日本銀行がYCCの再柔軟化を決定

日本銀行がYCCの再柔軟化を決定

日本銀行は10月30日-31日に開催された金融政策決定会合で現在行っているYCC(イールド・カーブ・コントロール)の更なる柔軟化を決定し発表しました。

 

これまで日本銀行が長期国債利回りの形式上の上限としていた+0.5%を+1.0%へと引き上げました。さらに、事実上の上限であった+1.0%を柔軟化し、利回りの上限の目途を+1.0%とするとして、+1.0%を上回る水準を容認することを決めています。

YCC|イールドカーブコントロール

日本銀行は、2013年4月に「量的・質的金融緩和」政策を導入し、さらにその進化形として2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を導入しました。その政策の重要な要素のひとつとして長短金利操作を行う「イールド・カーブ・コントロール(YCC)」が開始されました。

当初、YCCでは長期国債利回りが上限である+0.5%になると金利を抑制するため10年国債を無制限で買い入れる指値オペを実施していました。それが円安とインフレの一因ともなっていたと考えられます。

最初の柔軟化とその影響

本年7月の金融政策決定会合で柔軟化が行われ、上限である+0.5%を+1.0%まで引き上げていましたが、今回その+1.0%の厳格なコントロール水準が撤廃され、今後は指値オペを特定利回りの水準をあらかじめ定めずに、適宜決定することとしています。

この結果、今まであった上限がなくなり債券市場では、日本銀行が想定する水準を自ら探ることになります。

一方、日本銀行は長期国債利回りが中長期の期待インフレ率の上昇によるものである場合はそれを容認し、他方で、投機的な動きによるものである場合にはそれを抑制すると考えられます。ただし、米国の長期債利回り上昇により日本の長期国債利回りが連動して上昇する場合には、それを完全に投機的と見るのは難しいと思われ、国内の長期国債利回りが1%を超える事を容認すると思われます。

日本銀行の金融政策は実質的に正常化に向かい始めた

再柔軟化の背景

今回7月に続いて再度のYCC柔軟化を決定した背景として、「米国の長期金利が予想外に短期間で上昇したこと」が大きなポイントを考えられます。米国の金利上昇に伴い、国内の長期債利回りが上昇すれば、無制限の指値オペにより国債を大量に買い入れる必要が発生し、国内の国債市場の流動化低下が想定されるところとなります。また合わせて日本銀行自身の財務リスクが高まる事も考えられました。さらに米国長期金利上昇で日米金利差が拡大し、さらに円安が進行すれば物価高が一段を進む恐れもあります。

今回、再度のYCC柔軟化を実施したことにより日本銀行の金融政策は実質的に正常化に向かい始めたと考えられます。これまで日米金利差の拡大により大きく円安が進んできましたが、今回がドル円相場のターニングポイントとなるかもしれません。