NY株式市場の動向(8月6日)

8月6日のNY株式市場は、アップルが米国内での生産拡大に向けて1,000億ドル(約14兆7,000億円)の追加投資の方針を明らかにしたことを受けて、NASDAQを中心に上昇しました。特にNASDAQは最高値に迫る+252ポイント高となっています。

NY株式市場は4月8日にトランプ大統領による中国への108%の追加関税から大幅安となりましたが、その日の終値のNYダウ平均37,645ドル、7S&P500で4,982、NASDAQで15,267を底値として、株式市場を中心とした楽観論に導かれて徐々に下値を切り上げてきました。

米雇用・金融政策の最新動向

7月雇用統計:減速のサイン

先週8月1日(金)に発表された7月の雇用統計(米国)の結果を見ると、米国の雇用情勢に暗雲が垂れ込めてきたようです。今回発表された結果は、7月の非農業門就業者数で+7.3万人となり市場予想の10万人台を下回ったのみならず、5-6月の結果についても大きく下方修正され、5-7月3ヵ月間の月間平均が3.5万人と、新型コロナ禍後の最低を記録しました。トランプ政権が重視する製造業の雇用減少は3ヵ月連続となりました。こうした結果は、関税政策に対して各企業が慎重なスタンスとなり、積極的な採用に及び腰になったと考えられます。雇用の悪化はトランプ政権の政策が原因と考えても良いのではないでしょうか。

FOMCと利下げ観測の高まり

直前に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が据え置かれ、今後の利下げについても慎重なスタンスが取られました。しかし、今回の雇用統計結果により次に開催される9月のFOMCでの利下げ予想が8割程度まで高まる状況となっています。今後の経済指標の結果から米国景気の後退が想定され、9月の利下げが行われた場合、その利下げにより景気が速やかに立ち直ることができるのか?あるいは景気後退が思いのほか加速し、簡単に回復はできないのか?米国経済に取って大きな節目となりそうな時期を迎えることになりそうです。

金を計る天秤

金市場の現状と見通し

足元の価格レンジと基調

金融市場でのこうした動きを見ながら、一方で金価格の動向にも引き続き注目が集まっています。金価格は昨年末の1トロイオンス2,634ドル(約38万8,000円)から今年の1-4月に大きく上昇し、4月21日に3,400ドル(約50万円)台に乗せ、この間の上昇率は+29%でした。その後は3,350ドル(約49万円)を中心に3,250ドル(約47万8,000円)~3,450ドル(約50万8,000円)のボックス圏での動きとなっています。ただ大きく上昇したにもかかわらず、大きく下落することもなく、下値を固める動きが続いている状況と思われます。

大手機関投資家見通し:4,000ドルシナリオ

こうした動きの中でフィデリティ・インターナショナルは金価格が今後の9ヵ月間で1トロイオンスあたり4,000ドル(約59万円)へ向かうとしています。運用担当者のイアン・サムソン氏は「今年初めに描かれた景気の破滅シナリオは回避されるかもしれないが、関税問題に関しては米国経済の11%を占める輸入品に15%の関税が課されることになると考えられ、これは大きな増税となり米国経済の減速の要因となる」とし「金価格については、米国景気の減速を受けたFRBによる利下げの結果としてドル安、そして各国中央銀行による金保有の拡大により上昇していく」としています。他の大手金融機関の予想は、UBSが2025年末に3,500ドル(約51万5,000円)、ゴールドマンサックスが2025年末に3,700ドル(約54万5,000円)、2026年半ばに4,000ドルとなっています。

著名投資家の見解:需要の広がり

こうした大手金融機関の予想とは異なりますが、世界最大のヘッジファンド・Bridgewaterの創業者であるレイ・ダリオ氏は「これまでの金価格上昇の主役は各国の中央銀行で一般の人々はほとんど関与していない(購入している国は東側諸国が多く、ロシア・中国・インド・ブラジル・トルコなど)。金は世界の金融資産の0.5%に過ぎないが、今後は投資家の金融資産の5%もしくは10%になる」としており、その理由として「世界の準備通貨の1位であるドルの下落を受けて2位の金へ資金がシフトする」としています。これは金が準備通貨であるというだけでなく、インフレに対抗できる資産としてあげられた形です。

強気派の見方と歴史比較

またフォン・グレイアーツの創設者であるエゴン・フォン・グレイアーツ氏は「今後、金の需要が20倍になる」と見ています。他の条件が特に変わらなければ金価格も 20倍になるとの考えです。「1970年代のインフレの時期に金価格は25倍になりました。それを考えるとコロナ禍後の金価格が2倍になっているのを『もう天井』と考えるか、『まだ初動』と考えるかである」と述べています。

米国経済のポイントとなる時期を迎えつつある中、皆さまには「投資とすべき資産は何か」をしっかりと考えていただきたいと思います