トランプ大統領の当選で米国株式市場が急騰

11月5日に注目された米国大統領選挙が行われ、トランプ前大統領が圧勝し当選しました。その結果を受けてNY株式市場は米国景気の拡大期待が膨らみ大きく上昇しました。NYダウ平均が+1,508ドル、S&P500が+146ポイント、NASDAQが+544ポイントと2022年11月以来の大幅高となり、3指数は史上最高値を更新しています。

3指数が史上最高値を更新

S&P500の11セクターのうち金融、資本財、一般消費財、エネルギー、IT,コミュニケーションなど8セクターが上昇し、長期金利の上昇を受けて不動産、生活必需品、公益の3セクターが下落しています。長期金利は景気対策による財政悪化とインフレ再燃を嫌気し、米国10年国債利回りで0.2%近く上昇し、4.43%になっています。

ブル相場とベア相場

上昇したセクターと下落したセクター

米国金融市場の関係者の多くは、トランプ前大統領の復帰を景気拡大に向けて歓迎するものの、その後に起こると予想される財政悪化とインフレ再燃を警戒しています。今後、3-6ヶ月は景気拡大の期待から米国株式市場は堅調が見込まれると思われますが、景気の拡大を理由として金利の上昇は避けられず、米国債券市場は悪化すると見られています。

米国10年国債利回りの上昇とその影響

トランプ前大統領の今回の政策は、経済政策において、石油、天然ガス増産でエネルギー価格を引下げ、目標として1年以内に価格を半分に2017年導入の減税延長とその恒久化法人税率の21%から15%への減税貿易相手国に対して輸入品への10~20%の関税(メキシコからの自動車輸入には200%の関税)対中貿易縮小のため中国からの輸入品には60%の関税チップや社会保障給付金への課税廃止

ホワイトハウス

トランプ大統領の経済政策のポイント

石油・天然ガス増産と減税政策

このように大幅な減税を行う一方で、関税強化を実施して税収の確保を図る形になっています。また政策ではありませんが、景気拡大のため金利引き下げを求めるとともに、輸出拡大と貿易赤字解消に向けてドル安を支持しているのが特徴です。

対中政策と輸入関税の強化

外交面では首脳外交による2国間協定を重視し、大規模な多国間協定は好みません。同盟国に応分の負担を求める(NATO、日本、韓国などの防衛費)「力による平和」を主張し米軍を近代化により中国に対抗中国の最恵国待遇の取り消し

外交方針とその影響

こうした政策は、前述しているように米国政府の財政の悪化とインフレ再燃を警戒させています。

2国間協定の重視と同盟国の防衛負担

2024年度の米国政府の債務残高はGDP比99%まで膨らむ事が想定されています。Bloombergの試算によればトランプ前大統領の政策により連邦政府の財務残高はGDP比116%に膨らむとしています。既に現時点で米国国債の利払いを国債の発行によりまかなっている自転車操業が加速することになります。

星条旗と財政赤字の文字

財政赤字の影響とインフレの懸念

国債市場の影響と金利上昇リスク

財政赤字の副作用は金利の上昇です。政府赤字になった分を国債発行で補わなければならないので、赤字が増えれば国債発行が増えていきます。国債市場で国債の供給が増えれば、需要と供給の関係から国債の価格は下落します。そして債券の価格下落は金利上昇を意味することになります。

インフレの再燃とドル安リスク

また米国国債の下落はドルの下落繋がる可能性もあり、ドル安によるインフレの可能性も高まることになります。インフレについては、輸入品に対する関税の強化による物価の上昇も想定されており、そこへさらにドル安要因が加わる事になります。

FOMC会合の注目点

利下げの可能性と金融政策の見通し

こうした一連の流れに対して米国金融市場の関係者は警戒を強めています。11月6日-7日に開催されているFOMCにおいて、多くの関係者は利下げを想定しますが、トランプ前大統領の当選を受けた金融市場の動向により、金融当局が今後の見通しをどのように判断していくのか注目されます。