世界経済見通しは来年の成長鈍化を予想

 11月29日に米国の2023年7-9月期実質GDP(国内総生産)とOECD(経済協力開発機構)の世界経済見通しが相次いで発表されました。

米国の2023年7-9月期実質GDP確報値は、速報値で発表された年率+4.9%(前期比)から+5.2%に上方修正されました。設備投資と政府支出の上方修正が反映され、2年ぶりの高い伸びとなっています。市場予想の中央値は+5.0%でした。

 個人消費は+3.6%と速報値の+4.0%から下方修正されており、サービス支出の伸びが鈍化しています。個人消費は下方修正となったものの「雇用市場の底堅さや旅行需要などに支えられて堅調な水準を維持しており、大崩れする状況にはない」との判断をしています。

 米金融当局が注目するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数は年率+2.8%に下方修正され、食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も+2.3%に下方修正されました。

米金融当局は引き続き堅調な国内経済動向と鈍化する物価動向の狭間で難しい判断を求められる

 12月のFOMCに向けて米金融当局は引き続き堅調な国内経済動向と鈍化する物価動向の狭間で難しい判断を求められることになります。

一方、OECDの発表した世界経済見通しでは、米国について経済成長率は2023年+2.4%、2024年+1.5%とそれぞれ0.2%上方修正しましたが、来年の成長鈍化を予想しています。

 世界全体では2023年+2.9%と0.1%下方修正し、2024年は+2.7%と横ばいでした。他の地域は、ユーロ圏+0.6%と+0.9%、中国+5.2%と+4.7%、日本+1.7%と+1.0%の予想となっており、来年の世界的な成長鈍化を予想しています。

 そのような中、不動産不況により不安定な状況が続いている中国について「政策出動により経済が安定してきた」とし「経済の底入れ」を示唆し、来年鈍化するとしているものの0.1%上方修正した点が注目されます。

 OECDは「インフレは鈍化しているが、経済成長は減速している。先進国経済についてはソフトランディングを予想しているが、それを保証できるものではない。」とし、特に目先の世界景気が下振れするリスクが上振れよりも大きいと見ています。

また底入れと判断した中国経済についても腰折れとなれば、先進国経済への影響はもちろんとしてアジアやグローバルサウスなどの新興国経済へも大きな影響を及ぼすと考えられ、引き続き警戒が必要です。

 来年に向けて世界では、ウクライナとイスラエルの紛争を抱えており、経済成長の鈍化とインフレ再加速の可能性が続く難しい状況が続きそうです。