1月末発売のIolite(アイオライト)Vol.6をご購読いただいた方々から、誌面の構成や写真のクオリティ、文章に至るまでたくさんの反響をお寄せいただき大変嬉しく思う。今号はダブル表紙への挑戦から始まり、編集部には要求の厳しい入稿作業であったかもしれない。ライターと編集者の仕事は異なり、両者共に文章に関わる仕事でありながら、後者は一貫性の確保やタイムラインの確保など、ディレクション能力が問われる。読まれる方を想像して、ライターが上げてくれた原稿の構成を見直し文脈を整え、進捗管理等の企画の指揮を取る。

見方によってはどちらも文章に関わる職業であることから、同じような仕事を指すのかと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、「似て非なるもの」という言葉がぴったりの表現だ。その編集者が執筆も行うのは、町中華のマスターのように多岐に渡る仕事ぶりだったと思っており、最大の敬意を払いたいコミットだった。毎号入稿が終わる頃には満身創痍だが、今号も最後まで妥協せずに情熱を注いだ本なので手に取ってもらえると嬉しい。

八木編集長FOCUS

 昨年からIoliteではAIに関するトピックも取り扱いを始めた。ChatGPTや生成AIの「発展と課題」という対立した様相をメディアとして切り取ってきた。つい先日、「GMO渋谷 FUTURE 2024」というAIを題材にしたイベントにご招待いただき、AIの専門家からたくさんの話を聞いてきたので少しシェアしたい。

まず画像生成AIについては、現時点ですでに生成のクオリティは極めて高く、競争の優位性はタグをいかに精度高くつけられるかという点になっていくようだ。想像しやすいのは、元画像をAIに読み込ませ、タグをリストしてもらう作業の精度。いわゆるプロンプト作成が容易で高精度であるかによって、生成される画像が求めていたものになるか否か決まり、ユーザーは画像生成に必要なタグの設定が簡単にできるモノを選ぶだろうとのこと。

プロンプトの作成という意味ではChatGPTも得意な分野といえそうであるが、LLM(大規模言語モデル)は統計的に正解の可能性が高い回答を選択するため、論理的な思考や深く考えることを苦手としているようだ。面白いのは、ハイブリッド(論理的な推論能力)にするとAIは数学オリンピッククラスの精度にスペックが上がるということ。すでに、ChatGPT等のAIは弱点がなくなりつつある。現在、建築・設計等で使用されるCADの拡張子が使えないという点などもいずれ克服しそうだ。

 

 最後は笑い話ではあるが、AIが人間に牙を剥くといった世界観で思考を広げれば、究極的なAI競争は強制的にAI稼働を止めるという意味で、性能や利便性ではなく、人間に消されにくいAI競争へと発展し、美少女・猫・ゆるキャラのようなAIが人間を攻めてくるような未来になるのではないかという考察もあった。

 Ioliteの連載では、佐々木俊尚さんがAIに関する最新情報と考察をしてくださっている。彼の思考は深く、私が個人的に好きな連載の1つだ。今回のテーマは「生成AIとメタバースが生み出す新世界の可能性」。急速に発展するAIと仮想現実の開発を前にあなたは何を思う——

佐々木俊尚の考える「AIが代替する人々の仕事と可能性」 Tech and Future Vol.5

[Iolite記事]
佐々木俊尚の考える「AIが代替する人々の仕事と可能性」 Tech and Future Vol.5