トランプ政権の圧力再び?パウエル議長を巡る市場の不安と期待
2025.07.18
2025年7月16日(水)のNY株式市場は、トランプ大統領によるパウエルFRB議長解任を巡るニュースによって大きく揺れ動きました。トランプ大統領とパウエル議長の対立は以前から注目されていましたが、この日は市場全体に強い動揺をもたらしました。
パウエル議長解任報道の衝撃
ホワイトハウスでトランプ大統領が共和党議員に「パウエル議長を解任すべきか」と質問し、複数の議員から支持の表明があったと報じられました。さらに、ホワイトハウス高官の発言として「トランプ大統領が近くパウエル議長を解任する可能性が高い」との報道が流れ、金融市場は一気に混乱しました。
特に株式市場では、NYダウ平均が一時264ドル安まで急落する展開となりました。
大統領発言で市場は急反発
その後、トランプ大統領は「パウエル議長解任に関する報道は真実ではない。解任の可能性は極めて低く、その計画もない」と述べ、これを受けて株式市場には買い戻しが入り、ダウ平均は上昇に転じて終わりました。
金融市場が抱える懸念
トランプ大統領は以前からパウエル議長が利下げに慎重な姿勢を取っていることを繰り返し批判しており、解任の可能性をちらつかせてきました。金融市場では、正当な理由なくFRB議長が解任されれば中央銀行の独立性が損なわれ、適切な金融政策の運営が難しくなると懸念されています。
このような状況はインフレ制御に支障を来たす可能性があるほか、ドルの信認を傷つけるとの見方が強まっています。実際、米債券市場ではパウエル氏の早期解任説が浮上した際、利下げ期待が高まり2年物米国債利回りが低下しましたが、一方で米長期金利の指標となる10年物国債利回りは上昇しました。

インフレ圧力とトランプ政権の見解
トランプ大統領はこの日の記者団との質疑応答で「FRBの政策金利の維持が国民に負担をかけている」との持論を再度述べました。パウエル議長の任期は2026年5月までですが、FRBが利下げに慎重な姿勢を続ける限り、トランプ大統領が再び解任論を持ち出す可能性も否定できません。
最新のCPI結果と物価動向
15日(火)には米国労働省の労働統計局から6月のCPI(消費者物価指数)が発表され、前月比+0.3%と前月の+0.1%から加速し、前年同月比でも+2.7%と前月の+2.4%から上昇しました。
金融市場では「トランプ政権による関税政策がインフレに影響をし始めている。今後、夏場にかけて物価圧力はさらに強まるだろう」との声が強く出ています。しかし、自動車の価格や航空運賃、ホテルといったサービス価格は下落しており、トランプ大統領は関税の影響は限定的として、パウエル議長を「遅すぎる男は即刻辞任すべきだ」と強く批判しました。
今後の金融政策と市場の行方
今回のCPI発表は9月のFOMC(連邦公開市場委員会)までに予定されている3回の物価指標発表のうちの1回目であり、金融当局のスタンスにすぐに変化をもたらすものではないと見られています。FRBは今後のデータを注視し、9月に向けて金融政策を検討していく見通しです。
ただし当面の間、トランプ大統領による金融当局への干渉は続くと予想され、米国金融市場の不安定要因となりそうです。市場参加者にとっては、政策と市場の行方を冷静に見極める姿勢が求められる局面と言えるでしょう。
トランプ大統領が利下げにこだわる理由
トランプ大統領が執拗にFRBに利下げを求める背景には、いくつかの重要な思惑があります。第一に、景気刺激です。利下げによって借り入れコストを下げ、企業投資や個人消費を後押しすることで、経済成長を加速させたい狙いがあります。
第二に、ドル高是正です。高金利はドル高を招き、米国の輸出産業に打撃を与えるため、金利を引き下げてドル安誘導を図りたいという意図も指摘されています。
また、高金利は住宅ローンや自動車ローンなどの負担を増やし、間接的に中間層・労働者層の生活コストを押し上げます。トランプ大統領がこの点を政策の主軸として掲げていたわけではありませんが、利下げには結果的に国民生活の負担軽減につながる側面もあります。
このように、トランプ大統領にとってパウエル議長の慎重な姿勢は、景気刺激と輸出競争力の強化という主要な政策目標の障害と映り、たびたび強硬な発言や圧力をかける理由となっています。今後も大統領の思惑と、金融当局の独立性のせめぎ合いが市場に影響を与え続ける可能性があります。
そして第三として政府が発行する米国債の利払い費用の軽減があります。もしかすると、これが一番大きなポイントかもしれません。というのも以前はほとんど金利がゼロとも言える低金利でしたが、コロナ後のインフレで金利が上昇したため、米国債に多額の利払いが発生しています。