米国株式市場の行方

米国株式市場の行方

11月1日に米国FOMCは主要政策金利を22年ぶりの高水準で据え置くことを決定しました。パウエルFRB議長は12月のFOMC会合でさらに利上げのあり得る可能性を示唆した一方、引締め局面が終了した可能性についても認めました。これは米国長期債利回りの上昇が米国内の経済やインフレに対して影響を与える可能性があるとして、追加利上げの可能性が低下しているとの認識を示したものです。

 米国株式市場は、今回のFOMCを挟んで10月下旬に調整をしていましたが、FOMC会合前に発表されたCB(コンファレンスボード)消費者信頼感指数やISM製造業景気指数が景気鈍化を示す結果だった事から堅調な展開となり、さらにFOMC後の発表を受けて「FRBの金融引き締めは終了へ向かい、金利の引き下げを探る段階へ」との見方が強まり、米国長期債利回りが大幅に低下し更に上昇しました。

 米国株式市場の反発は、10月27日を底に

  • NYダウ平均+1735.01ドル(+5.35%)
  • S&P500+269.06(+6.53%)
  • NASDAQ+1054.8(+8.37%)

と大きく上昇しました。9日(木)にパウエルFRB議長がパネル討論会へ出席する予定があることから、8日は少し警戒感を持った形で取引を終えています。

 こうした中、UBSグループは2024年末のS&P500の水準を約4,600程度と発表しています。企業の利益率が低下するとして現時点から5%程度の上昇としています。米国株式市場での来年に向けての一般的な考え方を表しているものと思われます。

 しかし、こうした見通しは実現可能なものなのでしょうか?

米国株式市場での来年に向けての一般的な考え方は実現可能か?

 先週末11月3日に発表された米国の雇用統計では、失業率が3.9%と前月の3.8%から0.1%上昇し、いよいよ上昇を始めたと思われます。また平均時給は+2.5%(前月比年率)と前月の+4.0%から鈍化しました。こうした結果、賃金総額では+0.1%と前月の+6.4%から大きく後退し、ほぼ横ばいの状態となりました。

 FRBが目指していた米国労働市場の拡大が漸く止まり始めたようです。徐々に来年の景気後退が現実味を帯び始めたのではないでしょうか。

 米国株式市場は、1980年からほぼ40年間長期的な上昇を続けました。これは2021年まで一貫して金利が低下し続けたからと考えられます。こうした長期的な上昇により、米国内には「株価は長期的に上昇する」といった信仰めいた考え方があります。(日本国内でも米国を参考として良く言われています。)しかし、インフレが始まった現在では、インフレを抑えるために高い金利を維持すると考えられ、こうした長期的な金利低下はもう難しいと思われ、長期的な株価上昇についても難しいと考えるべきと思われます。

 一般的に「株価の下落は、景気後退の半年前から」と言われています。雇用統計の発表結果が景気後退のサインとすれば、来年には本格的な景気後退局面を迎える事が考えられます。

米国株式市場の株価収益率(PER)は現在S&P500で25倍前後にまで上昇しています。10年前は18倍前後でした。S&P500の1株利益(EPS)は2023年9月で176ドルでした。仮にPER18倍水準まで下落すると約1230ポイントの調整で3150程度を目指すことになります。

これからは、日本も含めて景気後退、株式市場の調整について考えてはいかがでしょうか。