仮想通貨(暗号資産)の取引をしていると「ガス代」という言葉を見る機会があると思います。しかし、ガス代が「どのようなものなのか」「なぜ必要なのか」と疑問に感じる人もみえるでしょう。そこで今回は、 ガス代の概要や計算方法、節約するためのポイントを解説します。

ガス代に関する基本知識を身に付けておけば、無駄な出費をせずに取引できるようになるので、ぜひ参考にしてください。

広大な大地にあるガスステーション

そもそもイーサリアムのガス代とは?

イーサリアムにおける「ガス代」とは、 イーサリアムチェーンで取引する際に支払う手数料のこと です。何か取引をするたびにトランザクションの実行やプログラム処理が行われ、そのときに手数料が発生します。ガス代として支払う仮想通貨(暗号資産)は、基本的に利用するブロックチェーンの基軸通貨となっており、イーサリアムチェーンであれば基軸通貨であるイーサリアム(ETH)で払います。

手に持ったカードで支払う男性

ガス代が必要な理由

では、なぜガス代を支払わなければいけないのでしょうか。ここではその理由を解説します。

  • ステーキング対象者に支払うため
  • サイバー攻撃を防止するため

ガス代はネットワークを安全に利用するために必要な費用なので、その使い道をみてみましょう。

ステーキング対象者に支払うため

1つ目の理由は、 ステーキング対象者に支払うため です。「ステーキング」とは仮想通貨(暗号資産)を一定期間預けて、ネットワークのセキュリティ維持に貢献することです。ステーキング中は自由に出し入れできないロック状態になりますが、その報酬として仮想通貨(暗号資産)を受け取れます。

ネットワークのセキュリティを維持するには、ステーキングが重要となります。そのため、ステーキング対象者に報酬を支払う目的で、ネットワーク利用者からガス代を徴収しているのです。 ガス代を支払うことで安心して取引ができる仕組みになっています。 ちなみに、以前までは取引内容を検証するマイニングの報酬としてガス代が充てられていましたが、2023年9月よりマイニング制度が廃止され、ステーキングが採用されました。

サイバー攻撃を防止するため

2つ目の理由は、 Dos攻撃のようなサイバー攻撃を防止するため です。「Dos攻撃」とは、悪意ある第三者が大量の処理やデータを送り付け、サーバーに高負荷をかけて正常に運用できなくする行為です。しかし、イーサリアムは全ての処理においてガス代を支払うよう設計されているので、こういったサイバー攻撃を仕掛ける側もガス代を支払わなければいけません。このように、ガス代はサイバー攻撃の抑止力にもなっているのです。

ethと右肩上がりのグラフ

ガス代が高騰する理由

ガス代は一定の価格ではなく、時間により変動します。場合によっては高騰する時もあるのでその理由を解説します。

  • イーサリアムで支払うため
  • ネットワークの混雑が影響するため

高騰の理由を知っておくだけでも、今後の取引時の参考になりますので理解しておきましょう。

イーサリアムで支払うため

先ほども述べたように、 イーサリアムチェーンのガス代は基軸通貨であるイーサリアム(ETH)で支払います。 仮想通貨(暗号資産)は株式のように、市場の状況により価格が変わるので、その変動がガス代にも直接反映されます。

イーサリアムを含め、仮想通貨(暗号資産)は価格変動が激しいと言われており、急激な下落もあれば、数か月で何倍も高騰するといった事例もあります。そのため、取引する場合はイーサリアムの価格にも目を向けるようにしましょう。

ネットワークの混雑が影響するため

もう一つの理由は、取引量が多くなりトランザクションが増えることによる「スケーラビリティ問題」です。イーサリアムチェーン利用者が多ければネットワークが混雑し、その結果、処理待ち時間が長くなり価格高騰につながります。

電卓とイーサリアム

ガス代がいくらなのか計算する方法

ここでは、どのようにガス代が算出されるのかを解説します。まずは、ガス代の3つの構成要素をご紹介し、つぎに算出方法を説明します。

  • Gas Price
  • Priority Fee
  • Gas Limit

リアルタイムのガス代を確認できる方法もありますので、参考にしてください。

Gas Price

「Gas Price」は取引内容に関係なく、必ずかかる基本手数料のことです。単位は「gwei」で表し、1gweiは0.000000001ETHとなっています。ネットワークの混雑状況、イーサリアム(ETH)の価格により変動し、数十秒ごとに変動します。

Priority Fee

「Priority Fee」はGas Priceに上乗せできる追加料金のことで、単位は「gwei」です。優先手数料ともいい、 追加料金を支払えば、取引を通常よりも優先的に処理してもらえます。

Gas Limit

「Gas Limit」は、取引時にユーザーが支払える上限額のことで、単位は「GAS」で表します。イーサリアムは「スマートコントラクト」という、人の手を介さない自動実行システムを取り入れています。もし、スマートコントラクトが何かの不具合で無限ループを繰り返してしまっても、ガス代の上限額を設定しておくことで、必要以上の費用を支払わずに済むという仕組みです。

Gas Limitはユーザー自身で設定可能ですが、値を小さくしすぎると取引がいつまでたっても完了しない恐れがあるので注意が必要です。

ガス代の計算方法

イーサリアムのガス代は以下の計算式で算出できます。

ガス代=(Gas Price + Priorithy Fee)× Gas Limit

たとえば、各要素が以下のようなだった場合、

  • Gas Price:30gwei
  • Priority Fee:5gwei
  • Gas Limit:20000GAS

計算式にあてはめると、(30 + 5) × 20000 = 700000(gwei)となり、ETHに置き換えると0.0007ETHとなります。なお、算出した数値はあくまでもおおよその価格となり、実際の価格はかかったGAS量により変わります。そのため、計算値より少ないガス代で済む場合もあります。

現在のガス代を確認する方法

ガス代を確認できるサイトを利用すると、手軽にリアルタイムのガス代をチェックできます。 たとえば、「etherscan」はイーサリアムでの取引履歴やトランザクションの詳細などが確認できるサイトで、その中の一つとしてガス代を確認できる機能があります。

https://etherscan.io/gastracker

ガス代確認画面では、ガス代を「Low」「Average」「High」の3段階で表示しています。また、直近一週間分の時間ごとのGas Price状況をヒートマップで表示しています。 ヒートマップを見ればどの時間がガス代が高くなりそうか予想がつくので、取引をするタイミングの参考になります。

複数の積み重なったコイン

ガス代を節約する方法5つ

さいごに、ガス代を節約する方法をご紹介します。

  • 安い時間帯に取引する
  • ガス代が安い時期に取引する
  • 優先手数料を調整する
  • レイヤー2チェーンを利用する
  • まとめて取引する

ガス代は必要な費用とはいえ、場合によっては高くつく時もあります。少しでもガス代を安くするために、以下で紹介するポイントを押さえておきましょう。

安い時間帯に取引する

ガス代を節約する方法でもっとも基本的なポイントは、安い時間帯に取引することです。ガス代はイーサリアムチェーンの利用者が多くネットワーク混雑時に高くなります。そのため、 利用者が少ない時間に取引するとガス代が安くなります。

先ほど紹介した、リアルタイムでガス代を確認できるサイトで調べてから取引すると良いでしょう。ちなみに、ガス代価格の傾向は、平日の夜間は高くなり、 平日の昼過ぎは比較的安くなります。

ガス代が安い時期に取引する

安い時間帯に取引するのが節約の基本ですが、高騰が続いている場合は取引する時期をずらと良いでしょう。たとえば、何かイベントなどがあった場合はイーサリアムチェーン利用者が多くなり、ガス代も高くなります。2023年5月にはペペコイン(PEPE)の熱狂的な盛り上がりにより、ガス代が通常の8倍以上にも膨れ上がりました。

このように、ガス代は市場の影響を受けやすく、一時的とはいえ急激な高騰は珍しくありません。そのため、 急ぎの取引でなければ時期をずらし、市場の動向に合わせてふたたび取引してみると良いでしょう。

優先手数料を調整する

取引時の優先手数料を調整することでもガス代を節約できます。たとえば、仮想通貨ウォレットの「MetaMask」では、取引時のガス代確認画面で優先度を設定できます。

具体的な手順は、まず取引時のMetaMaskの確認画面で、「Estimate fee」のペンアイコンを選択します。

仮想通貨ウォレットのメタマスクで手数料を調整する

「低」「市場」「積極的」のいずれかから優先度を選べるので、「低」を選択すればガス代を低くできます。

仮想通貨ウォレットのメタマスクで手数料を「低」に設定

ただし、 「低」を選択した場合、取引自体の処理速度が遅くなってしまうので注意が必要です。

メタマスクの概要や特徴などはこちらの記事をご覧ください。

レイヤー2チェーンを利用する

レイヤー2チェーンを利用する手もあります。「レイヤー2」とは、メインネットワークであるレイヤー1のネットワーク混雑問題を解消するために作られたシステムのことです。その特徴は、 レイヤー1のガス代を10分の1に抑えつつ、セキュリティを維持したまま運用できる点です。

レイヤー2には以下のようなものがあります。

利用するサービスがレイヤー2を使用可能かどうか確認してみると良いでしょう。

まとめて取引する

取引をまとめて行うことでもガス代を節約できます。仮想通貨(暗号資産)を送金する場合、送金のたびにガス代がかかります。そのため、少額を複数回にわたって送金するより、 一度にまとめて送金した方がガス代を節約できます。

また、NFTを購入する場合でも、一つ一つ購入するよりまとめて一括で購入すると節約できます。

まとめ

仮想通貨のイーサリアムコイン

今回は、イーサリアムのガス代に関する基本知識や計算方法、節約する方法をご紹介しました。

  • イーサリアムのガス代は取引時に支払う手数料
  • ガス代はネットワークのセキュリティ維持のための費用
  • ガス代の計算式は(Gas Price + Priorithy Fee)× Gas Limit
  • リアルタイムのガス代は専用サイトで確認できる
  • 取引時間や優先度の変更などにより節約可能

ガス代はイーサリアムチェーン取引時に必要な手数料で、価格は常に変動しています。今回ご紹介したポイントを実践して少しでも節約しましょう。