トランプ大統領の減税法案と市場への影響

7月4日にトランプ大統領が政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案に署名しました。この法案により米国財政赤字が10年で3.4兆ドル増加すると見込まれ、米国政府の財政不安に対する懸念とインフレ懸念の台頭から暗号資産への資金流入が高まりました。

暗号資産市場の動向

先週は3本の暗号資産関連法案が議会下院で審議されることから「Crypto Week」として、BTC(ビットコイン)を筆頭に暗号資産は堅調な動きを見せました。また、株式市場が堅調な展開を見せたこともフォローとなり、各暗号資産が最高値を更新する展開となりました。

前週の動きを引き継ぎ、暗号資産市場は堅調に始まり、市場の期待の中でBTCは120,000ドル台へ乗せ、123,200ドル(約1,810万円)近辺まで上昇しましたが、翌15日(火)に発表される米CPI(消費者物価指数)への警戒もあり、高値警戒感から伸び悩みました。

CPI発表後の市場反応

15日に発表されたCPIは前年同月比+2.7%、前月比+0.3%とそれぞれ前月の+2.4%と+0.1%から加速し、市場の利下げ期待がしぼみ、株式市場、暗号資産市場ともにやや上値の重い一日となりました。

FRB議長報道による混乱

16日(水)にはトランプ大統領によるパウエルFRB議長解任の誤った報道などもあり、金融市場、特に株式市場は乱高下する混乱がありました。暗号資産市場もBTCなどが大きく上下する場面がありましたが、トランプ大統領による報道への否定コメントから強く反発し上昇して終わっています。特に暗号資産は上値へトライする動きが見られ、BTCは再度120,000ドル台へ乗せる場面もありました。ETH(イーサリアム)やXRP(エックスアールピー)の動きはさらに顕著で、ETHは3,380ドル(約50万円)台、XRPは3ドル(約450円台)へ乗せるなどの展開を見せていました。

経済指標と市場評価

17日(木)には米国小売売上高と失業保険申請件数の発表があり、小売売上高は前月比+0.6%と前月(5月)の-0.9%から予想以上の回復を見せました。また新規失業保険申請件数は221,000件で、前月比7,000件減少と、4月以来の低水準の発表となりました。この2つの発表から金融市場では、「今日の発表で経済活動と雇用が概ね堅調であることを示し、追加利下げを急ぎ行うような状況ではない」との評価が支配的となっています。

こうした状況から株式市場では3指数が揃って上昇し、NASDAQは史上最高値を再度更新しました。また下院で暗号資産関連3法案が可決され、暗号資産市場ではBTCこそ120,000ドル近辺と、+0.8%程度の動きでしたが、ETHは+3.5%程度、XRPは+15.4%程度の大幅な上昇となっています。

週末のアルトコイン市場

18日(金)、株式市場は利益確定売りに押され、主要指数は小幅な調整を強いられました。しかし暗号資産市場では、むしろアルトコインが主役となり、活況を呈する展開に。ETHは一時3,650ドル(約54万円)まで上昇、XRPは一気に3.65ドル(約540円)を突破し、市場の熱気を象徴しました。週末の終値はBTCが118,000ドル(約1,750万円)、ETHが3,510ドル(約52万円)台、XRPは3.40ドル(約500円)台で取引を終えています。

ETH(イーサリアム)の急伸要因

ETHの力強い上昇を後押ししたのは、ステーブルコイン規制を巡る法案可決による市場心理の改善です。特にUSDCやDAIといったイーサリアム上で稼働する主要ステーブルコインの規制枠組みが整ったことで、DeFi(分散型金融)エコシステム全体への信頼感が急速に高まりました。また、今年11月頃に実装予定の大型アップグレード「Fusaka」への期待感も寄与。これにより手数料の低下やトランザクション処理の高速化が見込まれ、ネットワーク利用の実需増加が意識されました。

XRP(エックスアールピー)の急騰要因

XRPは市場平均を大きく上回る急騰を見せました。背景として、SEC(米証券取引委員会)との長年の法廷闘争でリップル社が控訴取り下げを発表したことがあり、市場センチメントを大きく改善させたことが挙げられます。法的リスクの後退は長らく重石となっていたXRPの再評価を促し、大口投資家の資金流入を誘発しました。また、リップル社が中東・アジア圏でのCBDC(中央銀行デジタル通貨)実証実験プロジェクトに参加しているとのニュースも、実需期待を高め、買いの勢いに拍車をかけました。

これらの要因が重なり、アルトコイン市場全体にポジティブな連鎖反応を起こした週末となりました。

今週の経済イベントカレンダー
Calendar of Economic Events This Week

曜日日本時間経済イベント重要度
07 22 23:00 米国 リッチモンド連銀製造業指数7 月 ★★★☆☆
07 23 23:00 米国 中古住宅販売件数6 月 ★★★★☆
07 24 17:00 欧州 製造業・サービス業購買担当者景気指数(PMI)7 月 ★★★☆☆
07 24 21:15 欧州 EU ECB 政策金利会合 ★★★★★
07 24 21:30 米国 新規失業保険申請件数7/13-7/19 ★★★☆☆
07 24 22:45 米国 製造業・サービス業購買担当者景気指数(PMI)7 月 ★★★★★
07 24 23:00 米国 新築住宅販売件数6 月 ★★★★☆
07 25 21:30 米国 耐久財受注6 月 ★★★★☆
来週以降のイベント
7月29日(火)-30日(水) 米国 FOMC(連邦公開市場委員会) ★★★★★
7月30日(火)-31日(水) 日本 日銀金融政策決定会合 ★★★★☆
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市場の見通しと注目点

今週発表される経済指標では、購買担当者による景気指数PMIがあります。各企業が実感している仕入価格、販売価格を基にしたデータになると考えられ、来週開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)での重要な参考資料になるはずです。ただ、今まで発表されている経済指標からは利下げを行う緊急性を感じるものはなく、今回のFOMCでの結論は市場が想定している「政策金利水準の維持」となるのではないでしょうか。

そうしたことから、金融市場は有力企業の決算発表の内容に注目する展開が強まると考えられます。

関税政策と暗号資産市場への影響

またトランプ政権は、8月1日から上乗せする関税の発動に向けて準備を進めていますが、すでに実施されている自動車、鉄鋼、アルミニウム等に続き、セクター別(製品別)関税が銅の50%に続いて木材、半導体、重要鉱物、医薬品などで協議されています。こうした関税政策に関するトランプ大統領のコメントが市場へのインパクトを強めると考えられ、今週のトランプ大統領の発言が注目されます。

ステーブルコイン規制法案と今後の期待

先週、米国議会下院で可決され、トランプ大統領が署名を終えたジーニアス法案(Genius Act)は、暗号資産市場にとって歴史的な転換点となりました。この法案は、ステーブルコインの発行体に対する資産裏付け要件、準備金の監査義務、透明性報告、消費者保護ルールなどを初めて包括的に定めるもので、規制の不透明さが長年の課題だった暗号資産エコシステムに明確な枠組みを与えることになりました。

法案可決の直後、市場ではUSDCやDAIなど主要ステーブルコインの信用力が高まったとの評価が一気に広がり、機関投資家を中心とする新規資金の流入が加速。特にイーサリアムを基盤とするDeFiやレンディング市場では、利用者の増加と流動性の急拡大が確認されています。これまで規制リスクを理由に二の足を踏んでいた機関投資家や企業が参入に動き出しており、直近ではステーブルコインの発行・運用を巡る金融商品の開発やパートナーシップの発表も相次いでいます。

今後は、ステーブルコインを軸とした金融市場の制度化が進み、暗号資産市場とTradFi(伝統金融)の境界がますます曖昧になると予想されます。具体的には、銀行や決済事業者がステーブルコインを正式に取り扱う動きが加速し、国際送金、貿易決済、クロスボーダー資金移動といった分野で、暗号資産の活用が一層広がるでしょう。また、DeFi市場では一段と大口資金が流入し、流動性の厚みが増すことで、ボラティリティの低下や市場成熟化が進む可能性があります。

暗号資産市場は今週も政権によるフォローを受け、堅調な展開が続くと見込まれます。投資家の皆様におかれましては、経済指標の結果や政策発表といったマクロ要因、そしてそれらが暗号資産市場に与える影響について、引き続き注視していただきたいと思います。

BTC積立企画

2023年6月から月毎に10万円分の暗号資産を実際に積み立てていき、そのポートフォリオを公開する企画です。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、日本の取引所でも取り扱われており、米ドルとペッグ(連動)するステーブルコインであるダイ(DAI)を対象としています。

これまでの暗号資産積み立ての状況
Accumulation Status

[期間:2023.06.05 〜 2025.08.05]

ポートフォリオの現在の資産価値
 円

含み益(現在の資産価値 - 合計積立金額)
 円

利益率
%

積み立て回数
16 回

合計積立金額
1,600,000 円

ポートフォリオの構成

    ポートフォリオ

    銘柄 シンボル 対円レート 保有数量 日本円換算 構成比
    ビットコイン BTC [BTC/JPY] 0.1523 BTC %
    イーサリアム ETH [ETH/JPY] 1.8884 ETH %
    ダイ DAI [DAI/JPY] 80 DAI %
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