早いもので今年も残り2ヶ月弱。東京も随分と寒くなった。

ふとLINEのホーム画面を開いたら後輩であるAくんの誕生日のお知らせが出ていた。Aくんとは10年ほどご無沙汰だ。当時は親交があったが、今となっては接点もない。いたずらがてらご機嫌伺いにスターバックスの1,000円のドリンクチケットを送った。

すぐさま返事が来た彼の言葉に驚いた。

「今ソウルに住んでおりまして、こっちのスタバでは使えないので帰国したら使わせて頂きます」

彼がソウルに住んでいる事も確かに驚いたがそこではない。290億ドルもの売上がある世界的企業がドリンクチケットのグローバル対応をしていないことに驚いたのだ。きっと為替や売上の仕分けなど色々と面倒な問題があるのだろうが、クリプト業界に身を置く我々から見たら実にweb3的ではなく違和感を感じる。

NFTプラットホームのOpenSeaが分かりやすいが、OpenSeaはAppleやAmazonのように「OpenSea japan」など現地法人の存在はない。OpenSeaはOpenSeaなのである。出だしからグローバルなのがweb3の良さでありストロングポイントでもあるのだ。

ちょうど同じ日にお客様とお茶していた時に質問をされた。

「web3って結局何ですか?」

web3

昨今、言葉のトレンドとして耳にするようにはなったweb3だが、その定義や内容まで理解している一般の方は当然少ないだろう。

web3は定義が広いので分かりづらい。これを抑える上で補助線になるのがweb1とweb2、それぞれの時代に起きたイノベーションの理解である。

簡単におさらいすると、1990年代、インターネットが世に出た。この時代、人々はパソコンからインターネットへアクセスすることでホームページを閲覧したり、電子メールを送ったり、物理的な場所の制約無く情報を得る事が可能になった。これらの時代を一般的にはweb1と称する。

そしてweb2へと時代が移る。ここでの大きなイノベーションは通信インフラの進化とスマホの普及だろう。スマホで利用するものといえば「SNS」。この時代、TwitterやFacebook、instagramなどのSNSが普及し、アメリカの巨大なIT企業、俗に言う「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」が世界の覇権を握った。

現在、我々人類のほとんどがこれらの企業に依存している。ネットの検索はGoogleで行い、買い物はAmazon、instagramやFacebookで友人とやり取りをし、Youtubeで動画を見る。仕事のメールはGmailを使いデータの共有はGoogleドライブを使う。

web1時代からの通信回線の進化の影響も大きいが(ISDN、ADSLから光回線など)、当時はパソコンやテレビで動画を4Kでサクサク見れる未来などほとんどの人は考えもしなかっただろう。

そして今、我々はweb2とweb3の狭間に生きている。

さて、ここで質問。

みなさん、現状はどうだろう。GAFAが覇権を握るweb2時代に何か不満はあるだろうか?

この問いに対し、ほとんどの人は「特に無い」と答えるだろう。

だが、GAFAに支配された現状の裏側には深刻な問題が隠されているのである。

2016年のアメリカ大統領選挙で起きた事件が有名だ。当時はトランプvsヒラリーが熱を帯びていた。アメリカの選挙事情は州ごとにどちらの勢力が強いか割とはっきりしている。だからこそ、両陣営が拮抗の争いをしているオハイオ州のような州をしっかり獲れるかが勝利の肝となる。

要するにこの選挙、蓋を開けてみたらトランプ陣営がSNSの個人情報を利用して選挙のマーケティングを行っていたという話だ。そのSNSが、世界で約30億人のユーザー数を誇るFacebook。

マーケティングと言ってもそんな生ぬるい話ではない。

Facebookはひとりのアカウントにつき、性別、誕生日、友人、趣味趣向、いつどこで何をしていたかなど、約5,000件ものデータを所有していたと言われる。

そのデータを分析してユーザー別に性格を分類し、彼らのフィードに例えばヒラリー氏が「悪者」でトランプ氏が「ヒーロー」のようなフェイクニュースを流すことで、有権者の選挙の行動にまで影響を与えたという事件だ。

詳しく記載すると長くなるが、Netflixでこの事件を取り上げた「グレートハック・SNS史上最悪のスキャンダル」という生々しいドキュメンタリー映画がある。興味がある人は是非見て欲しい。

すなわち、このweb2時代のツケが今個人情報の悪用として問題になっているのだ。これは世界的企業の看板=信頼という構図を打ちこわした。もはや大手だから安心とも限らない時代に入ってきているのである。

Googleの検索はもちろん無料だ。無料であるが故に、人々はこう思うかもしれない。

「我々がGoogleを使っている」

しかし、それは逆なのだ。Googleが我々を使って商売をしているのである。

これが良いか悪いかは別の議論になるが、このひとつの企業に我々の膨大な個人情報を集約させる事が問題であるのは事実だろう。Googleに限った話ではないが、サーバーをハッキングされればもちろん個人情報は流出する。

ここで登場するのがブロックチェーン技術。これがweb3時代最大のイノベーションである。ブロックチェーンはweb2時代のように企業の実績や権威に信頼が付随するものではなく、ブロックチェーンという技術そのものへの信頼になる。

これから、このブロックチェーン技術を活用したサービスが台頭する時代に移行していくが、最近ではTwitter界隈でweb2とweb3のサービスプラットホームの比較図などが出回っている。イメージを掴むためにもどのような違いがあるのかチェックするだけで予測できない未来を愉しむきっかけにはなるだろう。

ただ、ネットに出回っているものが全て正しいとは限らない。これは有名人だからとか、インフルエンサーだからなどは根拠にならない。

「間違いではないが正しくはないもの」という絶妙なラインのものもある事を頭に入れながら、クリプトライフを楽しんで欲しい。