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倉本の国際経済の見どころ|国際経済の重要な出来事や抑えておくべきポイントを取り上げてわかりやすく解説

倉本の国際経済の見どころ   

株式会社J-CAM金融コンサルタントの倉本佳光が40年以上金融業に従事してきた経験を元に国際経済の重要な出来事や抑えておくべきポイントを取り上げてわかりやすく解説するコラムです。刻々と変化する相場のモメンタムをキャッチアップしていきます。

FRBの誤算⁉︎ 利下げ先延ばしを示唆

FRBの誤算⁉︎ 利下げ先延ばしを示唆

利下げ見込みに誤算のFRB

米国金融当局は、インフレ率が2%に向けて減速し、高い金利水準を着実に引き下げる想定をしていましたが、その見込みは誤算になりつつあります、

今年に入ってから3ヶ月が経過し、米国経済と労働市場の雇用が底堅さを見せており、米国のインフレが想定していたものより根強い事がここに来て明らかになってきています。

パウエルFRB議長は、5会合連続での政策金利据え置きを決定した3月20日のFOMC(連邦公開市場委員会)会合後の記者会見で「初回の利下げは年内のある時点になる可能性が高い」として、直近に示されていたインフレの上振れを示すデータについては特に重大視しない姿勢を示して、さらに「われわれがその確信に達し、利下げが実施されるという認識を大半の人が抱いている可能性はなお高い」と述べました。

 こうしたパウエルFRB議長の発言を受けて市場関係者は、この発言を「ハト派発言」と捉え、本年6月での利下げを予測し、リスクオンムードを一段と高め、米国株式市場は市場最高値を更新する動きとなっていました。

楽観的リスクオンムードはこれまでか?

しかし、4月10日に米国労働省が発表した3月の消費者物価指数(CPI)は、総合で前年同月比+3.5%と前月の+3.2%から加速しました。昨年9月以来の大幅な上昇で市場予想の+3.4%も上回りました。

また、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、前年同月比+3.8%と前月から横ばいでしたが、市場予想の+3.7%を上回りました。前月比も+0.4%と前月と同じでしたが、こちらも市場予想の+0.3%を上回りました。過去3ヶ月のコア指数は年率+4.5%で昨年5月以来の大幅な上昇となりました。

この3月のCPIの状況は、20年ぶりの高い金利水準を維持しているにも拘わらず、インフレ抑制の停滞の可能性を浮き彫りにしました。堅調な労働市場が家計の需要を支えていると見られています。

トーンダウンするFRB議長発言

パウエルFRB議長は、ワシントンでカナダ銀行(中央銀行)のマックレム総裁とパネル討論会に参加し、「最近のデータがわれわれの確信を深めるものでないことは明らかであり、それどころか確信を得るには想定よりも時間がかかる可能性が高いことを示唆している」と述べ、「インフレは昨年末に速いペースで鈍化したものの、その後は一段の進展が見られない」と指摘し、「金融当局として、インフレ率が2%の物価目標に向かっているという、利下げに先立ち必要な確信を得るのには、より長い時間がかかる可能性が高い」との見解を示しました。その上で「物価上昇圧力が根強い場合は、必要な限り金利は据え置く事が可能」と述べています。

 今回パウエルFRB議長は、金融政策についての昨年末からのトーンを変化させました。

 市場関係者は年初に年内の利下げを6回と見込んでいましたが、現時点では1回もしくは2回と見ています。FOMC参加者も1ヶ月前は年内3回の利下げを予想していました。

 しかし、現在の状況はインフレが再加速した可能性が高いと考えられ、元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏は「現在の金利水準でインフレが再加速するのならば、利下げどころか利上げが必要になる」と述べています。

 

 中東情勢による地政学リスクの高まりもあり、原油価格や金価格の上昇などからインフレ再加速が確定的と見る関係者も増えており、利上げについての可能性の議論が高まるのではないでしょうか。

楽観論から最高値を更新してきた株式市場は、急速に調整場面を迎える可能性が高まっています。国内株式市場も合わせて今後の対応には十分な注意が必要と考えています。