ファイルコイン(FIL)とは?「終わった」と言われる理由と2026年の将来性を解説
監修:株式会社J-CAM 金融アドバイザー AFP認定者 倉本 佳光 Yoshimitsu Kuramoto
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、山一証券株式会社に入社し金融業界でのキャリアをスタート。その後、メリルリンチ日本証券株式会社マネージメント・コミッティーメンバー、岡三アセットマネジメント株式会社理事などを歴任。
執筆:BitLending編集部 更新日:2026年9月4日
ファイルコイン(FIL)は、2017年のICOで約282億円を調達し、大きな注目を集めた暗号資産です。しかし、当時の期待どおりの価格水準にはなく、「終わったのでは」という声を目にすることもあります。
結論から言うと、ファイルコインの価格は過去最高値から大きく下落しており、その事実からは目をそらせません。背景には、ストレージの供給とマイニング報酬の設計をめぐる構造的な要因や、保存したデータを素早く取り出す仕組みが十分でなかったという技術的な課題があります。一方でファイルコインを開発するFilecoin Foundationは2026年、それまでの供給拡大重視の方針を転換し、実需に基づく収益化と、データを取り出す仕組みの強化を掲げた戦略を打ち出しています。この記事では、価格の実績と衰退の構造的な要因、競合Arweaveとの戦略の違い、2026年の戦略転換の中身を順に確認します。
免責事項(投資助言ではありません)
本記事は、仮想通貨(暗号資産)に関する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買・投資行動を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が非常に大きく、短期間で大きな損失が発生する可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。
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ファイルコイン(FIL)とは?
ファイルコインは、米シリコンバレーに拠点を置くProtocol Labs社が2017年にICO(新規仮想通貨公開)を実施した暗号資産です。創業者のJuan Benet氏はスタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学んだ人物で、このICOにはSequoia CapitalやAndreessen Horowitz(a16z)、Union Square Ventures、ウィンクルボス兄弟の投資会社であるWinklevoss Capitalなど著名な投資家が参加し、日本円で約282億円の資金調達に成功しました。これは2017年当時、完了済みのICOとして史上最大級の資金調達規模とされています。
Protocol Labs社は2014年に設立され、P2P技術を用いた分散型ファイルシステム「IPFS」を2015年に公開しました。IPFSは、ユーザー同士がデバイスの空きストレージを貸し借りできる仕組みです。ファイルコイン(FIL)は、このIPFSのネットワーク上でストレージの貸し借りをする際に必要になるトークンとして設計され、2020年10月15日にファイルコインのメインネットが稼働しました。
《出典》
IPFSプロジェクト史|IPFS公式ドキュメント
Filecoinメインネットローンチに関する発表|Filecoin公式ブログ
💡 用語解説:IPFSとは? ▼ 開く
■ IPFSとは?
IPFS(InterPlanetary File System)は、Protocol Labs社が開発した、特定の管理者を置かない分散型のファイル保存の仕組みです。
- 確認点:データを1か所のサーバーにまとめず、世界中の参加者のストレージへ分散して保存する点が、GoogleドライブやDropboxのような中央集権型のクラウドサービスとの大きな違いです
- 注意点:IPFSの仕組み自体は無料で使える技術ですが、ファイルコイン(FIL)は、その保存を継続的に維持する対価としてストレージ提供者に支払われる報酬の単位です
この記事での読み方
以降の「ファイルコインの仕組み」「Arweaveとの比較」の各セクションは、このIPFSの仕組みを前提に説明します。
ファイルコインの仕組みと特徴
ファイルコインは投機的な取引対象として見られがちですが、それ以外にも仕組み自体に特徴があります。ここでは「IPFSの構想と現状」「マイニングの意味」の2点を確認します。
IPFSが目指した構想と、現在の位置づけ
IPFSは、特定の企業のサーバーに依存せず、世界中のノードにデータを分散配置することで、コンテンツそのものを住所(アドレス)として扱う「コンテンツアドレス型」のインターネット基盤を目指して構想されました。従来の中央集権型ストレージセンターは、巨大なストレージを確保できる企業がサービスの価格や提供条件を独自に決定してきましたが、IPFS上のストレージは、世界中の各ユーザーが自身のPCやサーバーの空きストレージを貸し出すことで成り立つ非中央集権型の仕組みです。
この構想の現状については、2026年に入って新しい動きがありました。IPFSの中核ソフトウェア(Kubo、Helia、Boxoなど)を保守してきた組織Interplanetary Shipyardは、2026年8月24日、開発元のProtocol Labsから今後の資金提供を継続しない方針が伝えられたことを公表し、2026年9月30日までにIPFS関連の業務を終了するとしています。これにより、これらのソフトウェアは専任のメンテナーを一時的に失う見通しです。IPFSという技術自体がなくなるわけではなく、Protocol Labsが今後の方針を検討しているとされていますが、記事執筆時点でその具体的な内容は確定していません。
ストレージの貸し出し=マイニングという仕組み
ファイルコインでは、IPFS上にストレージを貸し出すことを「マイニング」と呼び、これを行う人を「マイナー」と呼びます。マイナーは、自身のストレージを貸し出し、指定されたデータを申告どおり保存し続けていることをネットワークへ証明する仕組み(Proof of ReplicationやProof of Spacetimeと呼ばれる検証方式)を通じて、報酬としてファイルコインを受け取ります。ビットコインなどのProof of Work方式のマイニング(計算競争によって報酬を得る仕組み)とは、報酬を得る条件がまったく異なる点に注意が必要です。マイニング全般の基本的な仕組みは、以下で詳しく解説しています。
仮想通貨(暗号資産)のマイニングの基本的な仕組みと始め方もあわせてご覧ください。
なお、Proof of Work方式のマイニングが個人にとって採算に合うかどうかは、電気代や機材コストによって大きく左右されます。この点については以下で個人の採算ラインを解説しています。
個人でおこなうマイニングの利益・電気代・損益分岐点も参考にしてください。
マイニング(ストレージ提供)の報酬として得たファイルコインは、日本の税制上、原則として所得として扱われる点にも留意が必要です。税金の計算方法や確定申告の考え方は以下で解説しています。
ファイルコインは「オワコン」なのか?価格実績から見る現実
ICO当時、約282億円という当時としては史上最大級の資金調達を実現したファイルコインですが、その後の価格は過去最高値(2021年4月1日、236.84ドル)から大きく下落し、2026年9月4日確認時点で1ドルを下回る水準まで下がっており、下落率はおおむね99%を超えています。この事実からは目をそらさず、まず正面から確認しておく必要があります。
供給過多という構造的なボトルネック
なぜここまで下落したのでしょうか。最大の要因として指摘できるのが、ストレージの供給量と実際の有料需要のギャップです。ファイルコインには「Filecoin Plus(FIL+)」と呼ばれる、検証済みの大容量データを保存するプロバイダーに通常の10倍のブロック報酬を与える仕組みがあります。この報酬が大きいため、プロバイダーはデータの持ち主にほぼ無料(de minimis)の料金しか請求せずにストレージを提供でき、実際に対価を支払う顧客がいるかどうかにかかわらず、ネットワーク全体のストレージ供給量を拡大できてしまう構造になっていました。
さらに、報酬として受け取ったファイルコインの値下がりリスクを避けたいプロバイダーは、これを市場で売却して現金化する必要があり、これが継続的な売り圧力を生む一因になったと指摘されています。ある分析では、ネットワーク全体のうち実際に有料の保存契約で使われている比率はごく低い水準にとどまると報告されており、供給の拡大が必ずしも実需の拡大を伴っていなかったことを裏付けています。ファイルコインの発行上限のうち55%はストレージマイニング報酬に割り当てられており、この配分の大きさ自体が、実需とは切り離れた供給拡大を招きやすい設計だったとも言えます。
《出典》
Filecoin(FIL): Dissecting storage market incentives|Coinbase Institutional
保存したデータを素早く取り出せないという技術的な壁
もう一つの要因が、データの取り出し(リトリーバル)の遅さです。ファイルコインのマイナーは、報酬の多くをデータを「保存し続けること」自体から得られる設計だったため、保存したデータを利用者へ素早く配信する仕組みへの投資インセンティブが働きにくいという課題がありました。GoogleドライブやAWSのような中央集権型クラウドと比較したとき、この取り出し速度の遅さは、実際のアプリケーションで採用を検討する際の大きな障壁になっていたと考えられます。この課題への技術的な対応は、後述する2026年の戦略のなかで具体的に進められています。
値下がりが大きい銘柄に対しては、「もう終わった銘柄では」という不安だけでなく、「今から買うのは危ないのでは」という警戒心を持つことも大切です。値下がりした銘柄との向き合い方は、以下も参考にしてください。
プロバイダーによる売却など、大口の動きが価格に与える影響については、以下も参考になります。
💡 用語解説:Filecoin Plus(FIL+)とは? ▼ 開く
■ Filecoin Plus(FIL+)とは?
Filecoin Plusは、公共性の高いデータなど「検証済み」とされたデータの保存に対して、通常の10倍のブロック報酬を与えるファイルコインのインセンティブ制度です。
- 確認点:プロバイダーはこの割増報酬を目当てに、データの持ち主から徴収する料金を非常に低く(実質無料に近く)設定できます
- 注意点:制度自体はデータの多様性確保を目的に設計されたものですが、結果として実需と切り離れた供給拡大を招きやすい面があると指摘されています
競合Arweaveとの戦略の違い
分散型ストレージの分野では、Arweave(AR)という競合プロジェクトもよく比較の対象になります。両者の最大の違いは、データを「借りる」のか「買い切る」のかという支払い方式の設計思想にあります。
ファイルコインは、GoogleドライブやAWSのような従来型クラウドストレージと同様に、継続的な支払いを前提とした月額契約に近い仕組みで運用されています。支払いが途絶えると、そのデータの保存契約(ディール)は終了し、データは消えてしまう可能性があります。これに対しArweaveは、データをアップロードする際に一度だけ料金を支払えば、その後は追加の支払いなしに保存が継続される「pay-once(一括前払い)」型の設計を採用しています。保存されたデータは技術的に改変・削除ができない仕組みになっており、永続的な保存を前提にしています。
| 比較項目 | ファイルコイン(FIL) | Arweave(AR) |
|---|---|---|
| 支払い方式 | 継続的な契約(ディール)ベース | アップロード時の一括前払い |
| データの永続性 | 支払いが途絶えると保存契約が終了する | 技術的に改変・削除ができない設計 |
| 主な想定用途 | 既存クラウドの低コストな代替先 | 法的文書・歴史的資料など永続保存が必須の記録 |
この違いは、そのまま両者の戦略の違いにつながっています。ファイルコインは、AmazonやAlibabaなど既存の巨大クラウド事業者を主な競争相手として、コスト面で対抗できる汎用的なストレージ市場を狙う戦略です。市場規模は大きい一方、実需を伴わないストレージ供給が拡大しやすいという課題に直面してきました。一方Arweaveは、法的な証拠保全や歴史的記録の保存など、「一度書き込んだら消えてはならない」というニッチだが明確な需要に的を絞る戦略を取っています。どちらが優れているというより、想定する用途と、それぞれが抱える課題の種類が異なる点を理解しておくことが大切です。
2026年の戦略転換とプロジェクトの進捗・将来性
2026年2月19日、Filecoin FoundationとPL Filecoin Impact Fundは「2026年ネットワーク戦略」を発表しました。柱となるのは、それまでの供給拡大重視の方針から需要拡大への転換で、具体的には次の3点を重点目標に掲げています。
- 実際の顧客需要を、有料のオンチェーンディールへ変換すること(AIエージェントやDePIN、チェーンデータなど高価値な領域を優先)
- トークンの配分方法を見直し、報酬を有料利用に誘導することでネットワークの収益性を高めること
- Internet ArchiveやSmithsonianといった既存のフラッグシップクライアントとの関係を深め、新規クライアントの採用を広げること
Filecoin Onchain Cloud:取り出しの遅さへの技術的な対応
2025年11月18日に発表された「Filecoin Onchain Cloud」は、前のセクションで触れた「取り出しの遅さ」という技術的な壁に対応する取り組みです。中心となるのは、開発者がスマートコントラクトを使って自動化された支払い・検証の仕組みを構築できる「Filecoin Virtual Machine(FVM)」と、それを扱いやすくするSynapse SDKです。データの保存を数学的に検証できる「Proof of Data Possession(PDP)」により、大容量のデータを全てダウンロードし直さなくても、保存されている事実を効率的に確認できるようになるとされています。また、従来数時間単位だった取引の確定時間を、短時間で確定させる仕組み(Fast Finality)の導入も進められており、頻繁にアクセスされる「ホット」なデータの取り扱いに対応しやすくする狙いがあります。
取り出し速度そのものを改善する取り組みとしては、「Filecoin Saturn」という、世界中の参加者がノードを運営してファイルをキャッシュし、利用者から地理的に近いノードから配信する、コミュニティ運営型のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)プロジェクトがFilecoin Foundationのエコシステムとして紹介されています。これは「検索市場(Retrieval Market)」と呼ばれる、ストレージ提供者間でデータの取り出しサービスを競わせる仕組みの上に構築されており、狙いは、Cloudflareのような従来型CDNに近い応答速度を、分散型の仕組みのままで実現することにあります。確認できた時点でこれらは開発・展開が進行中の取り組みであり、実際の速度や安定性がどこまで従来型クラウドに追いつくかは、今後の実績で判断する必要があります。
《出典》
Saturn|Filecoin Docs
あわせて、AIの学習データなど新しい保存需要が分散型ストレージ市場全体への関心を高めている場面も見られますが、これが恒久的な需要につながるかどうかは今後の実績で判断する必要があり、本記事では一時的な値動きの根拠としては扱っていません。ストレージ提供によって得たファイルコインをどう活用するかを考える際、保有する暗号資産を貸し出して運用する方法も選択肢の一つです。詳しくは以下で解説しています。
日本国内でファイルコイン(FIL)を購入する方法
日本国内でファイルコインを取り扱う取引所は限られています。確認できた範囲では、GMOコインが2023年7月8日からFILの取り扱いを開始しています(2026年9月4日確認)。取扱通貨は取引所によって変更されることがあるため、購入を検討する際は、各取引所の公式サイトで最新の取扱状況を必ず確認してください。
初めて暗号資産の取引所口座を開く場合は、口座開設から購入までの流れを事前に確認しておくと安心です。口座開設には本人確認(KYC)の手続きが必要になります。
本人確認がなぜ必要なのか、どんな手順で進むのかは以下で解説しています。
取引所ごとに手数料やサービス内容は異なります。GMOコインについては、以下で詳しく評価しています。
まとめ
ファイルコインは、ICO当時こそ著名投資家からの出資を集めましたが、価格実績を見る限り、当時の期待どおりの水準にはありません。下落の背景には、Filecoin Plusによる報酬設計が招いた供給過多と、データを素早く取り出せないという技術的な課題があったことを、この記事では確認しました。
競合Arweaveが「一度払えば永久に残る」という設計を選んだのに対し、ファイルコインは既存クラウドに対抗する汎用的な低コストストレージという、より競争の激しい市場を選んだ戦略の違いも押さえておくとよいでしょう。2026年に打ち出された「供給拡大から需要拡大へ」という戦略転換や、Filecoin Onchain CloudによるRetrieval Market・CDNの強化が、実際の有料利用や取り出し速度の改善へつながっていくかどうかが、今後を判断するポイントになります。単発の値動きではなく、有料ディールの実績や技術的な進捗といった一次情報を継続的に確認していくことをおすすめします。
暗号資産を保有したあとの運用方法として、貸し出して利益を得る「レンディング」というサービスも広がりを見せています。詳しくは以下で解説しています。