国際機関の経済見通し

今週、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development/経済協力開発機構)とIMF(International Monetary Fund/国際通貨基金)から相次いで2024年の世界経済見通しが発表されました。

OECDは「世界経済は、過去2年間の高インフレと必要な金融引き締めの中で、真の回復力を示し経済成長は持ちこたえている。しかし、成長のペースは国や地域でバラツキがある。またインフレ率は依然として中央銀行の目標を上回っている。ただインフレ率はコスト圧力が和らぐにつれて緩やかに緩和すると予想する。」としています。

このような考え方の基、世界経済の成長率は2024年2.9%、2025年3.0%とし2024年を0.2%上方修正しました。2025年は据え置きでした。

OECDは2024年の世界経済の成長率を0.2%上方修正し、2.9%としました。

OECDが上げる世界経済のリスク

 OECDは今まで進めてきた各国の政策の効果が現れ、世界経済は回復を示していると見ているものの今後の課題あるいはリスクとして、地政学リスクと財政政策をあげています。

地政学リスクについて「地政学的な緊張は依然として不確実性の主要な原因であり、中東における紛争の進展の結果としてさらに高まっており、紅海での輸送に対する脅威により、輸送コストが増加し、サプライヤーの納期が長くなっている。こうした要因は財セクターにおける新たな価格圧力をもたらし、予想される景気回復を危険にさらす可能性がある。」と見ています。OECDでは輸送コストの倍増が長引くと、約1年後にOECD諸国の消費者物価上昇率が0.4%ポイント上昇すると推計しています。

財政政策については「高まる財政圧力に直面して各国政府が行動し、高水準の公的債務、将来世代の教育成果向上の必要性、気候変動など、成長に対する長期的な課題に対応するために財政政策を適応させる必要性がある。」と指摘しています。

IMFの世界経済見通し

 一方、IMFは「世界経済成長のリスクは概ね均衡がとれており、ソフトランディングの可能性が見えてきた。」とし、「米国といくつかの国々による予想以上の底堅さと中国の財政支援」をその考え方の根拠にあげています。

世界経済の成長率については、2024年3.1%、2025年3.2%と予測し、2024年は昨年10月の予測を0.2%上方修正しました。

世界経済への重しとして各国中央銀行の高金利と債務増大による財政支援の縮小をあげるとともに成長の下振れリスクとして、「地政学的ショックや、供給の混乱によって一次産品価格が再度高騰したり、基調的なインフレが根強かったりすれば、金融政策の引き締めが長期化する可能性がある。また中国における不動産部門の低迷の深刻化や、増税・歳出削減へ混乱を招くような転換も期待外れの成長をもたらしかねない。 」としています。

 特に中国に関しては、不動産危機と弱い外需の 影響により2024年の成長率は4.6%と、昨年の5.2%から鈍化すると予想し、さらに地方政府債務の積み上がり、高齢化、その他の「既存の大きな不均衡」が高レベルのリスクと不確実性をもたらしていると指摘しています。また、これらのリスクを抑制するために包括的な戦略が「緊急に必要」と訴えています。そのうえで2028年の成長率は3.5%程度へ低下するとの見方も示しました。

今回発表された2つの国際機関の経済見通しでは、世界経済の成長率でIMFの予測が2024年と2025年どちらも0.2%上回っています。そのポイントはユーロ圏についてIMFの方が楽観的で2024年0.3%、2025年0.4%上回ったところと2024年のインドについて0.3%上回ったところと思われます。しかし、中国に関してはIMFの方が厳しく見ており、2024年、2025年ともに0.1%下回っています。

 

個別の国に対する考え方には違いがあるものの、どちらも新型コロナを克服し、インフレに対しても方向性を見いだしている世界経済の成長に対して、信頼を寄せつつ今後の課題である地政学リスクと財政などの政策の着実な実行を期待した内容となっています。