NY株式市場の変動と下落の背景

NY株式市場の動きが大きく変わってきています。これまで世界の中で米国1強の株価上昇を続けてきましたが、2月19日にS&P500が最高値を更新した後、翌20日から乱高下が始まり、徐々に下落基調となっています。

NYダウ平均の動きで見ると、2月20日450ドル安、21日748ドル安と、ミシガン大学消費者信頼感指数などでインフレ期待が高まっていることなどをポイントに大きな下落となりました。24日の週は一進一退の動きをなりましたが、3月に入ると3日649ドル安、4日670ドル安、6日427ドル安、10日890ドル安、11日478ドル安そして昨日12日が824ドル安となり、大きな下落が続きました。

NY株式市場の3指数は昨日の終値で2月19日からNYダウ平均が-3,194ドル(-7.2%)、S&P500が-572ポイント(-9.3%)、NASDAQが-2,620ポイント(-13.1%)と大きく下げています。

このように乱高下をしながら下落している大きな要因は、トランプ大統領による関税問題から派生するインフレ懸念や景気見通しの不透明感にありますが、これまで長期間にわたり上昇した株価の割高感が根底にあるとも考えられます。ここにきて米国の有力金融機関から今年のNY株式市場の見通しについて修正が相次ぎました。

金融機関による市場見通しの修正

ゴールドマンサックスの見解

先月21日にゴールドマンサックスのグローバルマーケット担当で戦術スペシャリストのスコット・ルブナー氏が「3月に向けて資金フローの力学が劇的に変化する」として「調整ウオッチに入っている」と顧客レポートに掲載しました。

JPモルガン・チェースの見解

JPモルガン・チェースでは、「関税が国内外の経済成長の重しとなり、米国株がさらに下落する」と警戒を強めています。グローバル・マーケット・インテリジェンス責任者のアンドルー・タイラー氏が4日に出した顧客向けレポートで「貿易摩擦激化で米国GDP予想は大きく下振れし、利益見通しが大幅に下方修正される可能性が高く、年末の予測を見直す」として「見通しを戦略的弱気に変更する」と伝えています。

タイラー氏は過去2年間のS&P500上昇を正しく予想してきただけに、今回のレポートは市場関係者から大きな注目を集めています。

米国株の優位性が揺らぐ

3月10日、CITIグループは、マクロ調査・資産配分グローバル責任者のダーク・ウィラー氏が「米国株の優位性が失われる傾向が明白になってきた。今後数ヶ月は米国経済のニュースが世界経済のニュースより低調な可能性が高い。米国例外主義が復活する可能性は低いだろう」とコメントしました。その上で、米国株のウェートを「オーバーシュート」から「ニュートラル」へ引き下げています。

さらに3月11日には、ゴールドマンサックスが「2025年米国GDP成長率の予想を1.7%と-0.5%へ下方修正」し、今後の景気減速と暫定関税率の引き上げ、地政学的な不確実性の高まりから、S&P500の2025年末予想を6,200へ引き下げました。(従来予想は6,500)

米国市場の今後の展望

このように、米国経済の先行きの見えにくい状況を捉えて、株式市場の見通しを下方修正する動きが続いています。今後、関税については4月2日から相互関税が発動される予定となっており、対象国との関係が注視されています。

さらに、関税の影響が米国のインフレ懸念を一層高めることが予想されるほか、ウクライナとロシアの停戦交渉による影響など、米国を取り巻く経済環境は不透明感を増しています。これまで世界経済をリードし、多くの投資資金を集めてきた米国市場が今後どのような展開を迎えるのか、引き続き注目されます。