OpenAIのCEOサム・アルトマンが仕掛けるワールドコイン[WORLDCOIN|WLD]
2023.08.31
ChatGPTのサム・アルトマンが仕掛ける仮想通貨ワールドコインとは?
ワールドコインはOpenAIのCEOである、サム・アルトマン(Samuel Altman)氏が共同創業したプロジェクトだ。ワールドコインでは「オーブ(Orb)」と呼ばれる機器で目の虹彩を読み取り、「ワールドID(World ID)」というIDを生成する。
このプロジェクトを通じてベーシックインカムの実現をビジョンとして掲げているそうだ。魅力的なコンセプトと20ドル相当の暗号資産(仮想通貨)がもらえるというインセンティブによって、ワールドコインはすでに2023年7月の時点で200万人以上のユーザーデータを取得した。
世界中からプロジェクトへの期待や関心が集中すると共に、ケニア議会が、暗号資産(仮想通貨)ワールドコイン(WLD)の調査委員会を設立し、活動の調査を開始するなど、早速、様々な憶測や懸念が飛び交い、物議も醸している。
サム・アルトマンがワールドコインで虹彩データを集める思惑とは?
彼らは、人工知能の発展に伴って人間とロボットの区別がつかなくなる未来が来ることを想定している。正直なところ現時点でさえ、オンライン上では特に人間と人工知能の区別をすることは難しい。将来より区別が難しくなった場合に、人間の虹彩を活用して人間とロボットを区別しようということだ。そして虹彩を取得することで、すべての“人々”がグローバルな経済にアクセスでき、恩恵を受けられるようにすることを目標としている。
ワールドコインが虹彩データを集める理由
しかし、なぜ虹彩データなのだろうか。虹彩とは黒目の内側、瞳孔の外側にあるドーナツ状の模様を指す。これが個々で固有のパターンを持っており、生後18ヶ月前後で模様は決まり生涯不変といわれている。
仮に一卵性双生児であっても虹彩の模様は異なるようだ。これに加えて左右で模様は異なるため、左右の虹彩データが同一認定される確率は70億分の一から10の78乗分の一ともいわれている。
一度は聞いたことがあるであろう、兆・京・垓のずっと大きい数字の単位「無量大数」という言葉が表現する数字は10の68乗だ。合わせてサーマルセンサーで体温異常をエラーにすることもできるため、ロボットで認証したり眼球だけで認証されるような物騒なことはほぼ起こらない。
つまり、虹彩データが一致する人間が現れる可能性は極めて0に近い確率であるといえるのだろう。人間特有の虹彩を活用して、極めて高精度な生体認証を行えるということだ。
ワールドコインが物議を醸す理由や懸念点とは?
ワールドコインへの支持が世界中で急拡大する傍で、巻き起こっている懸念点について整理する。ポイントは5つである。
- 各国がワールドコインに難色を示す理由
- IDによる本人特定で可能になることとは
- 複数のシステムに同時にログインができる?
- 虹彩データを捧げて、悪用されるリスクはないのか
- 実際どのようにベーシックインカムを実現するのか
ではそれぞれ見ていこう。
各国がワールドコインに難色を示す理由
サム・アルトマンはこれまで、「虹彩データはスキャンしてハッシュ(IrisHash)を生成したあとその場で削除し、ハッシュと個人とは紐付けられないようにしている」と述べて安全性を強調してきた。
しかし、ワールドコインが虹彩データのスキャンをする過程で「データを何に使うか」という情報はほとんど明かされていなかったとのこと。通常、認められているよりも多くの個人データを収集した可能性があるのにもかかわらず、提供者からの十分な理解を得る説明を怠ったとして、欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)、および現地の法律に違反する可能性の調査が始められ、各国にも波及し始めたということのようだ。
IDによる本人特定で可能になることとは
さまざまな憶測を呼び、規制当局も睨みを利かせる環境でありながらもワールドコインは活動を続けている。虹彩データを利用して、個々人にユニークなIDを振ることができた将来にはどのようなことが想定されるのだろうか。
身近な例でマイナンバーカードをあげてみよう。インボイス制度導入の先に可能になるものとして、電子帳簿保存法などとセットである必要はあるそうだが、企業間のやり取りの電子化は請求や消し込みなどの処理が全自動化できるようになる。
2023年6月には、マイナンバーカードを使った酒類販売における年齢確認はすでにコンビニチェーン3店舗での実証実験が行なわれており、医療分野においてカルテと投薬情報の共有で問診票の記入を簡素化できるというメリットもあるようだ。
つまるところ、ワールドコインによって、グローバル共通の本人認証フォーマットが誕生することとなり、本人確認プロセスが圧倒的に簡素化・効率化されるということになる。デジタル化によってもたらされる「省力化」だ。
複数のシステムに同時にログインができる?
ID管理というジャンルでもう1つ面白いキーワードがある。一度の認証手続きによって、複数のシステムにログインすることができるという仕組み「シングルサインオン」だ。
不正アクセス時の被害が拡大したり、認証システムが万に一つ稼働停止した場合に、全てのシステムにログインできなったり、といったリスクは残っているものの、前述したデジタル化によってもたらされる「省力化」にこちらも大いに寄与するだろう。
ワールドコインのワールドIDにおいても、このようにログイン時の手間を大幅に削減してくれる可能性がある。
虹彩データを捧げて、悪用されるリスクはないのか
ワールドコインでは「オーブ(Orb)」と呼ばれる機器で目の虹彩を読み取るわけだが、超高画質で撮影された画像データから虹彩データを取得できるのではないかとふと思った。実際、映像や画像を元に音声認証を必要とするアカウントの乗っ取りや、本人を装うディープフェイクによる二次的な被害もあるようだ。
しかし、ロボットと人間の区別を目標としたワールドコインにおいては、たとえばオーブを利用しなければ入れない仕組みを造って、サーマルセンサーをオーブに搭載すれば課題は解決するだろう。
またマルチモーダル生体認証という、1つの生体認証を行うと同時にそのほかの認証を行う仕組みを実装すれば格段にハッキング等の被害を防ぐこともできそうだ。
ワールドコインが描くベーシックインカムの実現とは?
ここでアルトマンが力を入れたChatGPT及び人工知能関連事業の発展が関係してきそうだ。
結論、強力な汎用人工知能(AGI)が生み出す利益を、世界的なUBI(ユニバーサルベーシックインカム)の資金にできるのではないかという構想だ。
アルトマンは「純然たる思索の段階で具体的な計画はまったくない」と説明したものの、「地球上のすべての人を認証し、AGIの利益に基づくUBIを与える目的でWorldcoinを配布するようなことはありえます」と話した。
現在ベーシックインカムのような制度を導入しているのはブラジルとカタール。ブラジルは財源の確保に必要な税制改革が行われたのちにベーシックインカムを支給するとして、現在は所得制限付きの児童手当を導入している。
原油生産国であるカタールは豊かな財源を使って医療費や電気、水道、光熱費、学校の学費が無料とされているためベーシックインカムと同等の手厚い手当を一部受けることができる国だ。
これらを鑑みるとベーシックインカムの財源確保は絶対条件。サム・アルトマンは汎用人工知能(AGI)がその一旦を担えると未来を見据えているのだろう。
[Iolite記事]
ケニア議会、ワールドコイン(WLD)の調査委員会を発足 虹彩データの収集に懸念
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Worldcoin(WLD)の主要データ
Worldcoinの概要
ワールドコイン (Worldcoin) は、OpenAIのCEO、サム・アルトマン(Sam Altman)氏が共同創業したプロジェクトで、人工知能の発展にともなって人間とボットの区別がつかなくなる未来に備え、すべての人々がグローバルな経済にアクセスでき、恩恵を受けられるようにするというビジョンを掲げるプロジェクトである。個人や企業がグローバルな経済にシームレスに参加し、自己の経済的な未来の形成を可能にすることが目的としている。
主要機能・特徴:
- World ID: オンラインでの人間認証を可能にするIDシステム。ゼロ知識証明を利用してプライバシーを確保。
- World App: World IDを生成・管理するためのウォレットアプリ。
- オーブ: World IDの認証デバイス。マルチスペクトルセンサーを使用して、人間性と独自性を確認。データはデバイス上で即座に削除。
- WLDトークン: World IDを持つユーザーは、定期的にWLDトークンを無料で受け取る権利を有する。米国を除く。
- ガバナンス: WLDはガバナンス機能を持つユーティリティトークン。World IDの導入により、「1人1票」のガバナンスメカニズムが可能。
- ユースケース: WLDは決済や承認通知など、多様なユースケースに使用可能。
- トークン仕様: WLDはERC-20トークンとしてEthereum上に存在。Optimismメインネットでの取引が主流。