ゴールド急騰、史上最高値3,617ドル ― トランプ政権とFRBへの注目高まる
2025.09.05
金価格が史上最高値を更新
価格の動き(9月2〜3日)
4月下旬からもみ合いを続けていた金価格が9月2日に動き出しました。早速、史上最高値を更新し、翌3日も続伸して最高値を更新しました。
9月3日のNY市場金先物取引(中心限月)の終値は1トロイオンス=3,617ドルでした。
急騰の背景要因
この突然の上昇の要因は、これまで約4ヶ月間もみ合いを続けたことにより、上昇に向けたエネルギーが蓄積されていたわけですが、そこへ次のような要因が加わりました。
- ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演により、9月に開催されるFOMCでの利下げ可能性が強まり、期待感が高まったこと
- トランプ大統領のFRBへの圧力による中央銀行としてのFRBへの信頼感低下によるドル下落
- そして8月29日に米国連邦控訴裁判所が「トランプ大統領による関税措置の大半について違憲」との判断を下しました。具体的には、世界各国へ出した「相互関税」と中国、カナダ、メキシコへかけた個別の関税措置に影響が出るものと考えられます。トランプ政権は連邦最高裁判所への上告を早急に行う予定です。
※パウエル議長はジャクソンホールで「雇用面の下振れリスクに配慮しつつ、データ次第での調整(利下げ)に門戸を開く」旨を示し、市場の9月利下げ観測が強まりました。加えてNY連銀のウィリアムズ総裁も「9月利下げの可能性に含み」を持たせています。
※8月29日(米東部時間)に連邦巡回区控訴裁(CAFC)がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく大半の関税を違法(違憲)と判断。最高裁での審理に進む公算が高く、施行は一時停止の上、継続中です。
法的経緯の整理
この「違憲判断」については、国際緊急経済権限法に基づくもので、追加関税措置に対して一審にあたる国際貿易裁判所が5月に違憲と判断をしていました。
その判断は「関税を許可する権限は、連邦議会が持っている」というものでした。
これらの要因により蓄積したエネルギーが解放されたと考えられます。
※2025年は各国中銀の金保有増が続き、金は準備資産としての存在感を一段と高めています。最新調査では中銀の金購入意欲が維持され、金の準備資産比率は上昇傾向です。

主要機関の見通し
金価格に関しては、4月にゴールドマン・サックスが年末に3,700ドルと予想し、JPモルガンが2025年4Qの平均を3,675ドル、2026年には4,000ドルと予想していました。またサブプライムローンによる破綻を予想したヘッジファンド「ポールソン&カンパニー」の創設者であるジョン・ポールソン氏は「ドルに対する信認が低下し、準備資産として最適なものは金になる」として、2028年までに5,000ドルに迫ると予想しています。
※GSは「2025年末3,700ドル、2026年半ば4,000ドル」をベースに、投資資金のシフト次第で4,500ドル〜5,000ドルの上振れも言及。J.Pモルガンは「2025年4Q平均3,675ドル、2026年に4,000ドル接近」を公表。ポールソン氏は「2028年に5,000ドル接近」と発言。
今後の注目点(金融政策と司法判断)
今後の最高裁判所の判断が注目されますが、今月開催の FOMCにおいて利下げが決定すれば、ドル相場はドル安傾向が強まると思われます。そして最高裁判所の判断が「違憲」となれば、トランプ政権による関税政策は大きな見直しが必要となり、これまでの税金について返金作業が発生することになります。このような展開は、米国政府の財政を直撃することになりますので、ドルに対する信認が一気に低下する可能性があります。
最高裁判所の判断がいつ出るかはわかりませんが、今後のトランプ政権の政策や金融市場等へ大きな影響を及ぼすものだけに、十分に注意が必要です。
※次回FOMCは9月16–17日(米東部時間)。市場は利下げシナリオを織り込みつつあり、金価格・ドル指数のボラティリティ上昇が想定されます。
※控訴審の違法判断を受け、最高裁での審理入りを巡る報道が相次いでいます。最高裁が大統領権限とIEEPAの関係に判断を示す場合、政策・市場への波及は大きく、金の安全資産需要を一段と押し上げる可能性があります。
※市況・判決動向は速報性が高く、価格や日付は取引所・算出方法で差異が生じます。本稿では一次情報(FRB公式・判決関連の一次資料や大手通信社)を優先して参照しています。必要に応じて原典をご確認ください。