BTCはなぜ失速した?米国株と連動した“上値の重さ”を読み解く|週間ビットコイン予想 2025.12/22-28
先週のまとめ:米国指標と利下げ観測が暗号資産の値動きを左右
先週の米国金融市場は、16日(火)発表の雇用統計と18日(木)の米国CPI(消費者物価指数)11月分に注目が集まりました。この2つによって、来年以降の金融当局による追加利下げの方向性を探ることになるためです。
暗号資産市場もほぼ同様の動きとなり、BTC(ビットコイン)は週前半に日々上値へのトライがあったものの上値は重く、週末にようやくしっかりして終わりました。
BTCはなぜ失速したのか:米国株と連動して「上値が重い」状態になった背景
結論からいえば、この週の失速は「BTC単体の悪材料」というより、米国株のムードが揺れた局面でリスクを取りにくくなったことが大きな要因です。週を通じて「利下げ観測はあるが確信は持てない」という空気が残り、株式側の下押し(AI投資への警戒など)が出るたびに、BTCも上値追いが止まりやすい展開になりました。
- マクロの不確実性:雇用とCPIが「ハト派/タカ派材料の混在」になり、追加利下げの見通しが固まりにくい週でした。
- 米株のリスクオフ連鎖:ハイテク株が崩れる局面では、暗号資産も同じ「リスク資産」として売られやすくなります。
- 節目(90,000ドル)の供給圧力:利確・戻り売りに加え、オプション建玉が集まりやすい価格帯のため、上抜けが定着しにくくなります。
加えて、BTCは「上昇局面の期待」で買われやすい反面、材料の確度が落ちると短期勢が先に手じまいしやすい特性があります。特に薄商いが近づくタイミングでは、現物の出来高が伸びないまま先物主導で上値を追う形になりやすく、上昇が続かず失速(レンジ回帰)に戻りやすくなります。
なぜ「雇用統計×CPI」がBTCに効くのか
BTCは、「金利(実質金利)・ドル・流動性」に敏感に反応しやすい局面があります。市場が利下げを織り込みやすいほど、リスク資産(株式・暗号資産)に資金が向かいやすくなる一方、インフレ再燃や利下げ後ずれが意識されると、短期的には上値が重くなりやすい傾向があります。
- 金利期待:利下げ観測が強まると、将来キャッシュフローの割引率が下がる発想からリスク資産が支えられやすくなります。
- ドル指数(DXY)・米国債利回り:ドル高・利回り上昇は逆風になりやすく、ドル安・利回り低下は追い風になりやすい傾向です。
- 株式との連動:短期は米株のセンチメント(特にハイテク株)を「横にらみ」しやすい局面があります。
さらに、暗号資産固有の材料としてETFなどのフロー、オンチェーン(取引所の流入・流出)、デリバティブ(資金調達率・建玉)も、価格の上げ下げの「加速度」を決めやすい要因です。今週が薄商いになりやすい場合、これらの需給指標の小さな変化が、相場を動かすきっかけになり得ます。
日別の動き:BTCは84,000〜90,000ドル攻防、米株のムードを受けた一週間
12月15日(月)
15日の米国株式市場は、前週からの追加利下げ期待のムードがあったものの、米アイロボットの破産法11条適用を受けてハイテク株の上値が重くなり、小幅安となりました。
暗号資産市場では、BTCが90,000ドル台(約1,375万円近辺)へ乗せる場面もありましたが失速し、86,400ドル(約1,340万円)近辺でした。
大台(90,000ドル)のような節目は、利確・戻り売りが出やすく、オプションの建玉(ストライク)も集まりやすいため、一時的に上値が抑えられることがあります。節目突破が「定着」するかは、出来高(スポット)と建玉(先物・オプション)の増え方をあわせて観察すると、判断しやすくなります。
12月16日(火)
16日に雇用統計が発表され、11月の失業率は9月の4.4%から上昇し4.6%となり、4年ぶりの高水準を示しました。一方、NFP(非農業部門就業者数)は、10月が政府支出削減もあり10.5万人減少でしたが、11月は回復して6.4万人増加となり、予想の5万人を上回りました。
失業率の上昇により追加利下げ期待が高まったものの、10月分のデータが収集できず未発表だったことから信頼感が不足し、かえってNFPの11月の好調さが追加利下げに疑問を生む状況となりました。結果として、雇用統計は追加利下げの支援材料にはなりませんでした。また、ウクライナ紛争の和平交渉への期待から原油価格が大幅安となり、株式市場の足を引っ張りました。
暗号資産市場は株式市場の動きを横にらみする展開で、BTCは85,000ドル台(約1,320万円台)〜88,000ドル(約1,360万円)周辺で推移し、87,800ドル(約1,360万円)近辺でした。
今回のように「失業率上昇(ハト派材料)」と「雇用者数の想定以上の強さ(タカ派材料)」が同居すると、市場は方向感を失いやすく、BTCもレンジ回帰しやすくなります。この局面では、価格そのものよりも「どちらの材料が後追いで再評価されるか」が、次のトレンドの起点になります。
12月17日(水)
17日の株式市場では、オラクルが投資会社からの出資見送りで急落し、AI投資への懸念が再浮上しました。そのため、ダウ平均は302ドル安となりました。
暗号資産市場は一時BTCが90,000ドルへトライする場面をみせましたが、株式市場に引きずられて86,200ドル(約1,340万円)近辺でした。
株式側のテーマ(AI投資など)が揺れると、リスクオフの連鎖で暗号資産も売られやすくなります。ただしBTCは「市場全体の担保資産(コア)」としてみられることもあり、アルトコインより先に戻りやすい/戻りが強い局面もあります。
12月18日(木)
18日は11月の米CPIが発表され、前年同月比+2.7%と予想外に伸びが鈍化しましたが、追加利下げムードは継続し、株式市場は底堅く推移しました。また、マイクロン・テクノロジーの決算見通しが好感され、ハイテク株中心にしっかりした地合いとなりました。
一方、暗号資産市場では、CPIについて10月分や月次データに欠損があることが嫌気され、BTCが一時84,500ドル近辺(約1,310万円台)まで売られる場面がありました。85,500ドル近辺(約1,330万円近辺)で終わっています。
「指標の数値」そのものより、データの信頼性が疑われると市場は保守的になり、短期筋がリスクを落として急落が起こりやすくなります。このような下落が出た後は、(1)下落を吸収する買いが入るか(2)戻り売りが優勢かを、出来高と値幅で確認するのが有効です。
12月19日(金)
19日の株式市場では追加利下げの期待が高まり、ハイテク株が堅調となりました。また、新年相場に向けた資金の流入もあり、ダウ平均は183ドル高、S&P500は59ポイント高、NASDAQは313ポイント高となって週を終えています。
暗号資産市場も株式市場のムードを受けて底堅い動きとなり、BTCは89,000ドル台(約1,400万円台)をのぞく場面をみせ、88,100ドル近辺(約1,390万円近辺)で終わりました。
アルトコインはBTCの動きを受けつつも、目立ったトレンドにはなりませんでした。ETHは15日に3,100ドル(約49万円台)に乗せたものの、その後は2,800ドル(約44万円)〜2,980ドル(約47万円)のレンジに終始し、2,980ドル近辺でした。
XRPも似たような動きで、15日に2ドル(約310円台)に乗せましたが、1.8ドル(約280円)〜1.9ドル(約300円)程度のレンジに終始し、1.9ドル近辺で終わっています。
週末にかけての底堅さは、ポジション調整一巡や、年末前の持ち高整理が一段落した影響も考えられます。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
| 月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 12 | 23 | 火 | 22:30 | 米国 | 実質GDP(速報値)第3四半期 | ★★★★★ |
| 12 | 23 | 火 | 22:30 | 米国 | 耐久財受注(速報値)10月 | ★★★★☆ |
| 12 | 23 | 火 | 23:15 | 米国 | 鉱工業生産指数 10月・11月 | ★★★★☆ |
| 12 | 23 | 火 | 24:00 | 米国 | リッチモンド連銀製造業指数 12月 | ★★★☆☆ |
| 12 | 23 | 火 | 24:00 | 米国 | CB(コンファレンスボード)消費者信頼感指数 12月 | ★★★★☆ |
| 12 | 24 | 水 | 22:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数 12/14-12/20 | ★★★☆☆ |
| 12 | 25 | 木 | --- | 米国 | クリスマス(金融市場休場) | — |
BTCマーケットを予測するための「最低限のチェックポイント」
今回のようにマクロ要因が中心の局面では、次の項目を「毎日 or 週次」で押さえるだけでも、見通しの精度が上がります。価格予想は断定ではなく、材料の優先順位を整理して「起こり得る展開」を複数用意するのが現実的です。
マクロ(金融政策・指標)
- インフレ(CPIなど):伸び鈍化=即強気ではなく、「賃金」「サービス」「コア」など内訳と継続性を確認します。
- 雇用:失業率と雇用者数が食い違う時は、次の改定・補足指標(労働参加率など)で評価が変わりやすくなります。
- 金利期待:利下げの「回数」よりも「いつから・どれくらいの速度か」が、リスク資産の方向感を作りやすい傾向です。
需給(暗号資産固有)
- 取引所フロー:取引所への流入増は売り圧力の兆候になり得ます(短期の警戒材料です)。
- 先物の建玉・資金調達率:過熱(ロング偏重)→踏み上げ後の急落や清算連鎖に注意が必要です。
- 主要価格帯:90,000ドルのような節目は心理・オプション要因で「壁」になりやすい傾向です。
テクニカル(最低限)
| 観点 | みるポイント | この週の文脈 |
|---|---|---|
| レンジ | 高値・安値、中心値、ブレイクの定着 | 84,500〜90,000ドル付近で攻防 |
| 出来高 | 上昇・下落のどちらで増えるか | 節目トライはあるものの上値が重い局面 |
| 相関 | 米株(特にハイテク)との連動度 | 「横にらみ」で株のムードに引きずられました |
今週の見通し:クリスマス週は薄商い、方向感探しの1週間
今週のイベント
- クリスマス前後で市場参加者が減り、主要市場で薄商いが想定されます
- 材料が少ない局面では、ヘッドラインや論評が値動きのきっかけになりやすくなります
2025年も締めくくりが近づく中、今週はクリスマスがあり、市場参加者が非常に少なくなると考えられます。世界の金融市場そして暗号資産市場は薄商いのなか、方向感を探る週となります。
ただ今週は市場が注目するようなイベントも特になく、通常であれば小幅でのもみ合いに終始する展開になると考えています。一方で暗号資産市場では、来年の市場見通しとして強気論・弱気論ともに湧き上がっており、こうした論評に影響された投資家の動きが出るのかがポイントです。
投資家の皆様におかれましては、来年以降のあらたな相場展開に向けて、慎重な検討をお願いいたします。
薄商い週に起こりやすい「注意パターン」
- 急な値幅:参加者が少ないほど、まとまった成行注文で価格が飛びやすくなります。
- フェイクブレイク:節目抜けにみえても出来高が伴わず反転しやすい傾向です。
- ニュース感応度上昇:材料が少ないと、論評・ヘッドラインで短期勢が過剰反応しやすくなります。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・暗号資産の売買を推奨、勧誘、助言するものではありません。記載内容は作成時点の情報にもとづきますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任にて行ってください。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れなどのリスクがあります。
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