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倉本の国際経済の見どころ|国際経済の重要な出来事や抑えておくべきポイントを取り上げてわかりやすく解説

倉本の国際経済の見どころ   

株式会社J-CAM金融コンサルタントの倉本佳光が40年以上金融業に従事してきた経験を元に国際経済の重要な出来事や抑えておくべきポイントを取り上げてわかりやすく解説するコラムです。刻々と変化する相場のモメンタムをキャッチアップしていきます。

FOMC通過で マーケットは リスクオンムード

FOMC通過で マーケットは リスクオンムード

日米金融政策決定会合

 今週予定されていた日本銀行の金融政策決定会合と米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が相次いで開催されました。

 日本銀行の会合は年初より「マイナス金利政策解除」が今後どうなるのかについて話題となっており、先週後半から一段と注目を集める状況となっていました。19日の会合では「マイナス金利政策の解除」「長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール/YCC)の撤廃」「ETF等のリスク資産の新規買い入れの終了」が決定されました。

マイナス金利政策解除

この決定により2013年にスタートした異次元大規模金融緩和が終了し、17年ぶりの利上げが行われました。政策金利はマイナス0.1%から0~0.1%へ引き上げられました。一方、国債の買い入れは月6兆円を維持し継続します。

植田日銀総裁は、「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた。」とし「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況にいたったと判断した。」とコメントしました。また「大規模な金融緩和はその役割は果たした」とも発言しました。

 今後の金融政策については「普通の短期金利を政策手段としている他の中央銀行と同じように設定していくことになる。」とし、今後の利上げについては「手元にある見通しを前提にすると、急激な上昇は避けられるとみている。」とコメントしました。また今回の政策変更による影響について「預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとはみていない。」と話しています。

 植田総裁のこうした発言とこれまでの慎重な進め方もあり、市場の反応は落ち着いたものとなっています。

FOMCで政策金利据え置きが決定

 一方、米国では20日のFOMCで5会合連続での政策金利据え置きが決定し発表されました。また年内の利下げ開始については適切な時期に踏み切る方針とパウエル議長は示唆しました。利下げの回数についてはFOMC参加者の予測中央値によれば3回と、昨年12月時点での4回から減少しました。

パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「初回利下げは『年内のある時点』になる可能性が高い」という従来の発言を繰り返し、インフレの上振れを示す最近のデータについては特に重大視しない姿勢を示し、「われわれがその確信に達し利下げが実施されるという認識を、大半の人が抱いている可能性はなお高い」と述べました。

また「データは利下げ開始に対するFOMCの慎重なアプローチを裏付けているとし、インフレが目標の2%に向かっていることを示すより多くの証拠を当局者らは目にしたいと考えている。」とさらにコメントしました。 今回の発言は1月とほぼ同内容で、「委員会はインフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとはみていない」とのガイダンスを維持しました。

パウエル議長は明確にハト派に大きく傾いたとの判断

今回のパウエル議長の発言から市場関係者は「パウエル議長は明確にハト派に大きく傾いた」との判断を強めています。

市場関係者のコメントを見ると

  • かなりハト派、インフレの若干の上振れと一段の経済成長を予測しながら、利下げをテーブルに残した
  • 金融当局は利下げを望んでいる。責任を持ってできるようになってから、出来るだけ早期に、そして最初の利下げは6月で今年の3回の利下げは固定された基本シナリオだ。
  • たとえ労働市場が堅調でも利下げ開始をとめられないだろう。ハト派に明確に傾いている。
  • 6月の利下げの可能性が高まった。
  • GDP成長率がトレンドを上回り、インフレ率が目標に近づく前であっても、利下げに踏み切るリスクを金融当局が覚悟している事を示唆している。これは危険な道であると歴史は示している。

市場はリスクオンムード

このように市場関係者は「6月に利下げが行われる」との認識を強めています。こうした考え方が株式市場に広まり、20日のNY株式市場はリスクオンが優勢となり、NYダウ平均、S&P500、NASDAQの3指数が全て最高値を更新しました。

今回の日本銀行金融政策決定会合と米国FOMCは、双方とも市場からハト派的な受け止めとなっており、株式市場は前向きな展開とみて上昇しています。

ただ国内の環境を改めてみると現在の日本の実質経済成長率は0.38%(2023年10-12月期)と落ち込んで来ています。物価上昇率よりも景気の方が沈んでいるように見え、景気が落ちてもインフレが落ちないスタグフレーションに近づいているとも考えられます。

株式市場の盛り上がりとは裏腹に、スタグフレーション寸前で金融引き締めをやらなければならない日本経済の状況は難しいところにあるのではないでしょうか。 また国債買い入れについて日銀は継続することとしていますが、植田総裁は記者会見で「日銀のバランスシート縮小について徐々に視野にいれ、どこかの時点で変えていく」とコメントしました。今までは量的緩和が行われてきましたが、今後量的引締めが始まるとするなら、市場は注意をしていかなくてはなりません。

日銀の政策転換を受けて日本経済の新たな出発点を意識していると思われる市場の状況ですが、今後考えられるリスクについてしっかりと認識し把握しておく事が肝要と考えています。