米国政府による暗号資産政策レポートの公表

7月30日にホワイトハウス(米国政府)からデジタル資産諮問委員会による暗号資産政策レポートが公表されました。

このレポートは、トランプ大統領が1月に設立したデジタル資産市場作業部会により、設立から半年後にとりまとめるとして作成されたもので、作業部会にはスコット・ベッセント財務長官、ハワード・ルトニック商務長官、ポール・アトキンスSEC委員長らも参加していました。

レポートは168ページに及びますが、その冒頭でトランプ大統領と作業部会の暗号資産に対する考え方とスタンスを紹介し、米国政府による暗号資産への強いコミットメントを示しています。

作業部会の基本方針とスタンス

作業部会は、デジタル資産とブロックチェーン技術が米国の金融システムだけでなく、経済全体への影響とガバナンスのシステムに革命をもたらす可能性があるという考えを支持し、さらに暗号資産の発展を支える運動、つまりすべての人にとってよりオープンで効率的な金融システムの構築に専念している運動が認識されるべきだと考えていると表明しています。

また作業部会は、このレポートで「米国を世界の暗号資産の首都にする」というトランプ大統領のコミットメントを運用し、デジタル資産とブロックチェーン技術に対してイノベーション推進の考え方を採用することを奨励しています。そして「トランプ大統領まで、この運動にふさわしい認識を与えた大統領はいなかった」と、トランプ大統領のコミットメントについて強調しています。

レポートの戦略的内容と主導体制

このレポートは、ブロックチェーン、暗号資産市場、そしてトークン化された金融において米国を世界的リーダーシップへと導くための国家戦略を概説しています。

ホワイトハウスの暗号資産・人工知能担当ディレクターであるデビッド・サックス氏とボー・ハインズ事務局長が議論をリードして、財務省、商務省、米国証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)からの意見を取り入れ、規制の合理化、イノベーションの支援、そして規制の近代化に向けた提案を提示しています。

米国の暗号資産規制のイメージ

規制と法案に関する具体的提言

具体的には、CFTCに非証券デジタル資産の現物市場を規制する権限を与え、分散型金融(DeFi)技術の開発を支援するための法案を策定するよう議会へ提言し、SECとCFTCに対して、デジタル資産取引の規制ルールを明確化させた上で、革新的な金融商品の導入を促進するよう求めています。

さらに銀行業界におけるデジタル資産関連のイノベーションを促進し、ステーブルコインに関する連邦規制の枠組みを整備し、国家安全保障を守るためのマネーロンダリング対策規制を強化するよう提言もしています。

戦略的ビットコイン備蓄(準備金)に関する方針

投資家が最も注目し期待をしていた「戦略的ビットコイン備蓄(準備金)」については、財務省が管理し没収されたデジタル資産で資本化すると再び説明しています。

現在、備蓄をしているビットコインは原則売却せず「適用法に従い政府の目標達成のため活用する米国の準備資産として維持する」としています。一方、以前ホワイトハウス高官が言及していた追加購入の方法や、現在の保有BTC数などに関しては今回のレポートでは明言されませんでした。

レポートの総括と今後の見通し

レポートでは、米国が立法および規制のイノベーションを通じて、デジタル資産とブロックチェーン技術における主導的地位を維持する必要性を強調しています。

記者会見で「デジタル資産に関して今まで公開された中で最も包括的な成果物」と政府高官は評価しています。

今回の発表は、以上のような内容になっています。ブルームバーグの報道によれば、政権は「戦略的ビットコイン備蓄(準備金)」の詳細を近く公表予定となっています。

暗号資産市場が期待していた「戦略的ビットコイン備蓄(準備金)」については、肩すかしで先送りになってしまいました。市場は当面、この発表に関しての期待感で動くと思われますが、今後の発表のされ方や内容によっては、材料の出尽くし感や失望感が広がることも考えられます。投資家の皆さまには今後の暗号資産の価格動向には十分に注意をしていただきたいと思います。