利下げ期待とBTC乱高下──米国金融市場と暗号資産の行方を読み解く|週間ビットコイン予想 2025.12/08-14
先週の米国金融市場と暗号資産市場の概況
先週の米国金融市場は12月に入り、年末の意識と今週9日〜10日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果をみたい思惑から、目立った動きはあまりみられませんでした。
そうしたなかで株式市場は、週初こそ金利上昇を受けて下落したものの、その後は利下げ期待を持って下値不安を解消し、比較的堅調に推移しました。3指数は週間で、NYダウ平均が+238ドル、S&P500が+21、NASDAQが+213の上昇となっています。
一方で暗号資産市場では、週初にYearn Finance(ヤーン・ファイナンス)でyETHの流出事故があり大きく下落して始まり、その後盛り返すなど、依然として一進一退の展開が続きました。
先週のマーケット動向
12月1日(月):流出事故と金利上昇でリスクオフ
1日の株式市場は、前週に上昇した反動で利益確定売りから始まりました。利下げを意識して下値不安は少ないものの、暗号資産市場の急落と債券市場での金利上昇を受けて軟調な1日となりました。暗号資産市場では、前述のように流出事故があった影響を受けてビットコイン(BTC)を中心に下落しました。
BTCは90,300ドル台(約1,410万円近辺)から始まり、一時83,800ドル近辺(約1,300万円近辺)まで6,000ドルも下落する場面がありましたが、86,300ドル程度(約1,340万円程度)まで戻して終わりました。
12月2日(火):利下げ期待でリスクオン回帰
2日になると、株式市場・暗号資産市場ともに利下げ期待を背景として買い戻しの動きが強まりました。NYダウ平均は+1,85ドル高となりました。暗号資産市場では、BTCが一時92,000ドル台(約1,430万円)まで買い進まれ、終値は91,200ドル台(約1,420万円近辺)となりました。
12月3日(水):ADP雇用者数の下振れで利下げ観測が一段と強まる
3日には、11月のADP雇用者数が発表され、32,000人減少と予想外の結果となりました。これを受けて金融市場では利下げ予想が一段と強まり、株式市場はNYダウ平均で+408ドルと上昇しました。暗号資産市場も同様の動きをみせ、BTCは94,000ドル台(約1,460万円台)まで一時上昇しました。終値は93,400ドル台(約1,430万円台)でした。
12月4日(木):株は小動き、BTCはボラティリティ拡大
4日は金融市場で目立った動きはなく、株式市場も小動きでした。一方で暗号資産市場では、BTCがやや大きく上下に振れる展開となりました。93,400ドル台(約1,450万円台)から始まり、高値は94,000ドル近辺(約1,450万円台)、安値は91,000ドル割れ近辺(約1,410万円近辺)を付けた後、92,000ドル台で終わりました。
12月5日(金):株は堅調、暗号資産は上値重く反落
5日は利下げ予想が一段と強まり、株式市場は堅調でNYダウ平均は+104ドル高となりました。1週間を通じてみると、株式市場は利下げ予想を背景に、NYダウ平均が+238ドル、S&P500が+21、NASDAQが+213と上昇して終えました。
暗号資産市場は異なる動きをみせ、BTCは92,000ドル台から始まりましたが、90,000ドル(約1,400万円近辺)割れの水準で推移し、上値の重い展開から反落して89,300ドル台(約1,390万円程度)で終わりました。
主要アルトコイン(ETH・XRP・SOL)の動き
今週のアルトコイン市場では、イーサリアム(ETH)とエックスアールピー(XRP)、ソラナ(SOL)が、それぞれ異なる材料を背景にビットコインとはやや異なる値動きをみせました。
ETHは大型アップグレード「フサカ(Fusaka)」の実装が行われたことで、ネットワークの将来性があらためて意識されました。週初3,000ドル(約46.7万円近辺)から始まり、4日には3,200ドル近辺(約50万円)まで上昇する場面もあるなど、堅調な推移となりました。週末は3,020ドル(約47万円近辺)で落ち着いて終えています。
XRPは、Ripple社の子会社がシンガポールでMAS(金融管理局)から主要決済機関(MPI)ライセンスの事業範囲拡大の承認を取得したニュースが支えとなりましたが、価格面では上値の重い展開が続きました。週初2.15ドル(約336円近辺)から始まりましたが、大きく上方向を試す動きはみられず、週末は2ドル(約310円台半ば)近辺で取引を終えています。
SOLは、高速処理性能と活発なDeFiエコシステムが引き続き評価され、短期的な調整を挟みつつも全体としては底堅い値動きとなりました。週初にはBTCやETHのボラティリティ拡大に連れ安となる場面もありましたが、その後は買い戻しが優勢となり、週末にかけては対BTC・対ETHベースでも相対的な強さを示しています。
今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week
| 月 | 日 | 曜日 | 日本時間 | 国 | 経済イベント | 重要度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 12 | 08 | 月 | 08:50 | 日本 | 国際収支(経常収支、貿易収支)10月 | ★★★☆☆ |
| 12 | 08 | 月 | 08:50 | 日本 | 2025年第3四半期GDP | ★★★☆☆ |
| 12 | 10 | 水 | 10:30 | 中国 | 生産者物価指数(PPI)11月 | ★★★☆☆ |
| 12 | 10 | 水 | 10:30 | 中国 | 消費者物価指数(CPI)11月 | ★★★☆☆ |
| 12 | 10 | 水 | 28:00 | 米国 | FOMC(連邦公開市場委員会) | ★★★★★ |
| 12 | 11 | 木 | 22:30 | 米国 | 貿易収支9月 | ★★★☆☆ |
| 12 | 11 | 木 | 22:30 | 米国 | 新規失業保険申請件数 11/30-12/6 | ★★★☆☆ |
※12月18日(木)- 19日(金)日本銀行 金融政策決定会合
FOMCと今後の金融政策をめぐる見通し
今週は、なんといっても10日(水)に米国FRBが開催するFOMC(連邦公開市場委員会)が最大のポイントです。すでに金融市場では、今回の利下げ幅を0.25%とする見方が大勢となっており、その確率は90%を超えています。
それだけ期待が高まっているということです。しかし金融市場では、来年末までに今回を含めて4回の利下げが行われると想定しています。このため、FOMC会合後のパウエル議長の会見で、今後の金融政策の方向性についてどのような発表があるのかに大きな注目が集まっています。
というのも、パウエル議長の任期は来年5月までですので、来年以降のことについてどれだけ言及するのかはわかりません。またインフレに対する警戒も残っていますので、その懸念が払拭されていないなかで、さらなる追加利下げについて言及するかどうかは不透明です。その内容次第では、金融市場が大きく上下に振れることも考えられます。
FOMCは今月最大のイベントと考えられますので、暗号資産市場は、この後時間をかけて下値を固め、来年に備える動きになるのではないでしょうか。
ビットコインマーケット予測と今後の注目ポイント
来年以降の相場については、トランプ大統領の金融緩和期待を背景として米国での金利低下が想定されます。また状況によっては、関税収入をもとに、国民に対して給付金が配られる可能性もあります。これらは米国でのバブル相場を想定させる要因です。
このバブルの後には「インフレ・金利上昇」が考えられ、さらに「米国の財政不安・米ドルの価値下落」が想定されます。
その場合には、金や銀などのモノへのシフトが起こると考えられます。しかしその際には、以前にはなかった暗号資産、特にBTCやETHなどが選ばれる可能性があると考えています。その時に備えて、徐々に準備を始めてもよいのではないでしょうか。
ビットコインマーケットを予測する上では、こうしたマクロ環境の変化が非常に重要です。金融緩和によって市場全体の流動性が増える局面では、株式や不動産だけでなく、ビットコインのようなリスク資産にも資金が流入しやすくなります。一方でインフレが加速し、法定通貨の価値に対する不安が高まると、「デジタル・ゴールド」としてのビットコインが再評価される可能性があります。
投資家が今後注目すべきポイントとしては、まずFOMCを中心とした利下げペースと、その後のインフレ動向です。利下げが想定よりも早くなり、大きく進めば短期的にはリスクオン相場が続きやすく、ビットコインにとって追い風となり得ます。一方で、インフレ再燃や長期金利の急上昇が意識されると、調整局面も想定されます。
また、ビットコイン固有の要因としては、半減期やETF関連の動き、機関投資家の参入状況なども中長期の価格形成に大きな影響を与えます。これらのファクターが「金融緩和」「インフレ期待」といったマクロ要因と重なった時、相場は想定以上に大きく動くことがあります。
したがって、中長期でビットコインへの投資を検討する場合には、短期的な値動きに振り回されすぎないように注意しつつ、マクロ環境の転換点(利下げサイクルの開始・インフレトレンドの変化・ドル指数の方向性など)を意識しながら、時間分散でポジションを構築していくアプローチが現実的といえるでしょう。