FOMC、4年半ぶりの利下げを決定! 米国経済の行方、市場への影響を解説
2024.09.20
FOMC、4年半ぶりの利下げを発表:0.50%の大胆な決定
9月17日-18日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、4年半ぶりとなる利下げが発表されました。その利下げ幅は通常行われる幅の2倍となる0.50%となりました。
利下げ幅の決定と反対票の背景
今回の決定にあたり、0.50%の利下げ幅に関して賛成が11名、反対が1名でした。今回の会合ではボウマン理事が0.25ポイントの利下げを主張し、決定に反対票を投じました。政策決定に理事が反対したのは2005年以来で、投票権を持つメンバーによる反対は2022年以来となります。
声明の内容
今回の会合で発表された声明は以下の通りです。
最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは鈍化し、失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて一段の進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。
委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。委員会はインフレが持続的に2%に向かいつつあることに自信を深めており、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている。
インフレ面での進展とリスク均衡を踏まえて、委員会はフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジを0.5ポイント引き下げ、4.75-5%とすることを決めた。FF金利誘導目標レンジに対する追加的な調整を検討する上で、委員会は今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会は、財務省証券とエージェンシー債、GSE保証付き住宅ローン担保証券(MBS)保有の削減を継続する。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている。
金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策スタンスを調整する用意がある。委員会は労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待を示す各指標のほか、金融・国際情勢などを幅広く考慮して判断する。
会合後のパウエル議長の発言
会合後の記者会見でパウエルFRB議長は「FOMCが『今回の利下げ幅について、今後継続していくペースではない』」とコメントし、大幅な金融緩和への期待に対して釘を刺しています。パウエル議長は今回の声明で「雇用とインフレの目標達成に対するリスクは均衡している、委員会は最大の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことにコミットしている」と述べています。
経済予測と市場の反応
パウエル議長は「インフレについては依然として幾分高い水準にある」と指摘し、「雇用の伸びについては鈍化した」とコメントしました。経済予測では2024年末時点の失業率を4.4%と見ており、本年6月時点の予想の4.0%から引き上げました。
またインフレ率については経済予測の中央値で2024年末に2.3%への低下を予想し、経済成長率は2.0%へ引き下げられました。インフレ率が目標の2.0%に低下するのは2026年までないと当局は見ています。
市場関係者のコメント
今回の決定を受けて、複数の市場関係者がコメントを発表しました。
- KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏
理事の反対にもかかわらずパウエル議長が積極利下げに踏み切ったことは「パウエル議長がこの0.5ポイント利下げをいかに強く望んでいたか」を示していると述べています。 - モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏
市場は望むものを手に入れた。その満足がいつまで続くか見てみよう」とコメントし、「米金融当局には焦らないという定評があるが、特に経済データの軟化が続く場合、動きがあまりに遅いと受け止められれば失望を招く可能性がある。しかし、今回は役目を果たした」と述べました - トグルAIのジュゼッペ・セッテ氏
「米金融当局は景気見通しが堅調だと安心させようとする一方で、大幅な利下げを断行した。しかし、この2つは調和しない。景気減速局面での大幅利下げは常に相場の下落が後に続く。きょうが市場のピークだった可能性もある」と指摘し「歴史が示すように、市場のピークは最初の利下げの直前に訪れる。株式には注意が必要だ」と述べています。 - LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏
「株式市場は50bpで緩和サイクルを開始するというFOMCの決定を称賛した」とし、「この動きを巡っては多くの議論が交わされていたため、発表は驚きではなかった。しかしFOMC当局者によるガイダンスの欠如は、反対したメンバーが1人しかいなかったにせよ、コンセンサス構築に向けて激しい議論が行われたことを示唆している」と述べています。
金融市場への影響
FOMCの発表を受けて、米国金融市場は目まぐるしい展開となりました。米国株式市場は、前日まで高まっていた0.50%の利下げ予想が、その通りの利下げ幅であった事を好感して始まり上昇しました。一時、NYダウ平均で41,981ドル、S&P500で5689ポイントとそれぞれ高値を更新する動きを見せましたが、利益確定売りから下落に転じ、終値はNYダウ平均が41,503ドルの103ドル安、S&P500が5,618ポイントの16ポイント安で終わっています。
債券市場では米国10年国債利回りが前日の3.65%から3.70%と利下げについての材料出尽くし感が広がり、利回りが0.05%上昇しました。
外国為替市場では、ドル円相場で一時140.45円まで円が買われましたが、こちらも失速し終値は142.29円となっています。
終日堅調に推移したのは、暗号資産市場でBTCが870万円台、ETHが33万円台後半へと動いています。
今後の展望と注目点
今回は、パウエルFRB議長の強いリーダーシップで0.50%の引き下げという思い切った金融政策の決定が行われましたが、昨年秋以降からの米国金融市場はこの利下げへの金融政策の変更を大きな材料として動いてきました。今回、その材料が実現し、今後は景気実態がどのようになるのか注目されることとなります。
市場関係者のコメントにあった 「景気減速局面での大幅利下げは常に相場の下落が後に続く。今日が市場のピークだった可能性もある歴史が示すように、市場のピークは最初の利下げの直前に訪れる。株式には注意が必要だ。」としたジュゼッペ・セッテ氏のコメントには注意をしていきたいと思います。