NYダウ974ドル安!パウエル講演がもたらした衝撃
2025.04.18
パウエル議長の発言で揺れる米国金融市場
今週に入り落ち着きを見せていた米国金融市場は、4月16日にエコノミック・クラブ・オブ・シカゴでのパウエルFRB議長の講演を受けて、大きく揺れ動きました。NYダウ平均は一時39,400ドルを割れる974ドル安まで下げる場面もみられ、結果的に699ドル安となるなど、3指数とも大きな下落となっています。また債券市場は米国10年国債が4.28%と低下し、ドルも下落したことで、ドル円は141円台へと動いています。
FRB議長が強調する2つの責務
パウエル議長は、「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的なインフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」とし、さらに「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」と、最大限の雇用達成と物価安定という2大責務のバランスをうまく取っていく考えを示しました。
インフレと関税への懸念
パウエル議長は、「これまでに発表された関税引き上げの規模は想定を大きく上回っている」とし、「関税によるインフレへの影響はより根強いものにもなり得る。そうした結果を回避できるかどうかは、最終的には長期のインフレ期待をしっかり抑制することにかかっている」と述べています。

市場の期待とFRBの慎重姿勢
投資家の間では、市場の不安を和らげるような発言や、経済に悪化の兆候があれば介入する用意があるとパウエル議長が示唆するのではないかと期待していましたが、その期待は裏切られた格好となりました。
ボストン連銀のコリンズ総裁は先週、「FRBは必要に応じて金融市場の安定化を支援する用意がある」と述べていましたが、パウエル議長にとって「それは今ではない」ということのようです。
専門家が語る市場の反応と今後の見通し
議長の講演を受け、トーマス・ソーントン氏(ヘッジファンド・テレメトリーの創業者)は「市場はサプライズを嫌う。だからこそパウエル議長は利下げだけでなくハト派的シグナルに関しても従来の立場を変えていない。議長は市場の流動性や金融インフラ、金融サービスに問題はないとみており、全員が『様子見』というスタンスだ」とコメントしています。
また、ギャレス・ライアン氏(IURキャピタルのマネジングディレクター)は「米リスク資産に対するセンチメントは、打撃が長く残る可能性を示している」とし、「主要貿易相手国との通商交渉で90日以内に大きな進展がなければ、株式市場は厳しい夏を迎える可能性がある」と、今後に向けて厳しい見方を示しました。

金市場への資金流入と価格高騰
一方、投資家は関税による不確実性を高める中で、安全資産を求めて金市場への逃避を強め、昨日は1オンス3,365ドルとさらに上昇しました。このような金価格の動きを裏付けるように、ゴールドマンサックスは2025年末の金価格予想を1オンス3,700ドルと、従来の予想から400ドル上方へ引き上げました。UBSやバンク・オブ・アメリカも3,500ドルへ引き上げています。
関税政策の行方と市場の不確実性
トランプ大統領による関税政策については、本日の日本との協議を皮切りとして多くの国々と協議が続きます。その間、米国経済および世界各国の経済状況について先を見通すことは難しく、不確実な状況が長期にわたって続くと考えられます。
金融市場ではリスクをとる事が難しくなっており、上値の重い状況の長期化を覚悟しなくてはいけないようです。投資家の皆さまにおかれましては、引き続き慎重な態度での対応をお願いいたします。