ついに訪れる? 米国経済のリセッション
2023.12.28
NYダウ平均は史上最高値を更新
昨年(2022年)の年末頃、世界中の多くのエコノミストが2023年の米国景気についてリセッション入りを予想し、その結果として米国株式市場の調整が想定されていました。
問題はリセッション入りがいつ?そして金利引き下げがいつになるのか?でした。
しかし、2023年が終わろうとしている現在、米国経済は粘り強く、株価も下落する場面もありましたが、NYダウ平均は史上最高値を更新し、S&P500は最高値に迫り、NASDAQも大きな戻りを見せています。
27日NY金融市場では米国5年債の入札が堅調なものとなり金利引き下げ期待が高まり、米国10年債利回りが3.8%を割れ、NY株式市場は小幅続伸となりました。
こうした堅調な展開を続けるNY金融市場ですが、買われすぎの水準にあることや金利引き下げの過度の織り込みに警戒感も台頭しており、いずれ厳しい現実に向かうのでは?との懸念も浮上しています。
米国景気のリセッション入りと米国金利の引き下げについては、昨年考えられた予想から1年遅れて起こることになりそうです。景気後退がいつから起こり、金利引き下げがいつから始まるのか、米国金融市場の注目を集めて新年を迎えます。
金融政策正常化が待たれる日本
一方、植田和男日本銀行総裁がNHKのインタビューで「中小企業の賃金データがそろう前での政策判断は可能」との考えを示しました。
これは来春闘で大企業の集中回答日が3月中旬であるのに対し、「中小企業のデータがそろうのは、かなり遅くなる。他の中小企業の指標で中小企業の好調さが示される、あるいは消費や投資が好調でそれが賃金・物価の好循環を生み出す場合、ある程度前もって判断ができると思う。」と答えたものです。
27日に公表された今月の金融政策決定会合の「主な意見」では「来年の賃金上昇率はことしを上回る蓋然性が高く、今年度下期は物価目標実現の最終的な見極めの重要な局面である」とか「来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くない」など賃上げの動向を注意深く見極めるべきだという意見が多く見られていました。
2024年は米国景気のリセッション入りと金利引き下げ、そして国内の金融政策正常化が想定され、いよいよドル円相場の円高や米国株式市場の調整ならびに国内株式市場への影響に注意が必要と考えています。
一方、ウクライナやイスラエルなど戦争が続く世界での安全資産として「金」や「暗号資産」に注目が集まると考えています。
私の経済コラム「倉本の国際経済の見どころ」をご愛読いただき、心より感謝申し上げます。
年末のこの時期に、日頃からのご愛読に感謝し、一年間を振り返りたいと思っております。来年も、変わらぬご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
新年は1月12日からコラムの連載を再開いたします。新たな年の始まりと共に、更なる深い洞察とともに皆様にお会いできることを楽しみにしております。
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倉本 佳光