さらにベッセント財務長官はブルームバーグのテレビインタビューで、次のように述べています。 「9月の0.5ポイント利下げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている」「どのモデルで見ても、金利はおそらく150、175ベーシスポイントの低い水準にあるべきだろう」
さらにベッセント財務長官は、FRB(米連邦準備制度理事会)当局者らがFOMC会合の2日後に公表された米雇用統計での改定値を事前に把握していれば、「6月と7月に利下げが可能だったのではないか」と述べました。財務長官は通常、米政策金利について具体的な発言は避けており、ベッセント財務長官も過去の政策決定についてのみコメントするとしてきましたが、今回は異例の発言です。トランプ大統領は利下げを見送ってきたパウエルFRB議長を批判していますが、今回は財務長官が代弁したものと思われます。
今後の主要イベント
次のFOMCは9月16日(水)-17日(木)に開催されますが、先日の雇用統計と今週のCPIの結果から、米国金融市場では利下げが確実視され、利下げ幅も0.50%を見込む状況となってきました。8月恒例となっているジャクソンホール会合が21日(木)-23日(土)に開催され、パウエル議長が講演でどのように次の手について話すのか世界中が注目することになります。

日本銀行と国内の見通し
米財務長官による日銀への言及
一方、ベッセント財務長官は日本銀行について、インフレ抑制に取り組む必要があるとの認識を示しました。米国の財務長官が他国の中央銀行の金融政策について発言するのも異例です。さらに、米国債利回りは日本やドイツといった外国の金利動向の影響を受けていると指摘し、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と発言しています。日本銀行の植田和男総裁と話したと明らかにした上で、「これは植田総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語っています。
7月日銀会合と物価見通し
日本銀行は7月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%の据え置きと決定しました。その際の植田総裁のコメントはハト派的な印象を与えましたが、発表された経済・物価情勢の展望は、2025年実質GDPが+0.5%から+0.6%と小幅に上方修正され、消費者物価上昇率では2025年+2.2%から+2.7%と大幅な上方修正。2026年・2027年も小幅ながら+0.1%ずつ上方修正され、ややタカ派的な内容となっていました。実際、7月23日に内田日銀副総裁が「経済・物価情勢のメインシナリオが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と講演で述べており、タカ派的に修正された展望は利上げに向けた準備とも考えられます。
利上げ時期の市場予測
日本銀行は7月会合で利上げの時期を適切に判断する際、関税措置が経済・物価に及ぼす影響を引き続き見極める必要があるとの考えを示していますが、利上げの時期は確実に近づいていると思われ、市場では日本銀行が年内にも追加利上げに踏み切るとの見方が大勢を占めています。
ブルームバーグ調査と環境変化
8月早々にブルームバーグが行った日本銀行の利上げ時期についての調査では、9月18.1%、10月62.9%、12月80.1%でした。しかし、その後に米国の経済情勢は大きく変化し、米国では9月に利下げが行われそうな状況となりました。こうした環境の変化を受け日本銀行は9月にも利上げを行う可能性が高まってきたと考えられます。日本の経済・物価の情勢そして外国為替にも大きな影響を与えますので、9月の日本銀行による次の一手が注目されます。